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十二歳、夏至祭と波乱の夏 4
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魔石殿で夏至祭の出し物が盛大に行われるということで、アイラは興味深々で会場を見て回っていたらしい。
「エイデン王子がお着きになったみたいなの、もうすぐ舞台で道化師が芸を披露するわ! ねぇ、グレースも一緒に見ましょ!」
興奮気味で瞳をキラキラさせるアイラにグレースは断るも忍びないと思い、承諾することにした。
アイラはいい場所を見つけたと行って、グレースの手をぐいぐい引っ張って中庭に連れて行く。
人混みの中をどんどん進み、どこに行くのだろうと思っていたら、中庭の端にある物置になっている塔を指差してアイラはニッコリとした。
「この上よ。屋上に上がれば、舞台がよく見えるの!」
言われるがままに塔の屋上に上ったグレースは、その景色に関心する。
吹きっさらしの屋上は低い外壁があるだけの少し危うい作りだ。
しかし、そこからは人混みなんて関係なしに舞台を一望できた。
「すごいわ、よく見つけたわね」
「えへへ、下は背の高い大人ばかりで上を見上げるしかなかったの。だけど全然舞台の上が見えないんだもん。そうしたら、この塔が目に入って、あたし気が付いたの! この塔に上れば、下を見下ろせるじゃないかって」
アイラの予想は的中だ。
ここは静かな上に眺めもいい。
舞台の上にはまだ道化師は登場しそうにないので、下の客席を眺めていると中央に舞台がよく見えるよに開けた特別席が設けれているではないか。
特別席には、数人の騎士と使用人が同じ年ごろの金髪の少年を取り囲むように立っている。
その横には良く見知ったピンクブロンドの少女が寄り添っていた。
エイデン王子とミルフィーユ。
遠巻きからなのでよく顔はみえないが、エイデンは確かに立派な金髪の持ち主だと思った。
だけど、それだけだ。
本物の王子を目の当たりにしても、ミルフィーユが熱弁するほどの情熱をグレースは持ち合わせることはなかった。
「あ、道化師が出てきたみたい!」
舞台の上に道化師が上がってくる。
カラフルで奇抜な服に派手なメイク、へんてこな帽子を被った道化師はおどけた様子で様々な芸を次々に披露した。
グレースもアイラも時には感嘆の声を上げ、時にはお腹が痛くなるほど笑い、大いに出し物を楽しんだ。
そして、途中でお腹が空けばコックに貰ったクッキーを分け合った。
踊り子の華麗な舞を見物しながら、今日を憂鬱に思った自分が嘘みたいだと思う。
朝はスノウに会うことが出来た。
今はアイラと楽しい時間を過ごせて嬉しい。
たまにはこんな日もいいものね……
頬を凪ぐ優しい風に当たりながら、出し物の進行を見守った。
華やかなフィナーレを飾り踊り子が舞台から退場する。
夏至祭の出し物もこれで終わりかと思われたが、何やら怪しげな灰色のフードを目深に被った男が札のついた赤い箱をもって現れた。
何かしら……
体がざわつくような嫌な感じがする。
男は舞台の真ん中に用意された赤い箱を静かに置き、高らかに叫んだ。
「さぁさぁ、お立合い! ここに置きたるは、無から宝石を生み出す摩訶不思議な箱である。この杖で叩けば、望みの宝石がポンっと飛び出すぞ! その実力をとくとご覧あれ!?」
細い木の枝を懐から取り出た男は、箱の札がついている場所をパシッと叩く。
「出でよ、アメジスト!」
すると、箱がぶるぶる震えて口から拳くらいの紫色の石を勢いよく吐き出した。
床に落ちた石は日の光を浴び、その紫色の輝きを優美に見せ、自身が高価な宝石なのだと主張する。
会場は拍手喝采し、男は深々とお辞儀をして見せた。
一方、一部始終を観覧していたグレースの嫌なざわつきは増すばかりで……
これから何か酷いことが起こるのではないかという予感が脳裏を過った。
大丈夫よ、まだ何も起きてない。
きっと私の思い過ごしで終わるはず―――
懸命に自分に言い聞かせたが、このグレースの嫌な予感はこの後すぐに的中することとなる。
「エイデン王子がお着きになったみたいなの、もうすぐ舞台で道化師が芸を披露するわ! ねぇ、グレースも一緒に見ましょ!」
興奮気味で瞳をキラキラさせるアイラにグレースは断るも忍びないと思い、承諾することにした。
アイラはいい場所を見つけたと行って、グレースの手をぐいぐい引っ張って中庭に連れて行く。
人混みの中をどんどん進み、どこに行くのだろうと思っていたら、中庭の端にある物置になっている塔を指差してアイラはニッコリとした。
「この上よ。屋上に上がれば、舞台がよく見えるの!」
言われるがままに塔の屋上に上ったグレースは、その景色に関心する。
吹きっさらしの屋上は低い外壁があるだけの少し危うい作りだ。
しかし、そこからは人混みなんて関係なしに舞台を一望できた。
「すごいわ、よく見つけたわね」
「えへへ、下は背の高い大人ばかりで上を見上げるしかなかったの。だけど全然舞台の上が見えないんだもん。そうしたら、この塔が目に入って、あたし気が付いたの! この塔に上れば、下を見下ろせるじゃないかって」
アイラの予想は的中だ。
ここは静かな上に眺めもいい。
舞台の上にはまだ道化師は登場しそうにないので、下の客席を眺めていると中央に舞台がよく見えるよに開けた特別席が設けれているではないか。
特別席には、数人の騎士と使用人が同じ年ごろの金髪の少年を取り囲むように立っている。
その横には良く見知ったピンクブロンドの少女が寄り添っていた。
エイデン王子とミルフィーユ。
遠巻きからなのでよく顔はみえないが、エイデンは確かに立派な金髪の持ち主だと思った。
だけど、それだけだ。
本物の王子を目の当たりにしても、ミルフィーユが熱弁するほどの情熱をグレースは持ち合わせることはなかった。
「あ、道化師が出てきたみたい!」
舞台の上に道化師が上がってくる。
カラフルで奇抜な服に派手なメイク、へんてこな帽子を被った道化師はおどけた様子で様々な芸を次々に披露した。
グレースもアイラも時には感嘆の声を上げ、時にはお腹が痛くなるほど笑い、大いに出し物を楽しんだ。
そして、途中でお腹が空けばコックに貰ったクッキーを分け合った。
踊り子の華麗な舞を見物しながら、今日を憂鬱に思った自分が嘘みたいだと思う。
朝はスノウに会うことが出来た。
今はアイラと楽しい時間を過ごせて嬉しい。
たまにはこんな日もいいものね……
頬を凪ぐ優しい風に当たりながら、出し物の進行を見守った。
華やかなフィナーレを飾り踊り子が舞台から退場する。
夏至祭の出し物もこれで終わりかと思われたが、何やら怪しげな灰色のフードを目深に被った男が札のついた赤い箱をもって現れた。
何かしら……
体がざわつくような嫌な感じがする。
男は舞台の真ん中に用意された赤い箱を静かに置き、高らかに叫んだ。
「さぁさぁ、お立合い! ここに置きたるは、無から宝石を生み出す摩訶不思議な箱である。この杖で叩けば、望みの宝石がポンっと飛び出すぞ! その実力をとくとご覧あれ!?」
細い木の枝を懐から取り出た男は、箱の札がついている場所をパシッと叩く。
「出でよ、アメジスト!」
すると、箱がぶるぶる震えて口から拳くらいの紫色の石を勢いよく吐き出した。
床に落ちた石は日の光を浴び、その紫色の輝きを優美に見せ、自身が高価な宝石なのだと主張する。
会場は拍手喝采し、男は深々とお辞儀をして見せた。
一方、一部始終を観覧していたグレースの嫌なざわつきは増すばかりで……
これから何か酷いことが起こるのではないかという予感が脳裏を過った。
大丈夫よ、まだ何も起きてない。
きっと私の思い過ごしで終わるはず―――
懸命に自分に言い聞かせたが、このグレースの嫌な予感はこの後すぐに的中することとなる。
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