もう一度会いたい……【もう一度抱きしめて……】スピンオフ作品

星河琉嘩

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第2章

22

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 冬休みは家族で過ごした沙樹は、初詣も家族と一緒だった。だけどその中には輝はいなかった。輝が年末年始に帰って来られるのは、今までなかった。
 一度、零士が休んでる間に1日だけ帰って来れた。その他は帰って来ない。

『明けましておめでとう』
 輝から電話があったのは、明日から新学期だという日の夜だった。
「もうっ。ずいぶんと遅いよー」
『あははっ』
「また紗智おばちゃんにあちこち連れ回されたんだけど」
 沙樹が紗智を嫌がるのはこれも原因だったりする。愛人の子だからといって差別はしない。だが、紗智も由紀子も娘を産んでないから、初めての女の子が可愛くて仕方ないのだ。いつも会うと着せ替え人形のようになってしまう。
 手土産に洋服やらアクセサリーやら持ってくる。今回はそれに加えてコスメも持ってきたくらいだった。
「もう大変だったんだからー」
 それを聞いた輝は爆笑していた。

「今度いつ帰ってくるの?」
 それに「う~ん……」と唸る輝は、申し訳なさそうに答える。
「またアメリカ行くんだよ」
「えー……」
「母さんたちに悪いって言っておいて」
「自分で言えばいいのに」
「悪い」
 輝がそれを言わないのは、由紀子が寂しそうな声を出すから。寂しそうな顔をしているのが想像出来るから。

(タカちゃんもアメリカに行っちゃうんだね)
 沙樹もまたそれを聞いて寂しい思いでいっぱいだった。



     ◇◇◇◇◇



「いつ行くの?」
 輝と電話を切った後、すぐに崇弘に電話をかけた。崇弘が電話に出るなりそう聞いた沙樹に、崇弘は驚いた。だがすぐにアメリカ行きのことだと理解する。
『輝か』
「ん……」
『来週だな』
「行く前に会えないの?」
『難しいな。仕事が入ってる』
 それはいつもことだった。いつもレコーディングの為にアメリカに行くが、その前に他の仕事が詰まっていたりする。
「そっか……」
 寂しい思いはいつもしてる。それはBRがデビューしてからずっとだった。それまでは会おうと思えばいつでも会える距離だった。

(でも今は──……)

 黙ってしまった沙樹に、崇弘はポツリと呟いた。
「会いてぇな……」
 それは心からの言葉だった。


 第2章   終
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