もう一度抱きしめて……

星河琉嘩

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第3章

16

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 あれから何度も何度も柚子の中に入り、何度も何度も果てたふたりは、お互いを抱きあって眠っていた。


「……ん」
 柚子が寝返りを打つ度に、零士は自分の方へ抱き寄せて離さない。
 愛しそうに大切に抱き寄せる。
「柚子……」
「ん」
「可愛い」
 そう言われる度に恥ずかしさで顔を隠す。何度言われても恥ずかしい。
「柚子」
 引き寄せ柚子の耳たぶを軽く噛む。
「れ……っ」
 自分の方へ向かせキスをする。
「可愛い」
「もう……っ」
 頭を撫でる零士にぴったりとくっ付く柚子。離れるのが惜しいくらいに離れない。
「ヤバいな……」
「ん?」
「もう一回したい」
「え」
 そう言うと首筋を舐める。
「……ダ、ダメ!」
「ダメなの?」
「……ん」
「身体、キツイ?」
 こくんと頷く。
 ふっと笑ってもう一度ぎゅっと抱きしめ、瞼を閉じた。零士の瞼が閉じたのを見て柚子ももう一度瞼を閉じた。



     ◇◇◇◇◇



 ピンポーン!ピンポーン!
 呼び鈴が鳴り響く。
 その音に目が覚めた零士はゆっくり起き上がる。
 裸のままインターフォンのモニターを見る。
「湊」
 モニターに映っていたのは湊だった。
 寝惚けたまま、玄関を開ける。
「お前なぁ……」
 ため息を吐く湊の顔は少し怒ってるようだった。
「ヤったんかよ」
「うるせぇよ」
「柚子は?」
「寝てる」
「お前も寝てたんだろ」
「眠い……」
「零士」
 廊下を歩き、リビングまで来ると湊は寝室のドアを開ける。
「柚子」
 頭まで布団にくるまった柚子に声かける。
「起きろ。帰るぞ」
 湊の声にうっすらと目を開けた柚子は、のろのろと起き上がる。
 裸のままの自分を見て「あ……」と呟いた。
 身体がダルいと感じるのは昨夜の行為のせい。零士は大切に大切に柚子を抱いた。それに答えるように抱かれた柚子は、身体の痛みより幸福感を感じている。
「着替えろ」
 湊は柚子の素肌を見ても動じないように努めていた。
「零士、お前も仕事だろ」
 リビングのソファーに座って柚子が寝室から出てくるのを待った。



     ◇◇◇◇◇




 湊が迎えに来て、湊に起こされた柚子。
 身体が思うように動かない。
(身体がダルい……)
 昨夜の行為のせい。零士が何度も柚子を求めてきた。柚子も零士を求めてた。
 お互いがお互いを欲しいと感じて行為をしたけど、柚子と零士には差があった。
 柚子は身体が上手く動けなくなるくらいなのに、零士はケロッとしてる。
 ゆっくりと着替え、髪を整えて寝室を出ようとドアノブに手をかける。
 そこにはまだ寝惚けてる零士が湊に小言を言われていた。
「お前なぁ……。頼むから柚子をもっと大事にしてくれ」
「してるよぉ……」
 眠そうな声で答える零士に湊は「してねぇ」と反論する。
(何を話してるんだろう)
 柚子は話の内容が分からなかった。
「会う度にヤってんじゃねぇーよ」
 ドカッとソファーを蹴る。
「仕様がねぇだろ……」
「何が」
「柚子を抱いてると欲情する」
「お前なぁ。俺の妹だぞ」
 その声は怒りと呆れとイライラといろんな感情を含んでいた。
「惚れてんだからいいだろ」
「惚れてたらもっと大事にしてくれ」
「大事にしてるよ」
「ほんとかよ?」
 疑う湊に零士は笑う。
 そんな会話をしてるからなかなかドドアを開けられない。
「本当に、頼むよ」
 湊の言葉でふたりの話は終わったらしい。
 漸くドアを開けることが出来た。


「じゃ柚子。帰るぞ」
 頷いて、湊と一緒にマンションを出ていこうとする。
「柚子」
 玄関まで行くと零士が声をかける。
「また連絡する」
「うん」
 離れたくない思いを引きずって湊と一瞬にマンションを出る。
 車に乗り込むと、湊が柚子に言った。
「零士にも言ってんだけどさ、本当に気を付けろよ」
「なに」
「まだ高校生だ。母親になるのにはまだ早いからな。気を付けろ。それと、零士と付き合ってるって世間に知られないようにしろ。大変なことになるだろうから」
 こくんと頷いて車のシートベルトをした。それを確認して湊は車を走らせた。
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