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第1章
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別荘の庭でワイワイと騒ぐメンバーたち。零士の傍で笑う柚子。崇弘は今日何本目のビールを空けて大声で叫びながらフザけている。崇弘を見て輝は呆れつつ、真司と一緒に肉を焼いている。
沙樹はそんなメンバーたちに囲まれて過ごす時間か好きだった。
(学校がつまらないと感じるのはこの人たちを見てるからかも)
輝たちはとても仲がいい。いつか自分にもそんな仲間が出来るかなと思っていたけど、やっぱり【愛人の子】というレッテルがついて回る。みんな、一歩引いてしまうのだ。
愛人の子のくせに裕福に暮らしてるのも、気に入らないのだろう。
「さーきちゃん……っ」
隣に崇弘が座る。
「学校は……、どう?楽しい?」
顔を赤らめた崇弘は酒臭い。それでもそんな崇弘も沙樹は好きなのだ。
「つまらないです」
「光葉高校……、なんだろぉ」
「はい」
「友達はぁ?」
そう聞かれて首を横に振る。
「高幡の話を知らない人はいないから」
「そっ……かぁ」
ポンと頭に手を置くと、持っていた缶ビールをグイッと飲み干す。
「いつかぁ……、沙樹……ちゃんの、ことぉ、分かって……くれる友達……出来るよぉ」
酔っ払った崇弘は缶ビールを取りに立ち上がった。
「まぁ、出来なくてもぉ、オレらがいるしぃ……」
その言葉に沙樹は頷いた。
◇◇◇◇◇
夜中に目が覚めてしまった沙樹は、部屋を抜け出して一階のリビングに降りる。この別荘は何度か来ているから、どこに何があるのかよく知ってる。
一階には大きなリビングと大きなキッチンがある。一般家庭じゃありえない広さだ。
高幡家もそれなりの邸宅だが、崇弘の実家も相当なものだから、別荘がこんなに広いのも頷ける。
リビングに降りた沙樹は、そのリビングでまだひとりで飲んでる崇弘を見つけた。
「タカちゃん」
呼び掛けると「ん?」と振り返る。
「さぁ~きぃ~。……んだぁ、ね……むれないのかぁ」
相当酔っ払った崇弘は沙樹を手招きする。座ってるソファーの隣を指すと、そこに座るように言う。
言われるがままに隣に座った沙樹は、落ち着かない。
好きな人が隣にいる。しかも今はふたりきりだ。
「お前ぇ……、んとにぃ……きれいにぃ……なったよなぁ」
ぽんと頭に手を置く。
「あ~んなに、小さかったのになぁ」
「もう、私そんなに小さくなかったよ」
「しょお……がくせぇ、だったんだぜぇ。はじめてぇ、あったんはぁ……」
崇弘にとっては沙樹はまだまだ小学生のイメージなのかもしれない。そう思うと悲しくなった。
「タカちゃん……」
俯いた沙樹は、ぎゅっと手に力を入れた。
「私……、もう小学生じゃないよ。子供扱いしないで」
「ん?」
酔っ払った崇弘に何かを言っても次の日には忘れてることが多い。今、自分の気持ちを伝えても、きっと忘れてる。それでも沙樹はもう自分を抑えていられなかった。
「タカちゃん。私、タカちゃんが好きだよ」
顔を上げると崇弘のビックリした顔がそこにあった。
「知ってる」
静かに言う崇弘は、再び沙樹の頭に手を置いた。
「……知ってる?」
口をついて出た言葉は自分の声じゃない気がした。
「ずっと、知ってた」
真っ直ぐ沙樹を見下ろすその顔は、酔っぱらいの筈なのにしっかりとしていた。
「タカちゃん……」
崇弘の服を掴み、俯いた。
「私……、タカちゃんが欲しい」
そして崇弘に抱きついた。その沙樹の背中を擦り落ち着かせる。
「沙樹。俺はやめておけ」
沙樹の身体を離すとそう言った。
「タカちゃん……」
「俺はお前より10も年上だ。それに輝になに言われるか……」
確かに輝が知ったらどうなることか。想像しただけでも恐ろしい。輝は友人の湊よりもシスコンだと、みんなが言ってるくらいだった。
「俺なんかよりもいい男はいるぞ」
そう言うと沙樹の頭を撫でた。
(いつまでも子供扱い……)
崇弘が沙樹の気持ちに応えられないことは、沙樹も分かっていた。崇弘は大人だし沙樹は子供だし。それでも沙樹は崇弘が好きだった。
すっと立ち上がった崇弘は、少しよろけながら階段を昇っていった。
沙樹はそんな崇弘の後ろ姿をただ眺めているだけだった。
沙樹はそんなメンバーたちに囲まれて過ごす時間か好きだった。
(学校がつまらないと感じるのはこの人たちを見てるからかも)
輝たちはとても仲がいい。いつか自分にもそんな仲間が出来るかなと思っていたけど、やっぱり【愛人の子】というレッテルがついて回る。みんな、一歩引いてしまうのだ。
愛人の子のくせに裕福に暮らしてるのも、気に入らないのだろう。
「さーきちゃん……っ」
隣に崇弘が座る。
「学校は……、どう?楽しい?」
顔を赤らめた崇弘は酒臭い。それでもそんな崇弘も沙樹は好きなのだ。
「つまらないです」
「光葉高校……、なんだろぉ」
「はい」
「友達はぁ?」
そう聞かれて首を横に振る。
「高幡の話を知らない人はいないから」
「そっ……かぁ」
ポンと頭に手を置くと、持っていた缶ビールをグイッと飲み干す。
「いつかぁ……、沙樹……ちゃんの、ことぉ、分かって……くれる友達……出来るよぉ」
酔っ払った崇弘は缶ビールを取りに立ち上がった。
「まぁ、出来なくてもぉ、オレらがいるしぃ……」
その言葉に沙樹は頷いた。
◇◇◇◇◇
夜中に目が覚めてしまった沙樹は、部屋を抜け出して一階のリビングに降りる。この別荘は何度か来ているから、どこに何があるのかよく知ってる。
一階には大きなリビングと大きなキッチンがある。一般家庭じゃありえない広さだ。
高幡家もそれなりの邸宅だが、崇弘の実家も相当なものだから、別荘がこんなに広いのも頷ける。
リビングに降りた沙樹は、そのリビングでまだひとりで飲んでる崇弘を見つけた。
「タカちゃん」
呼び掛けると「ん?」と振り返る。
「さぁ~きぃ~。……んだぁ、ね……むれないのかぁ」
相当酔っ払った崇弘は沙樹を手招きする。座ってるソファーの隣を指すと、そこに座るように言う。
言われるがままに隣に座った沙樹は、落ち着かない。
好きな人が隣にいる。しかも今はふたりきりだ。
「お前ぇ……、んとにぃ……きれいにぃ……なったよなぁ」
ぽんと頭に手を置く。
「あ~んなに、小さかったのになぁ」
「もう、私そんなに小さくなかったよ」
「しょお……がくせぇ、だったんだぜぇ。はじめてぇ、あったんはぁ……」
崇弘にとっては沙樹はまだまだ小学生のイメージなのかもしれない。そう思うと悲しくなった。
「タカちゃん……」
俯いた沙樹は、ぎゅっと手に力を入れた。
「私……、もう小学生じゃないよ。子供扱いしないで」
「ん?」
酔っ払った崇弘に何かを言っても次の日には忘れてることが多い。今、自分の気持ちを伝えても、きっと忘れてる。それでも沙樹はもう自分を抑えていられなかった。
「タカちゃん。私、タカちゃんが好きだよ」
顔を上げると崇弘のビックリした顔がそこにあった。
「知ってる」
静かに言う崇弘は、再び沙樹の頭に手を置いた。
「……知ってる?」
口をついて出た言葉は自分の声じゃない気がした。
「ずっと、知ってた」
真っ直ぐ沙樹を見下ろすその顔は、酔っぱらいの筈なのにしっかりとしていた。
「タカちゃん……」
崇弘の服を掴み、俯いた。
「私……、タカちゃんが欲しい」
そして崇弘に抱きついた。その沙樹の背中を擦り落ち着かせる。
「沙樹。俺はやめておけ」
沙樹の身体を離すとそう言った。
「タカちゃん……」
「俺はお前より10も年上だ。それに輝になに言われるか……」
確かに輝が知ったらどうなることか。想像しただけでも恐ろしい。輝は友人の湊よりもシスコンだと、みんなが言ってるくらいだった。
「俺なんかよりもいい男はいるぞ」
そう言うと沙樹の頭を撫でた。
(いつまでも子供扱い……)
崇弘が沙樹の気持ちに応えられないことは、沙樹も分かっていた。崇弘は大人だし沙樹は子供だし。それでも沙樹は崇弘が好きだった。
すっと立ち上がった崇弘は、少しよろけながら階段を昇っていった。
沙樹はそんな崇弘の後ろ姿をただ眺めているだけだった。
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