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第1章
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放課後。3人を連れて湊の家まで行く。湊の家は、高幡屋からそう離れてはいない。高幡屋は住宅街から少し離れた、商店街の中に位置する。目の前には「高幡屋前」とバス停がある。そのくらい高幡屋は大きい。そのバス停に着くと、ちょうど店先に出ていた母親に声をかけられた。
「輝」
「ただいま。これから湊の家に行ってくる」
「あら。湊くん、休み?」
「うん」
輝は零士たちを連れて、歩いていく。商店街を抜けた角を曲がると、住宅街へと入っていく。住宅街に入ってすぐの古い家は、輝の父親の実家だ。そこには父方の祖母がひとりで暮らしていた。その祖母は、去年亡くなった。その為その家は今は誰も住んでいない。たまに母親が家の手入れをしている。
その家から数件先の角を曲がると、住宅の雰囲気が一変する。古い住宅が建ち並んでいた通りとは正反対のキレイな近代風の家が建ち並んでいる。その道を歩いて数分。同じような家が建ち並ぶ住宅街へと入る。そのうちの一軒家の前に止まると、輝はインターフォンを鳴らした。
『はい』
少しして、インターフォン越しに女性の声が聞こえた。
「あ、高幡です。湊のお見舞いに来ました」
慣れた感じで輝はそう言うと、玄関のドアが開くのを待った。しばらくして玄関のドアが開くと、キレイな女性が顔を出した。
「輝くん」
「こんにちは。おばさん。湊、どうですか?」
「まだ少し熱があってね」
そう言って、輝の後ろにいるふたりを見た。
「同じ高校の同級生です」
輝はそう3人を紹介した。
「いらっしゃい。でもうつると大変だから、今日はごめんね」
「あ、じゃこれ!」
零士は湊の母親に、授業のノートのコピーを渡した。
「今日のコピーです」
「ありがとう。渡しておくわね」
そう言って、湊の母親は4人が帰って行くのを見送った。
❏ ❏ ❏ ❏ ❏
「しかし~…」
湊の家から輝の家に戻ると、真司が呆気に取られるように、部屋の中を見渡した。純和風の屋敷といってもいいくらいの、その家。通りに面した屋根には、大きく高幡屋と看板が掲げられている。
「お前、高幡屋のボンボンだったんだな」
崇弘は輝にそう言った。
「お前、知ってんの?」
真司は崇弘に言うと、崇弘は「知ってる」と答えた。
「うちのババァが、よく着物買ってる」
「ババァ?」
「あ、母親。うちは兄貴も弟も、親のことババァ、ジジィって呼んでる」
「かわいそうに」
笑いながらそう言う零士も、輝の部屋をぽかーんと眺めている。輝の家は2階建て。2階には子どもたちの部屋が4部屋。1階には台所、居間、風呂場に両親の部屋、祖父母の部屋がある。そして居間からは店舗へと出ることが出来る。更に店の倉庫と店の駐車場、自宅の駐車場に、庭……と、かなり広い。
真司と零士はその広さに驚いているが、崇弘は然程驚くことはしない。それもその はずだ。崇弘の父は、地元では知らない人がいないくらいの実業家なのだ。家も洋風建築の大きな家。父親の仕事は、不動産にレストラン、ホテルに地元商店街のプロデュースやら、とにかく幅広い。母親も父親と一緒に仕事をしている。その為か、崇弘は輝の家を見ても驚くことはないのだ。それどころか、崇弘の母親の趣味は着物で、よく高幡屋から着物を買っているのだ。
「お前は驚かないのな」
零士は崇弘に言うと、「まぁな」と答える。
「だって俺の部屋もこのくらい広い」
輝の部屋は10畳くらいある。
「お前もボンボンか!」
零士は崇弘にそう言うと、真司は崇弘に向かって「お前の部屋、もっと広いじゃねぇか」と言う。
「真司、知ってんの?」
「だってコイツとは幼馴染みだよ。ガキん時から、一緒。コイツの家、凄ぇ金持ち」
「へぇ…」
零士は呆気に取られる。
「まさか輝まで金持ちとは思わなかった。なんでお前ら、公立の高校通ってんだよ」
真司の言葉に、零士も うなずく。
「私立行ったって、つまんねぇじゃん」
「俺は湊が、光葉高校受けるって言ったから」
「輝と湊って幼馴染みなのか」
「いや、中学で仲良くなった」
真司たちは輝の部屋で、ワイワイギャーギャーと騒いでいた。
「輝」
「ただいま。これから湊の家に行ってくる」
「あら。湊くん、休み?」
「うん」
輝は零士たちを連れて、歩いていく。商店街を抜けた角を曲がると、住宅街へと入っていく。住宅街に入ってすぐの古い家は、輝の父親の実家だ。そこには父方の祖母がひとりで暮らしていた。その祖母は、去年亡くなった。その為その家は今は誰も住んでいない。たまに母親が家の手入れをしている。
その家から数件先の角を曲がると、住宅の雰囲気が一変する。古い住宅が建ち並んでいた通りとは正反対のキレイな近代風の家が建ち並んでいる。その道を歩いて数分。同じような家が建ち並ぶ住宅街へと入る。そのうちの一軒家の前に止まると、輝はインターフォンを鳴らした。
『はい』
少しして、インターフォン越しに女性の声が聞こえた。
「あ、高幡です。湊のお見舞いに来ました」
慣れた感じで輝はそう言うと、玄関のドアが開くのを待った。しばらくして玄関のドアが開くと、キレイな女性が顔を出した。
「輝くん」
「こんにちは。おばさん。湊、どうですか?」
「まだ少し熱があってね」
そう言って、輝の後ろにいるふたりを見た。
「同じ高校の同級生です」
輝はそう3人を紹介した。
「いらっしゃい。でもうつると大変だから、今日はごめんね」
「あ、じゃこれ!」
零士は湊の母親に、授業のノートのコピーを渡した。
「今日のコピーです」
「ありがとう。渡しておくわね」
そう言って、湊の母親は4人が帰って行くのを見送った。
❏ ❏ ❏ ❏ ❏
「しかし~…」
湊の家から輝の家に戻ると、真司が呆気に取られるように、部屋の中を見渡した。純和風の屋敷といってもいいくらいの、その家。通りに面した屋根には、大きく高幡屋と看板が掲げられている。
「お前、高幡屋のボンボンだったんだな」
崇弘は輝にそう言った。
「お前、知ってんの?」
真司は崇弘に言うと、崇弘は「知ってる」と答えた。
「うちのババァが、よく着物買ってる」
「ババァ?」
「あ、母親。うちは兄貴も弟も、親のことババァ、ジジィって呼んでる」
「かわいそうに」
笑いながらそう言う零士も、輝の部屋をぽかーんと眺めている。輝の家は2階建て。2階には子どもたちの部屋が4部屋。1階には台所、居間、風呂場に両親の部屋、祖父母の部屋がある。そして居間からは店舗へと出ることが出来る。更に店の倉庫と店の駐車場、自宅の駐車場に、庭……と、かなり広い。
真司と零士はその広さに驚いているが、崇弘は然程驚くことはしない。それもその はずだ。崇弘の父は、地元では知らない人がいないくらいの実業家なのだ。家も洋風建築の大きな家。父親の仕事は、不動産にレストラン、ホテルに地元商店街のプロデュースやら、とにかく幅広い。母親も父親と一緒に仕事をしている。その為か、崇弘は輝の家を見ても驚くことはないのだ。それどころか、崇弘の母親の趣味は着物で、よく高幡屋から着物を買っているのだ。
「お前は驚かないのな」
零士は崇弘に言うと、「まぁな」と答える。
「だって俺の部屋もこのくらい広い」
輝の部屋は10畳くらいある。
「お前もボンボンか!」
零士は崇弘にそう言うと、真司は崇弘に向かって「お前の部屋、もっと広いじゃねぇか」と言う。
「真司、知ってんの?」
「だってコイツとは幼馴染みだよ。ガキん時から、一緒。コイツの家、凄ぇ金持ち」
「へぇ…」
零士は呆気に取られる。
「まさか輝まで金持ちとは思わなかった。なんでお前ら、公立の高校通ってんだよ」
真司の言葉に、零士も うなずく。
「私立行ったって、つまんねぇじゃん」
「俺は湊が、光葉高校受けるって言ったから」
「輝と湊って幼馴染みなのか」
「いや、中学で仲良くなった」
真司たちは輝の部屋で、ワイワイギャーギャーと騒いでいた。
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