紅い薔薇 蒼い瞳

星河琉嘩

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第3章

15

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 ホテルのバスルームでシャワーを浴びている間、理菜はドキドキと心臓の音が跳ねるのを感じていた。
 なんでこうも緊張するんだろう。
 何度かそういうことをしているのに、なんでこうも緊張しているんだろう。


 冷たくなった身体を「温めろ」と、バスルームに入れられて、そのままシャワーを浴びていた。良樹はそれ以上、何も言わないから理菜は良樹に従っていた。
 良樹はTVを観ているようで、バスルームにまでTVの音が聞こえてくる。
「緊張してるのはあたしだけ?」
 ポツリと呟いて、理菜は素早くシャワーを浴びる。

 冷たくなった身体が温まっていくのを感じる。自分の身体を見ると、薄っすらと痣が残っていた。
 マサシが強く掴んだ時に出来た痣。
「なんでこんなことに……」
 その痕を見て辛くなっていた。
 マサシに触れられたことよりも、良樹の目の前で触れられたことが嫌な気持ちにさせていた。


 ──悔しい。
 ──怖い。
 ──辛い。
 ──痛い。


 いろんな感情が渦巻いていた。その感情のせいで、情緒が不安定になる。自分でも分からない感情を抱えて、理菜はバスルームから出た。
 バスルームを出て、どうすればいいのかと考えて、とりあえずもう一度洋服を着ることにした。そして良樹のいるベッドルームへと行った。

「髪、ちゃんと拭けよ」
 呆れた声で言う良樹に理菜は顔を真っ赤にする。
「それになんで服着てるんだよ。どうせ脱ぐのに」
 意地悪な顔をして笑う良樹は、理菜を抱き寄せた。
 そして腕にある痣に気付いて顔をしかめた。
「マサシか」
 ボソッと言った良樹の声は低く冷たかった。


「……ヨシキ」
 不安な気持ちを隠して良樹に呼びかける。それでも隠しきれていない理菜にキスをする。
「んな顔すんな」
 良樹の顔を見上げると、理菜をソファーに座らせる。
 手にはまだタオルが握られていて、理菜の髪を拭いてる。
 その手が優しくて安心してくる。
「ちゃんと拭いて来いよ」
 もう一度そう言うと、苦笑しながら髪を拭いていた。その仕草が心の奥をきゅんとさせる。
 でもやっぱり不安は掻き消されることはなくて、涙が溢れそうになっていた。


「言ったろ。俺はお前に惚れてんだって」
 その言葉が涙に変わる。
 耐えていた涙が溢れてくる。
「泣き虫」
 そう言った良樹は、理菜を抱きかかえてベットへと向かった。ベットに理菜を下ろすと、理菜にシーツを被せた。
「シャワー、いってくる」
 良樹がバスルームに入って行くのを目で追って、理菜はベットの中に潜り込んだ。
 シャワーを浴びに行った良樹の気持ちを知らずに、自分の気持ちを抑えるのに必死だった。
 不安がなくならない。
 あんなに優しい良樹を信じていないわけじゃない。こんなにも優しく愛してくれる良樹を、信じていないわけじゃない。
 それでも不安が理菜を押し潰そうとしていた。


 ベットの中で、その気持ちを消そうと必死だった。だからなのか、良樹がシャワーから出てきたのにも気付かないでいた。
「リナ」
 ドキンッと、心臓が跳ねる。
 ギシッとベットが軋む音。
 ベットの中で丸くなってる理菜を、背後から抱き寄せる。不安な顔をしたまま、緊張した顔のまま理菜は、良樹の腕の中に納まる。
 良樹の素肌はシャワーの熱で、いつも以上に温かく理菜を安心させる。
 心臓の音が聞こえ、そのまま睡魔を誘うくらい安心してきっていた。

 優しく優しく抱いてくるその腕。心の奥から安心出来る場所だった。身体中を優しい手が駆け巡る。優しい声が理菜に降りてくる。

 
 ──安心出来る場所。
 ──ここがあたしの居場所。


「なぁ、リナ」
 理菜を何度も抱いた良樹は、ウトウトし始めてる理菜に言った。
「もう二度と他の男に触れさせるな」
 顔を良樹の胸に埋めている理菜は、頷くことしか出来ない。
 理菜は安心感から眠りについた。



     ◆◆◆◆◆



 目覚めた時、隣には良樹はいなかった。不安になってキョロキョロする理菜に声がかかる。
「起きたか」
 バスルームから出てきた良樹は理菜にキスをする。優しく唇に触れてくるだけのキス。それだけでも安心する。


「着替えろ。出るから」
 ギュッと抱きしめて笑った笑顔に理菜も笑った。
「あ。リナ」
 TVを観ていた良樹が言った。
「昨夜、言ったこと覚えてるか?」
「え」
「他の男に触れさせるなって」


 ──あ……。


 ウトウトしていたから、記憶が曖昧だった。理菜はぼんやりとしながらも、記憶を辿っていった。
「約束だからな。そう何度もあって堪るか」
 その声は怒りを抑えてるって感じで、でもその怒りは何処にぶつければいいのか分からないって感じだった。
 それは理菜を思ってのことだって分かる。
 理菜を愛してくれてるってことだって分かる。


 だからもう、心配することはない。
 自分はここにいればいい。
 そう思わされた。

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