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エレウテリアの支援者Ⅳ
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「ようこそ」
チャイルドビルの最上階の総帥室に案内されて入室許可をもらい、俺達はチャイルド総帥と対面する事になった。後ろは巨大なガラス張りで、キールの町を見渡す事ができる。
部屋は至ってシンプル。チャイルド総帥が座っているのは黒い革の椅子。そして黒いデスク。デスク周りは紙一枚すら無いスッキリとした空間になっていた。また、部屋の中央には一枚板のテーブルの周りに、黒い三人掛けのソファー二つが囲うように設置されていた。
部屋の右側の壁面にはプロジェクターがあり、左側は本棚となっていた。植物が好きなのか、部屋の奥側の左右――つまり窓際には観葉植物が設置されていた。
「はじめまして、ウォルトン・チャイルド総帥」
俺がそう挨拶をした男はホログラムで見た通りの男だった。
「こちらこそはじめまして。オリュンポスのガレス・リストキー副所長と、君は確か――」
「エリー・オリヴィエです」
とエリーは一礼をした。
「失敬。私とした事が人の名前を忘れるなんて――」
「知り合いか?」
俺がそうエリーに質問すると、エリーは「まさか――」と呟いた。
「不思議に思っているみたいだが、私のネットワークは幅広くてね。有名な民間軍事事務所にどこの誰が所属しているかは把握済みだ」
「プライベートなんてあったもんじゃないな」
俺がそう呟くとチャイルド総帥はニッと不敵な笑みを浮かべた。
「君たちがこの国に来た理由は知っている。その前にリストキー副所長。君と二人で話がしたい」
「俺と?」
「ああ――」
チャイルド総帥はそう言ってエリーに視線を移した。
「エリー・オリヴィエ様。こちらへ」
「え、でも――」
エリーの言葉をガン無視してパルスはエリーをこの部屋から連れて行った。俺が言葉を発する事も無く連れ去られたのは言うまでもない。
「大丈夫。危害を加える気は無い」
「俺達の目的を知っていてか? と、言う事はアンタやっぱり――」
「ITの情報なんだろ? 彼の情報に間違いは無いからね」
「何でITを――?」
「知っているさ。私も彼から情報提供をしてもらうことがあるからね」
「俺が来ることはITからか?」
「どうだろうな」
とチャイルド総帥にはぐらかされた。
「ガレス・リストキー副所長。いや、ガレス・リストキー大佐」
「こりゃあ驚いた」
俺は思わず苦笑を浮かべてしまった。でも考えてもみれば俺の素性を知っていても可笑しくはない立場にいる。それにエレウテリアには今。ベディヴィエールもいるくらいだしな。
「一瞬驚いたようだが、立て直したな。どういう事かな?」
「こっちもエレウテリアに関する情報は集まってきているからな。俺の素性を知っている人がいるから、エレウテリアに手を貸しているアンタが知らない筈無いと思って」
「成程。まあ私は――いや、何でも無い。つい喋り過ぎてしまう」
チャイルド総帥は何か言いかけて言うのを止めた。まあ気にしていても仕方無い。
「ガレス・リストキー大佐」
「今は副所長だ。何なら執行官じゃない」
「そうだった。まずは君とコンタクトが取れた事にこの上ない喜びを感じているよ」
「――そりゃあどうも」
実際にチャイルド総帥は喜んでいた。珍しく社交辞令では無い。何で俺と会いたかったのか分からんが。
「それで? 二人きりになって話したい事は何だ?」
「そうだな――。まず一つ質問したいのだが、陰謀論などの都市伝説について君はどう感じている?」
と、えらく斜め上の質問をしてきた。
「それは政府に関しての都市伝説とか?」
「勿論それも値する」
チャイルド総帥はそう言って鋭い眼光を放ってきた。典型的な裏の世界の一組織のトップに君臨しているような鋭い眼光――。
「あながち間違っていない都市伝説もあるし、真実に近い話もある。俺がこの前見たのは、ジェームズ・オスカーを殺害したのは俺ではないって説とかな」
「それは間違いないのだろう? ただ私も君が何故ジェームズ氏を撃ったのか理解できない」
――何だ俺の事を全部は知らない訳か。少し安心した。
「あ、今安心したね? あの事件。誰の指示で君がエルピーダを抜いたのかは知っている。ただ、君の感情が分からないだけだ」
と、意外な言葉だった。
「残念ながら、君がジェームズ氏を撃ったのは間違っている。敵を間違えているんだ」
チャイルド総帥はそう言って腕を組んで俺をじっと見つめてきた。
「敵は世界政府だと?」
「そうだ。我々は世界政府の存在によって踊らされているんだ。彼等の存在がある限り我々に自由は無い。ジェームズ氏は政府の重鎮ではあったが、トップの裏の顔に疑問を持っていた」
「世界政府のトップ?」
「ああ。誰も彼の本名は知らない。しかし彼は皆からこう呼ばれている。メイソンと――」
メイソン――。初めて聞いたぞ。世界政府のトップの人間の名前なんて。
「元老院のトップって事でいいんだよな?」
「そういう事だ」
チャイルド総帥はそう深く頷いた。
「俺は――ジェームズが盗んだ機密文書は世界を恐怖に陥れる機密文書だと聞いている」
「聞いている――。君はその文章を見たわけでは無いよね?」
「ああ。どういう文章か聞かされただけだ。それにジェームズには他にも余罪がある。俺達に隠れて行っていた様々な――」
俺がそう言おうとした時だった。チャイルド総帥は首を横に振った。
「君は執行官失格だ。ジェームズ氏は元老院の濡れ衣を着せられたに過ぎない。確かに我々もジェームズがどんな機密文書を発見したのか分からないが、ジェームズ氏は生前こんな事を言っていた」
チャイルド総帥の真剣な眼差しに俺は思わず固唾を飲んだ。
「今はこの文章の内容を言えないが、この文章が世間に出れば元老院を崩壊させる事ができる証拠になると――」
元老院の崩壊――。あまりに大きなパワーワードに俺は開いた口が塞がらなかった。
チャイルドビルの最上階の総帥室に案内されて入室許可をもらい、俺達はチャイルド総帥と対面する事になった。後ろは巨大なガラス張りで、キールの町を見渡す事ができる。
部屋は至ってシンプル。チャイルド総帥が座っているのは黒い革の椅子。そして黒いデスク。デスク周りは紙一枚すら無いスッキリとした空間になっていた。また、部屋の中央には一枚板のテーブルの周りに、黒い三人掛けのソファー二つが囲うように設置されていた。
部屋の右側の壁面にはプロジェクターがあり、左側は本棚となっていた。植物が好きなのか、部屋の奥側の左右――つまり窓際には観葉植物が設置されていた。
「はじめまして、ウォルトン・チャイルド総帥」
俺がそう挨拶をした男はホログラムで見た通りの男だった。
「こちらこそはじめまして。オリュンポスのガレス・リストキー副所長と、君は確か――」
「エリー・オリヴィエです」
とエリーは一礼をした。
「失敬。私とした事が人の名前を忘れるなんて――」
「知り合いか?」
俺がそうエリーに質問すると、エリーは「まさか――」と呟いた。
「不思議に思っているみたいだが、私のネットワークは幅広くてね。有名な民間軍事事務所にどこの誰が所属しているかは把握済みだ」
「プライベートなんてあったもんじゃないな」
俺がそう呟くとチャイルド総帥はニッと不敵な笑みを浮かべた。
「君たちがこの国に来た理由は知っている。その前にリストキー副所長。君と二人で話がしたい」
「俺と?」
「ああ――」
チャイルド総帥はそう言ってエリーに視線を移した。
「エリー・オリヴィエ様。こちらへ」
「え、でも――」
エリーの言葉をガン無視してパルスはエリーをこの部屋から連れて行った。俺が言葉を発する事も無く連れ去られたのは言うまでもない。
「大丈夫。危害を加える気は無い」
「俺達の目的を知っていてか? と、言う事はアンタやっぱり――」
「ITの情報なんだろ? 彼の情報に間違いは無いからね」
「何でITを――?」
「知っているさ。私も彼から情報提供をしてもらうことがあるからね」
「俺が来ることはITからか?」
「どうだろうな」
とチャイルド総帥にはぐらかされた。
「ガレス・リストキー副所長。いや、ガレス・リストキー大佐」
「こりゃあ驚いた」
俺は思わず苦笑を浮かべてしまった。でも考えてもみれば俺の素性を知っていても可笑しくはない立場にいる。それにエレウテリアには今。ベディヴィエールもいるくらいだしな。
「一瞬驚いたようだが、立て直したな。どういう事かな?」
「こっちもエレウテリアに関する情報は集まってきているからな。俺の素性を知っている人がいるから、エレウテリアに手を貸しているアンタが知らない筈無いと思って」
「成程。まあ私は――いや、何でも無い。つい喋り過ぎてしまう」
チャイルド総帥は何か言いかけて言うのを止めた。まあ気にしていても仕方無い。
「ガレス・リストキー大佐」
「今は副所長だ。何なら執行官じゃない」
「そうだった。まずは君とコンタクトが取れた事にこの上ない喜びを感じているよ」
「――そりゃあどうも」
実際にチャイルド総帥は喜んでいた。珍しく社交辞令では無い。何で俺と会いたかったのか分からんが。
「それで? 二人きりになって話したい事は何だ?」
「そうだな――。まず一つ質問したいのだが、陰謀論などの都市伝説について君はどう感じている?」
と、えらく斜め上の質問をしてきた。
「それは政府に関しての都市伝説とか?」
「勿論それも値する」
チャイルド総帥はそう言って鋭い眼光を放ってきた。典型的な裏の世界の一組織のトップに君臨しているような鋭い眼光――。
「あながち間違っていない都市伝説もあるし、真実に近い話もある。俺がこの前見たのは、ジェームズ・オスカーを殺害したのは俺ではないって説とかな」
「それは間違いないのだろう? ただ私も君が何故ジェームズ氏を撃ったのか理解できない」
――何だ俺の事を全部は知らない訳か。少し安心した。
「あ、今安心したね? あの事件。誰の指示で君がエルピーダを抜いたのかは知っている。ただ、君の感情が分からないだけだ」
と、意外な言葉だった。
「残念ながら、君がジェームズ氏を撃ったのは間違っている。敵を間違えているんだ」
チャイルド総帥はそう言って腕を組んで俺をじっと見つめてきた。
「敵は世界政府だと?」
「そうだ。我々は世界政府の存在によって踊らされているんだ。彼等の存在がある限り我々に自由は無い。ジェームズ氏は政府の重鎮ではあったが、トップの裏の顔に疑問を持っていた」
「世界政府のトップ?」
「ああ。誰も彼の本名は知らない。しかし彼は皆からこう呼ばれている。メイソンと――」
メイソン――。初めて聞いたぞ。世界政府のトップの人間の名前なんて。
「元老院のトップって事でいいんだよな?」
「そういう事だ」
チャイルド総帥はそう深く頷いた。
「俺は――ジェームズが盗んだ機密文書は世界を恐怖に陥れる機密文書だと聞いている」
「聞いている――。君はその文章を見たわけでは無いよね?」
「ああ。どういう文章か聞かされただけだ。それにジェームズには他にも余罪がある。俺達に隠れて行っていた様々な――」
俺がそう言おうとした時だった。チャイルド総帥は首を横に振った。
「君は執行官失格だ。ジェームズ氏は元老院の濡れ衣を着せられたに過ぎない。確かに我々もジェームズがどんな機密文書を発見したのか分からないが、ジェームズ氏は生前こんな事を言っていた」
チャイルド総帥の真剣な眼差しに俺は思わず固唾を飲んだ。
「今はこの文章の内容を言えないが、この文章が世間に出れば元老院を崩壊させる事ができる証拠になると――」
元老院の崩壊――。あまりに大きなパワーワードに俺は開いた口が塞がらなかった。
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