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第一話
しおりを挟む今日もまた、あの子が家に帰るまで後をついていった。
玄関を開け、家の中へと消えていく。
彼女の名はリカというらしい。
隣にいた女子がそう呼んでいた。
リカちゃんがゴミ箱に捨てていったキャンディの棒。
それを、もう一度手に取る。
オレンジ色の飴が、わずかに白い棒にくっついていた。
リカちゃんの食べ残し。
あの子の唾液が沢山ついてるだろうな。
恍惚とした表情でじっとりと眺める。
帰ったらさっそく…
プルるるる、プルるるる
胸ポケットからつんざくような高い着信音に、思わず眉をしかめる。
誰だ、こんな時間に。
会社の人だろうか。
はぁとため息を吐き、電話を取る。
「はい、影山です。はい…お疲れ様です、はい…」
□□□□□
昔はこんなんじゃなかった。
いつからだろうか、小さな女の子をストーカーするようになってしまったのは。
会社でのストレスか、小さい頃の家庭環境か。
自分でもおかしい奴だと自覚している。
わざわざストーカーしやすいように小学校近くの職場に転職したのも、だいぶいかれている、自覚はある。
「影山さん、ここちょっといいですか」
「ああ、はい」
ぼんやりしたことを考えながらキーボードをカタカタと打っていると、経理課の女性社員から書類が渡される。
確認し終えた後、判を押そうと印鑑、と鞄の中を漁る。
ガサガサ、と鞄の中に入っていたビニール袋が大きな音を立て、その存在に気づいたおれは血の気が引いていくのを感じた。
しまった。
昨日のアレが中に入ったままだ。
バックの隅にあった印鑑ではやく判を押し手渡すと、書類を確認し終えた彼女は自分のデスクへ戻っていった。
何事もなく過ぎ去っていったのを見届けて安堵の息をつく。
なんで自分の家に置いて置かなかったんだ。
ビニール袋の中に入っているキャンディの棒。
これだけ見たら怪しいものではないが、やましいことを考えてた身の上、会社の人に見られたくないものである。
バックの中に元々入っていたビニール袋を更に奥へと押し込んだ。
□□□
差し込む西日が事務所をオレンジ色に染める時間帯。
窓にふとやると、偶然。
ランドセルをからったあの子が友達と帰っていく様子を社内の窓から捉えられた。
腕時計でチラリと時刻を確認する。
17時15分。
今日は仕事も早く片付いたし、急がなくても間に合いそうだ。
一般的に定時は18時だが、幸いこの会社は比較的自由な時間帯で勤務することが出来るので、俺は8時~17時の時間帯で勤務している。なんせ18時になると、あれくらいの年齢の子達はとっくに家に帰ってしまっているのだ。
ゆっくりと帰りの支度を済ませる。
いつも同じルートで帰っているし、焦らなくてもすぐ追いつけるだろう。
そんな悠長なことを考えながら窓の外に目を移すと、驚きの光景を目にする。
いつも通学路通りに真っ直ぐ直進しているはずの道路。
そこを途中の角で突然、曲がり始めたのだ。
ペンケースを触っていた手が、固まる。
急なルート変更。それはストーカーにとって異常事態だ。
こういうことは何度かあった。
普段は真っ直ぐ自宅へ帰宅しているのだが、たまに近くのお店に寄り道したりすることがあるのだ。
あの子の隣を歩いている、1人の女子へと目を向ける。
へアイロンでクルクルと巻いた長い黒髪に、派手なほどのアクセサリー。
またあいつか。
どこかへ寄り道をする時は決まってあの女子が一緒にいるのだ。
アイツに付き合わされているのか、それとも…いや、今はそんなことを考えている暇は無い。
はやく会社を出ないとあの子の行方が分からなくなってしまう。
ターゲットを見失うなんて、ストーカーにとっては一番あってはいけない事態だ。
急ごうと、鞄を片手に持ち椅子から立ち上がろうとしたその時。
「影山さん、もう上がりですか?」
自分の名を呼ばれ、ピタ、と動きを止める。
鞄を持つためにしゃがんだ体勢から首だけを上に上げると、
帰ろうとする俺の前に、大きな影が差し込んだ。
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