世界樹の下で

瀬織董李

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そろそろ旅立…てない?②

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 そんな虹色絹の光沢に、幼少のみぎりよりずっと魅せられて、いつか生産地へ見に行くのがアリスト様の夢だったそうだ。

「父が亡くなるのがもう少し遅かったら行ってたかもしれないけどねぇ。商会を継いでドタバタしてるうちに忘れてたわ」

 時折ふと思い出す事もあったらしいが、日々の仕事の忙しさに心の隅に追いやっていたその夢が、私が行くと聞いて再燃したんだそうだ。

「なんかね、ぶわっと子供の頃の事思い出しちゃって。父にも散々ねだって一人前になれたら、って約束してた事とかもね。そしたらもう居ても立っても居られなくなって、商会の仕事超特急で片付けたわよ」

「お店の方とか大丈夫なんですか?」

「ま、なんとかはなると思うわ。全然連絡つけられないワケじゃないし、何人かのお得意様は虹色絹を仕入れに行く、って言ったら予約されちゃったしね」

 遠い四ヶ月以上もかかる上にバカ高い値段の商品なので、なかなかこの国の王族ですら手に入りにくいらしい。ハンカチサイズ持ってるだけでもお茶会で死ぬほど自慢できるのだそうだ。

 お貴族様だと、王族でもなかなか持てない物を持ってたら、嫉妬で殺されたりしないか?とかなんであいつには売って私には!とかでアリスト様が恨まれるとかありそうだけど、まあ取り敢えずは私には関係ないかな。

「わかんないわよー?」

「は?」

 わかんない、って何がかな?

「貴女、アタシにも黙ってたでしょ『魔法』のコト。年々魔法を使える人が少なくなってる昨今なのよ? それがバレた以上は貴族や王族による囲い込みがあってもおかしくないわね。どっかの伯爵か侯爵あたりの養女に迎えさせて婚約者の居ない殿下に嫁がされるかもよー?」

「げ。そ、それは……」

 それはいやだー!! 前世の小説でよくあるお貴族様同士のおほほほ~笑いとか、この間のブランシュ嬢とのお茶会の時のメイドさんとのやりとりみたいなのがこの先一生続くなんて拷問以外の何物でもないわ!

「だから昔アタシが『ウチの子にならない?』って聞いた時に、受けとけば良かったのよ」

「うう、だってバレると思ってなかったですもん」

 なんせ実家に居る頃は自分からバラした水魔法以外何一つバレたりしなかった。王都に近いとはいえ田舎は田舎。のんびり暮らす脳筋ばっかりなんで、ちょっと変わった事が起きても全部『不思議現象』で済ましちゃうやつらばっかりだったからだ。

「今からでも遅くないからどう? 父が亡くなったから養女は無理だから、アタシのお嫁さんだけど」

「アリスト様のお嫁さん……!?」

 ……うーん。

「社交が一切無しで、コルセットも無しで、毎日畑仕事してていいなら考えなくも……」

「何馬鹿な事言ってんのよ。無理に決まってるでしょ」

「デスヨネー」
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