世界樹の下で

瀬織董李

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そろそろ旅立…てない?③

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 そんなこんなで、アリスト様は今回の旅の責任者?である殿下に繋ぎを付け、経由で宰相様から同行の許可をもぎ取ったそうだ。アリスト様は旅の必要資金をいくらか提供し、同行させて貰うことで護衛を騎士プロにお願いするという、Win-Winなのか私にはよくわからん取引をしたらしい。

「アリスト子爵、それはちょっと困るな。彼女は僕の妻というよりは塔に欲しいよ」

 私とアリスト様が、歩きながら話していると、前を進む馬車の荷台からひょこりと殿下が顔を出し口を挟んできた。

 ……それって研究者としてですよね? 魔術士としてですよね? 研究対象としてじゃないですよね?

「どうかな。ハハハ」

 ハハハ、じゃないよ! 爽やかな王子スマイルで誤魔化してるけど、言ってる事はマッドだよ!

「あら、殿下。同行の許可を頂いたのはありがたいですけど、ヴェルちゃん口説くならそっちはアタシに許可をとって頂かないと」

「へ? なんでアリスト様の?」

 口説く、というのはまあ置いといて、なんでアリスト様が関係してんの?単純にそう思って軽い気持ちで口に出しただけだったのに、私の様子を見てアリスト様の目がつり上がった。

「貴女ねぇ!一年近くも旅に出るっていうのにおうちになんにも伝えてなかったでしょ!! たまたまあっちの方行く便があったから手紙もたせたら、なんにも聞いてないって言われたわよ!? 取り敢えずアタシが責任持つ、って言っておいたけど!!」

「あー。まあ、はい、ソウデスネ」

 普通に考えたらそうかもしれないけど、その辺りの考え方は育ちの違いかなあ。

「アリスト様。私……というか、ウチの家族とか村のほとんどは文盲なんですよ」

「……もんもう?」

 田舎で畑耕したり牛飼ったりする人達には、文字は生きていくのに必要じゃない。契約書なんて無くて口頭でほとんどがやり取りされるからだ。

「名前と数字の書き方と多少の計算は教会の司祭様が教えてくれるんですけど、基本私達文章の読み書きが出来ないんですよ。アリスト様が送った手紙ってのも、多分村長が代読したんじゃないですかね」

 私は一応こっちで、簡単な単語とかは教えて貰った。街で暮らすにはある程度文章が読めないと大変だよ、と言われたので。だから絵本レベルなら普通に読めるようになった。難しい専門書とかは無理だけどね。

 で、村に何か届いた時は、一旦全て村長の所へ行く。そこから各家に分けられるけど、手紙や荷物なんて滅多に届くような事はない。全て村の中で完結しているからだ。

「時々近隣の村に嫁いでく娘もいますけど、大抵嫁いだらそれっきりです。村から出る、っていうのはそういう事なので」

 手紙を書こうと思ったら文字が書けないといけない。誰かに頼もうと思ったらお金が要る。お金を使ってまで手紙を書いても受けとる方が読めない。だからその場合村長が代読するんだけど。

「一応、長なんで信用したいところなんですけど、嘘を言ったり誤魔化してないとは限らないですしね。私が何度か送った仕送りも、家族に届いてるかは不明です」

 なんせ、『届いたよありがとう』すら誰かに頼まないと手紙が送れないのだ。私が村から出てきてから一度も手紙は送られて来ていないから、そういうことなのかもしれない。

「だから今回アリスト様が送った手紙は、流石にお貴族様からの、って事で正直に家族に伝えられたんだと思いますけど、家族の反応は『元気してるならそれでいい』だけだったんじゃないですか多分」

 都会に住んでる人にはわからない感覚なんだろう。それだけ『村』というのは閉鎖空間なのだ。
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