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「婚約を破棄しようと思う」
「……は?」
前々からぼんくらだとは思ってたけど、マジか?
とある貧乏伯爵家の次男坊である俺が、行きたくなかったのに無理矢理行かされた第一王子・サーヴァルトの誕生日パーティーで、なんもしていない筈なのに何故かいたく気に入られ、側近として仕える様になってはや十年。流石にこんな事を言い出す日が来るとは思わなかった。
こいつが三年前に次期国王として立太子出来たのは、我が国に長子継承が王室典範で定められているからに他ならない。もし、指名制だったら間違いなく優秀な第二王子・アリウス殿下が王太子となっただろう。問題を起こせばその前提が狂うかもしれないのに……それをわかってるのか? ……いや、わかってないからぼんくらだったわ。
こんな阿呆でも王太子である以上公務がある。だが、俺以外の側近達三人と遊び呆けてばかりいて、ここ王太子の執務室はいつも俺一人だ。本来なら俺も王太子に付いてまわって散財を止めにゃイカンのだが、小煩くしてたら書類仕事を押し付けられる様になった。別に俺が自分から側近にしてくれ、って言った訳じゃないんだから辞めてもいいんだけど、内務に泣きつかれたんで渋々続けている。もしかして、俺って仕事を押し付けるのに都合のいい奴隷的なやつとして選ばれたんかな。……ま、まあ民には言えないアレコレが垣間見えてこれはこれで面白いからいいんだけどね。
そんなある日珍しく王太子が一人で執務室に顔を出したと思ったら、冒頭のアレだ。他の側近の奴等はどうした。腰巾着の癖に、王太子一人にすんじゃねぇよ。
「婚約……ってシェリア・フレイム侯爵令嬢との……ですか?」
「当たり前だろう。他に誰が居る」
「いや、居ませんけど。正気ですか?」
フレイム侯爵家は我が国では王家と並ぶ歴史を持つ由緒正しい貴族家のひとつで、これまで何度も王族に嫁いだり逆に降嫁降婿したりと国史にも載る重要な一族だ。先々代の時たまたまなんかの功績で昇爵されて伯爵になったウチとは格がまるで違う。領地は栄え諸外国との交易も盛んで、下手したら王家より金持ってんじゃね? ってくらいの家だ。
そんな、かの家の長女がシェリア嬢で、三年前殿下の立太子に合わせて婚約していた。ドが付く田舎の領地で、幼い頃庶民に混じって泥まみれで転げ回ってた俺とは大違いの本物のお嬢様だ。容姿端麗、マナーもダンスも完璧、頭の回転も早く自国だけでなく他国の歴史にも精通し、おまけに近隣諸国語だけでなく、ある程度は方言まで理解している程の才女だ。王妃となり将来は外交のトップとしての活躍を期待されていた。
……正直このぼんくらが今まで無事に王太子やってられるのもフレイム家の後ろ楯が大きいからだ。それも理解は……してないんだろうな。こんな現状を理解していない事丸出しな発言しやがるんだし。
俺が正気を疑ったのにムッとした顔になるサーヴァルト。将来国王になるってヤツがこの程度で感情を顔に出してちゃ駄目だろ。
「今度王家主催の夜会があるだろう。そこであの女に婚約破棄を叩きつけてやるつもりだ」
ああ、一週間後の夜会か。隣国の王子が表敬訪問の為に来国するんで歓迎の為に開かれるやつ。なんで歓迎すんのに夜会なのかは俺にはよくわからんのだが。一応末端とは言え王太子の側近である俺も参加することになっている。超行きたくないけど。
「なんでまた婚約を破棄することに? シェリア嬢に何か瑕疵でも?」
あのスーパーレディに瑕疵など有るわけがないが、一応聞いてみる。俺のところにまるでなんにも報告あがってきてないし、俺は腰巾着してないしなあ。例えなにかあったとしても、王位に就きたいのならこのぼんくらが我慢すべきだと思うが。
「あの女は事もあろうに可哀想なマーリィを虐めていたのだ!!」
「……は?」
マーリィ……ってーと、最近殿下のお気に入りで侍らせている男爵令嬢だったっけ?
このぼんくらは優秀なシェリア嬢への当て付けなのか、しょっちゅう女性を傍に置いていた。正直アクセサリーくらいの感覚なんだろう。気に入らなくなったら付け替えればいいだけの。だから大抵見目はいいものの、頭と下手すると尻の軽そうな女ばっかりだ。最初は俺も苦言を呈していたが、全く聞きゃしないのでもう諦めた。殿下の側近の中で俺が一番身分が低いからね。そういうのは俺がなんとかする事じゃないだろう。……というか、親の仕事だよな普通は。
「……は?」
前々からぼんくらだとは思ってたけど、マジか?
とある貧乏伯爵家の次男坊である俺が、行きたくなかったのに無理矢理行かされた第一王子・サーヴァルトの誕生日パーティーで、なんもしていない筈なのに何故かいたく気に入られ、側近として仕える様になってはや十年。流石にこんな事を言い出す日が来るとは思わなかった。
こいつが三年前に次期国王として立太子出来たのは、我が国に長子継承が王室典範で定められているからに他ならない。もし、指名制だったら間違いなく優秀な第二王子・アリウス殿下が王太子となっただろう。問題を起こせばその前提が狂うかもしれないのに……それをわかってるのか? ……いや、わかってないからぼんくらだったわ。
こんな阿呆でも王太子である以上公務がある。だが、俺以外の側近達三人と遊び呆けてばかりいて、ここ王太子の執務室はいつも俺一人だ。本来なら俺も王太子に付いてまわって散財を止めにゃイカンのだが、小煩くしてたら書類仕事を押し付けられる様になった。別に俺が自分から側近にしてくれ、って言った訳じゃないんだから辞めてもいいんだけど、内務に泣きつかれたんで渋々続けている。もしかして、俺って仕事を押し付けるのに都合のいい奴隷的なやつとして選ばれたんかな。……ま、まあ民には言えないアレコレが垣間見えてこれはこれで面白いからいいんだけどね。
そんなある日珍しく王太子が一人で執務室に顔を出したと思ったら、冒頭のアレだ。他の側近の奴等はどうした。腰巾着の癖に、王太子一人にすんじゃねぇよ。
「婚約……ってシェリア・フレイム侯爵令嬢との……ですか?」
「当たり前だろう。他に誰が居る」
「いや、居ませんけど。正気ですか?」
フレイム侯爵家は我が国では王家と並ぶ歴史を持つ由緒正しい貴族家のひとつで、これまで何度も王族に嫁いだり逆に降嫁降婿したりと国史にも載る重要な一族だ。先々代の時たまたまなんかの功績で昇爵されて伯爵になったウチとは格がまるで違う。領地は栄え諸外国との交易も盛んで、下手したら王家より金持ってんじゃね? ってくらいの家だ。
そんな、かの家の長女がシェリア嬢で、三年前殿下の立太子に合わせて婚約していた。ドが付く田舎の領地で、幼い頃庶民に混じって泥まみれで転げ回ってた俺とは大違いの本物のお嬢様だ。容姿端麗、マナーもダンスも完璧、頭の回転も早く自国だけでなく他国の歴史にも精通し、おまけに近隣諸国語だけでなく、ある程度は方言まで理解している程の才女だ。王妃となり将来は外交のトップとしての活躍を期待されていた。
……正直このぼんくらが今まで無事に王太子やってられるのもフレイム家の後ろ楯が大きいからだ。それも理解は……してないんだろうな。こんな現状を理解していない事丸出しな発言しやがるんだし。
俺が正気を疑ったのにムッとした顔になるサーヴァルト。将来国王になるってヤツがこの程度で感情を顔に出してちゃ駄目だろ。
「今度王家主催の夜会があるだろう。そこであの女に婚約破棄を叩きつけてやるつもりだ」
ああ、一週間後の夜会か。隣国の王子が表敬訪問の為に来国するんで歓迎の為に開かれるやつ。なんで歓迎すんのに夜会なのかは俺にはよくわからんのだが。一応末端とは言え王太子の側近である俺も参加することになっている。超行きたくないけど。
「なんでまた婚約を破棄することに? シェリア嬢に何か瑕疵でも?」
あのスーパーレディに瑕疵など有るわけがないが、一応聞いてみる。俺のところにまるでなんにも報告あがってきてないし、俺は腰巾着してないしなあ。例えなにかあったとしても、王位に就きたいのならこのぼんくらが我慢すべきだと思うが。
「あの女は事もあろうに可哀想なマーリィを虐めていたのだ!!」
「……は?」
マーリィ……ってーと、最近殿下のお気に入りで侍らせている男爵令嬢だったっけ?
このぼんくらは優秀なシェリア嬢への当て付けなのか、しょっちゅう女性を傍に置いていた。正直アクセサリーくらいの感覚なんだろう。気に入らなくなったら付け替えればいいだけの。だから大抵見目はいいものの、頭と下手すると尻の軽そうな女ばっかりだ。最初は俺も苦言を呈していたが、全く聞きゃしないのでもう諦めた。殿下の側近の中で俺が一番身分が低いからね。そういうのは俺がなんとかする事じゃないだろう。……というか、親の仕事だよな普通は。
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