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十二歳、夏至祭と波乱の夏 9
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順風満帆とはまさにこのことだ。
エイデンから夏至祭の話を聞いた時には謙虚な態度をみせつつも、心の中でほくそ笑んだ。
王子が夏至祭の出し物を魔石殿で開催すると聞けば、王城にいる貴族連中も足を運ぶだろう。
その中には、着飾ってエイデンにアピールしにくる令嬢も多数いるに決まっている。
エイデン様の隣にわたくしが寄り添っているのを見れば、あの方たちも認めざるを得ないでしょうね。
自分に向けられる羨望の眼差しを想像するとミルフィーユは楽しみで仕方なかった。
そうして迎えた当日は、予想通り。
貴族令嬢たちの羨望に嫉妬、驚きの反応にすっかり満足した。
今日という日が何処りなく終わり、また一歩、王妃に近づける。
そう思っていた。
ミルフィーユの回想は終わり、現実に戻って来て時が進み始める。
こんな状況は聞いていないし、計画にもない。
最後に見る物がこんなにおぞましい魔物だなんて……
いや、嫌よっ! こんな終わり方したくないわっ!?
黒い大きな鋭い蜘蛛の足がミルフィーユの額を貫く。
目を思いっきり瞑った瞬間―――背後で声がする。
「光の壁よ、我らを守り給え!」
眩しいほどに輝く、半透明の壁が額すれすれの所に展開され蜘蛛の足を遮った。
驚愕したミルフィーユは急いで振り向く。
そこには、黒い髪をたなびかせ、空中から地上に舞い降りた少女の姿があった。
◆◆◆
箱を睨んでいたグレースの瞳に突如として、黒く巨大な蜘蛛の姿が飛び込んでくる。
ギラギラした赤い目に黒々とした巨躯。
離れていてもわかる、その禍々しい気配は明らかな悪意だ。
「ぐ、グレース! あれ、なに……」
アイラの声が驚愕に震える。
グレースも自身の体が無意識に強張るのを感じた。
実際に大きく蠢く敵の力は、自分たちのものよりずっと強いのだと本能が語りかけてくる。
だけど―――
「アイラ、候補試験の時のこと覚えてる? 小鳥を飛ばした、あれと同じことを私の服にも出来る……ううん、やるの。今すぐお願い」
ここで怯えているわけにはいかない。
あれを何とか出来なければ、魔石殿は終わりだ。
真剣な声色の言葉に何をしたいのかを理解したアイラが深く頷く。
そして、グレースの服に手をかざしたアイラは手から眩い光を放出させた。
服は水を吸うスポンジの如く光を取り込んでいき、光は布の繊維一本一本にいたるまで拡散し、全体が神々しいまでの輝きを放つ。
注入が終わったのか、額に玉の汗を浮べ肩で息をするアイラ。
魔力を限界まで服に注いでくれたのだと、直ぐに理解した。
「ありがとう。アイラ……無理をさせてしまって、ごめんなさい」
「ううん……あたしは大丈夫。それよりも、グレース…必ず無事で戻ってきて」
グレースは優しく微笑んで、アイラを安心させる。
そして、屋上の低い外壁によじ登り、一気に舞台目掛けて飛んだ。
小柄な体が重力で地面に誘われた瞬間、服の力で軽やかに浮き上がり、落下することなく加速、一直線に舞台の上を目指す。
目下では魔物の出現に驚いた人々が逃げ惑い、渡り廊下に押し寄せていた。
異変に駆けつけたであろう魔導士たちも、活路を塞がれ立ち往生している。
舞台は目と鼻の先、床にへたり込む王子と魔物と対峙したまま微動だにしないミルフィーユの姿が拡大していく。
が、その時だった―――
ごごごっと唸りを上げながら、鋭く巨大な足が獲物を仕留めと持ち上がり、狙う。
その足の先端にはミルフィーユ姿あり、結界も張らず棒立ちになっている。
強大な敵を前に戦意を喪失させたのかもしれない。
背後では複数人の騎士が到着したが、王子の救出が最優先の様子。
このままでは間に合わない……
グレースは舞台に接近しつつも、夢中で結界を張った。
「光の壁よ、我らを守り給え!」
声に合わせて半透明の光の壁がミルフィーユと蜘蛛の間を遮る。
それでも、蜘蛛の足はお構いなしに進行したが彼女の額に届くことなく、光の壁に阻まれめり込んだ。
エイデンから夏至祭の話を聞いた時には謙虚な態度をみせつつも、心の中でほくそ笑んだ。
王子が夏至祭の出し物を魔石殿で開催すると聞けば、王城にいる貴族連中も足を運ぶだろう。
その中には、着飾ってエイデンにアピールしにくる令嬢も多数いるに決まっている。
エイデン様の隣にわたくしが寄り添っているのを見れば、あの方たちも認めざるを得ないでしょうね。
自分に向けられる羨望の眼差しを想像するとミルフィーユは楽しみで仕方なかった。
そうして迎えた当日は、予想通り。
貴族令嬢たちの羨望に嫉妬、驚きの反応にすっかり満足した。
今日という日が何処りなく終わり、また一歩、王妃に近づける。
そう思っていた。
ミルフィーユの回想は終わり、現実に戻って来て時が進み始める。
こんな状況は聞いていないし、計画にもない。
最後に見る物がこんなにおぞましい魔物だなんて……
いや、嫌よっ! こんな終わり方したくないわっ!?
黒い大きな鋭い蜘蛛の足がミルフィーユの額を貫く。
目を思いっきり瞑った瞬間―――背後で声がする。
「光の壁よ、我らを守り給え!」
眩しいほどに輝く、半透明の壁が額すれすれの所に展開され蜘蛛の足を遮った。
驚愕したミルフィーユは急いで振り向く。
そこには、黒い髪をたなびかせ、空中から地上に舞い降りた少女の姿があった。
◆◆◆
箱を睨んでいたグレースの瞳に突如として、黒く巨大な蜘蛛の姿が飛び込んでくる。
ギラギラした赤い目に黒々とした巨躯。
離れていてもわかる、その禍々しい気配は明らかな悪意だ。
「ぐ、グレース! あれ、なに……」
アイラの声が驚愕に震える。
グレースも自身の体が無意識に強張るのを感じた。
実際に大きく蠢く敵の力は、自分たちのものよりずっと強いのだと本能が語りかけてくる。
だけど―――
「アイラ、候補試験の時のこと覚えてる? 小鳥を飛ばした、あれと同じことを私の服にも出来る……ううん、やるの。今すぐお願い」
ここで怯えているわけにはいかない。
あれを何とか出来なければ、魔石殿は終わりだ。
真剣な声色の言葉に何をしたいのかを理解したアイラが深く頷く。
そして、グレースの服に手をかざしたアイラは手から眩い光を放出させた。
服は水を吸うスポンジの如く光を取り込んでいき、光は布の繊維一本一本にいたるまで拡散し、全体が神々しいまでの輝きを放つ。
注入が終わったのか、額に玉の汗を浮べ肩で息をするアイラ。
魔力を限界まで服に注いでくれたのだと、直ぐに理解した。
「ありがとう。アイラ……無理をさせてしまって、ごめんなさい」
「ううん……あたしは大丈夫。それよりも、グレース…必ず無事で戻ってきて」
グレースは優しく微笑んで、アイラを安心させる。
そして、屋上の低い外壁によじ登り、一気に舞台目掛けて飛んだ。
小柄な体が重力で地面に誘われた瞬間、服の力で軽やかに浮き上がり、落下することなく加速、一直線に舞台の上を目指す。
目下では魔物の出現に驚いた人々が逃げ惑い、渡り廊下に押し寄せていた。
異変に駆けつけたであろう魔導士たちも、活路を塞がれ立ち往生している。
舞台は目と鼻の先、床にへたり込む王子と魔物と対峙したまま微動だにしないミルフィーユの姿が拡大していく。
が、その時だった―――
ごごごっと唸りを上げながら、鋭く巨大な足が獲物を仕留めと持ち上がり、狙う。
その足の先端にはミルフィーユ姿あり、結界も張らず棒立ちになっている。
強大な敵を前に戦意を喪失させたのかもしれない。
背後では複数人の騎士が到着したが、王子の救出が最優先の様子。
このままでは間に合わない……
グレースは舞台に接近しつつも、夢中で結界を張った。
「光の壁よ、我らを守り給え!」
声に合わせて半透明の光の壁がミルフィーユと蜘蛛の間を遮る。
それでも、蜘蛛の足はお構いなしに進行したが彼女の額に届くことなく、光の壁に阻まれめり込んだ。
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