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出会いは突然 3
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優司と優菜はあれから2時間ほど談笑していた。
「そろそろ風呂でも入ろうかな。つか先に入るか?」
「え? いいの?」
「当り前だろ。今日はちょうど風呂を洗った日だし湯舟にも浸かっていいよ」
優司はそう言ってキッチンに付いているお風呂のモニターにある自動のボタンを押した。すると、先程入ったリビングの後方にある洗面所の奥の方から、お湯を噴出する音が聞こえた。
「ん。有難う。じゃあ着替え――」
顔を赤らめながらキャリーバッグを見る優菜が何を言いたいのかが分かった。着替えの下着やらを取り出すけど優司がじっと見ていると取り出せないと言いたいのだ。
「悪い。着替えはあるのか?」
「一応持って来ているよ」
優菜はそう言うと、キャリーバッグの中を漁ってはシャツとショートパンツを取り出した。寝具というよりかは部屋着だった。
「明日寝具買いに行くか。優菜の服とかも諸々」
「え? それは悪いよ。それくらいなら自分で買うから」
「へえ。何で稼いでいるんだ? やっぱり絵描いているの?」
「そうそう。スキルシェアマーケットのサイトでイラストのお仕事をしているの。でも私の技量じゃまだ月に50,000円くらいが限界かな」
「そうか。でも凄いじゃん。今の年齢で月にそれだけ稼いでいるんだから」
「そうかな? そう言ってもらえるの嬉しいよ」
そうやりとりを行っていると、『お風呂が湧きました』という音声が流れた。
「悪い。入るまで寝室行ってるわ」
「うん」
優菜は優司が寝室に向かったのを確認するなり、キャリーバッグから黒色のナイトブラ、黒の下着、泡立てネットとタオルを取り出す。そして先程のシャツとショートパンツを一緒に持って脱衣所へと向かった。木のスライドドアを閉めて、黒のトレーナーとベージュのスウェットをブラウンの洗濯カゴに軽く畳んで放り込んだ。
全て脱ぎ終えると浴室に入ってシャワーで身体を一通り洗う。浴槽の蓋の上に、洗面器や椅子が置いているので、椅子を取って優菜は座りこんだ。
黒いボトルに入っているシャンプーとコンディショナーを使った。二つともほのかに甘い香りがするシャンプーとコンディショナーだった。
髪の毛を洗い終わり優菜は自分の顔を鏡で見た。優司とのお酒は楽しめたがやはり幸が薄い顔をしていると思った。
今までロクな恋愛をしてこなかったが、同棲していた元彼の陽平はとてもいい人だった。しかし、お互いが持っている価値観が違い、喧嘩がエスカレートしていた。そして、優菜は実家で受けていた酷い扱いがトラウマになっており、口論の際の陽平の荒い口調が父親そっくりだった。
陽平それは良くないと途中で気付き直そうと努力していたが、優菜の顔色や体調が日に日に酷くなっていくのが陽平からすれば耐えきれなくなっていた。それを見かねた陽平は優菜に別れようと言い放った。優菜は何とか引き留めようとしたが「もっといい人がいるよ。俺じゃ無理なんだ。ごめん――」と謝罪されて家を追い出された。
結局のところストレス耐性が周囲の人間と比較して優菜が低く、何か指摘なりアドバイスなりをしても、踏ん張って起き上がることができないのが原因だ。それは優菜自身認識しているがなかなか直すことができない。努力しても無理な事だってある――。
優菜は顔も身体も洗い終えて湯船に浸かっていた。自分がいかに駄目な人間かを痛感し、思わず涙が目一杯に浮かんでいた。
「どうして……」
お風呂のなかですすり泣きをしながら目に溢れる涙を手で拭おうとしていた。しかし、拭っても拭っても涙は出てくる――。
一方その頃、優司は新しいバスタオルを優菜の為に用意して閉め切っているドアを開けようとしていた。
お風呂の中から聞こえてくる優菜のすすり泣き――優司は扉の前で座り込んでその声を静かに聞いていた。
「優菜も辛いんだな」
お酒を飲んでいるせいか、優司は悲しい気持ちでいっぱいになっていた。
しばらく待っていると優菜のすすり泣きが止んだ。優司がノックすると。
「優司、バスタオル持って来たから入っていいか?」
「ふぇ!? あ――有難う。いいよ」
優司は浴室の中に入ると、優菜が湯舟に浸かっているのが確認できた。
「あ――」
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「はーい」
さっき泣いていた声のトーンとは違い、先程お酒を飲んでいた時の陽気な声だった。何食わぬ顔で浴室を出たが、バスタオルを置くときに目に入った黒の下着――。
「普通にやらかしたな」
優司はそう呟きながらリビングに戻りビールを再び飲み始めた。優菜が落ち込んでいるところをみて少し酔いが冷めた。
閉め切った浴室から優菜が上がる音がした。
「優司君、ドライヤーはこの棚に置いているやつでいいの?」
「ああ」
物音がしたかと思えば、ある程度髪をふき取った状態で出て来た優菜。バスタオルを巻いて出てくるという事は無く、シャツとショートパンツの姿だったが、完全に乾ききっていない優菜を見て胸の鼓動が高鳴った。
酔っているせいだろうか? と思い一度瞬きしたが、お風呂上りで肌の艶が戻っていることもあり、優菜の姿に見惚れていた。
「どうしたの?」
優菜が怪訝な表情を浮かべると優司は「いや、何でもない」と首を振ってビールを飲みほした。
「あそこに布団敷いているから」
優司がそうテレビを置いているリビングを指すと――。
「寝室で大丈夫だったのに」
「俺が大丈夫じゃないんだが」
優菜は一瞬考え込んだようだが「ああ――」と納得した表情を浮かべていた。
「マジかよこの人」
「私は大丈夫だよ――というかその一人で寝るのが苦手で――せめて大きいぬいぐるみさんが無いと」
「……そう言えばボイスチャットしているときにそんな事言っていたな」
優司が思い出したかのように言うと優菜はコクリと頷いた。
「分かった――俺のマットレスの隣に移動しておく。ドライヤーはその辺でしておいていいから」
「ありがとう!」
表情が明るくなった優菜を見て、優司は大分情緒不安定――いや、外面を気にしすぎて仮面を被っていただけかと思った。
布団を隣に置いた優司はそのままお風呂に入った。
「そろそろ風呂でも入ろうかな。つか先に入るか?」
「え? いいの?」
「当り前だろ。今日はちょうど風呂を洗った日だし湯舟にも浸かっていいよ」
優司はそう言ってキッチンに付いているお風呂のモニターにある自動のボタンを押した。すると、先程入ったリビングの後方にある洗面所の奥の方から、お湯を噴出する音が聞こえた。
「ん。有難う。じゃあ着替え――」
顔を赤らめながらキャリーバッグを見る優菜が何を言いたいのかが分かった。着替えの下着やらを取り出すけど優司がじっと見ていると取り出せないと言いたいのだ。
「悪い。着替えはあるのか?」
「一応持って来ているよ」
優菜はそう言うと、キャリーバッグの中を漁ってはシャツとショートパンツを取り出した。寝具というよりかは部屋着だった。
「明日寝具買いに行くか。優菜の服とかも諸々」
「え? それは悪いよ。それくらいなら自分で買うから」
「へえ。何で稼いでいるんだ? やっぱり絵描いているの?」
「そうそう。スキルシェアマーケットのサイトでイラストのお仕事をしているの。でも私の技量じゃまだ月に50,000円くらいが限界かな」
「そうか。でも凄いじゃん。今の年齢で月にそれだけ稼いでいるんだから」
「そうかな? そう言ってもらえるの嬉しいよ」
そうやりとりを行っていると、『お風呂が湧きました』という音声が流れた。
「悪い。入るまで寝室行ってるわ」
「うん」
優菜は優司が寝室に向かったのを確認するなり、キャリーバッグから黒色のナイトブラ、黒の下着、泡立てネットとタオルを取り出す。そして先程のシャツとショートパンツを一緒に持って脱衣所へと向かった。木のスライドドアを閉めて、黒のトレーナーとベージュのスウェットをブラウンの洗濯カゴに軽く畳んで放り込んだ。
全て脱ぎ終えると浴室に入ってシャワーで身体を一通り洗う。浴槽の蓋の上に、洗面器や椅子が置いているので、椅子を取って優菜は座りこんだ。
黒いボトルに入っているシャンプーとコンディショナーを使った。二つともほのかに甘い香りがするシャンプーとコンディショナーだった。
髪の毛を洗い終わり優菜は自分の顔を鏡で見た。優司とのお酒は楽しめたがやはり幸が薄い顔をしていると思った。
今までロクな恋愛をしてこなかったが、同棲していた元彼の陽平はとてもいい人だった。しかし、お互いが持っている価値観が違い、喧嘩がエスカレートしていた。そして、優菜は実家で受けていた酷い扱いがトラウマになっており、口論の際の陽平の荒い口調が父親そっくりだった。
陽平それは良くないと途中で気付き直そうと努力していたが、優菜の顔色や体調が日に日に酷くなっていくのが陽平からすれば耐えきれなくなっていた。それを見かねた陽平は優菜に別れようと言い放った。優菜は何とか引き留めようとしたが「もっといい人がいるよ。俺じゃ無理なんだ。ごめん――」と謝罪されて家を追い出された。
結局のところストレス耐性が周囲の人間と比較して優菜が低く、何か指摘なりアドバイスなりをしても、踏ん張って起き上がることができないのが原因だ。それは優菜自身認識しているがなかなか直すことができない。努力しても無理な事だってある――。
優菜は顔も身体も洗い終えて湯船に浸かっていた。自分がいかに駄目な人間かを痛感し、思わず涙が目一杯に浮かんでいた。
「どうして……」
お風呂のなかですすり泣きをしながら目に溢れる涙を手で拭おうとしていた。しかし、拭っても拭っても涙は出てくる――。
一方その頃、優司は新しいバスタオルを優菜の為に用意して閉め切っているドアを開けようとしていた。
お風呂の中から聞こえてくる優菜のすすり泣き――優司は扉の前で座り込んでその声を静かに聞いていた。
「優菜も辛いんだな」
お酒を飲んでいるせいか、優司は悲しい気持ちでいっぱいになっていた。
しばらく待っていると優菜のすすり泣きが止んだ。優司がノックすると。
「優司、バスタオル持って来たから入っていいか?」
「ふぇ!? あ――有難う。いいよ」
優司は浴室の中に入ると、優菜が湯舟に浸かっているのが確認できた。
「あ――」
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「はーい」
さっき泣いていた声のトーンとは違い、先程お酒を飲んでいた時の陽気な声だった。何食わぬ顔で浴室を出たが、バスタオルを置くときに目に入った黒の下着――。
「普通にやらかしたな」
優司はそう呟きながらリビングに戻りビールを再び飲み始めた。優菜が落ち込んでいるところをみて少し酔いが冷めた。
閉め切った浴室から優菜が上がる音がした。
「優司君、ドライヤーはこの棚に置いているやつでいいの?」
「ああ」
物音がしたかと思えば、ある程度髪をふき取った状態で出て来た優菜。バスタオルを巻いて出てくるという事は無く、シャツとショートパンツの姿だったが、完全に乾ききっていない優菜を見て胸の鼓動が高鳴った。
酔っているせいだろうか? と思い一度瞬きしたが、お風呂上りで肌の艶が戻っていることもあり、優菜の姿に見惚れていた。
「どうしたの?」
優菜が怪訝な表情を浮かべると優司は「いや、何でもない」と首を振ってビールを飲みほした。
「あそこに布団敷いているから」
優司がそうテレビを置いているリビングを指すと――。
「寝室で大丈夫だったのに」
「俺が大丈夫じゃないんだが」
優菜は一瞬考え込んだようだが「ああ――」と納得した表情を浮かべていた。
「マジかよこの人」
「私は大丈夫だよ――というかその一人で寝るのが苦手で――せめて大きいぬいぐるみさんが無いと」
「……そう言えばボイスチャットしているときにそんな事言っていたな」
優司が思い出したかのように言うと優菜はコクリと頷いた。
「分かった――俺のマットレスの隣に移動しておく。ドライヤーはその辺でしておいていいから」
「ありがとう!」
表情が明るくなった優菜を見て、優司は大分情緒不安定――いや、外面を気にしすぎて仮面を被っていただけかと思った。
布団を隣に置いた優司はそのままお風呂に入った。
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