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第4章
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倉庫からバイクで走らせてここまで来る間、駿壱の表情は暗かった。余程百合を守れなかったことを、悔やまれるんだろう。
キッと唇を噛み締めたままだった。
大熊を倉庫に置いて、理菜を見てろって言うのは何度目だろうと、良樹は思っていた。そうでもしないと、自分も行くと言って利かないだろう。
真美が理菜を狙っていたのは、だいぶ前から知ってた。真美が、ジンたちと繋がったのは知ってた。
それが確信に変わったのは、青薔薇の下っ端たちが捕まった時。
その中に亜紀がいた。
だからこそ、理菜を関わらせるわけにはいかなかった。亜紀の為なら、自分のことなんかどうでもいいって考えている。
理菜から目を離すと、確実にJ・Fのところへ行ってしまう。そんな思いから、大熊を倉庫に置いて見張らせた。
不安は尽きない。
亜紀と浩介の姿も見えない。
亜紀はもしかしたら、他の青薔薇と一緒かもしれない。だが浩介は、いつも駿壱の周りをウロチョロしてる筈なのに、この日に限っていなかった。
それが理菜に知られたら、自分の所為だとして勝手な行動を取ってしまうだろう。
良樹は他の面子に、浩介を探すように命令した。今頃、下っ端達は街中を探し回ってる。
BTの溜まり場であるこの工場を見るのは何度目だろう。ここに真美が百合を捕らえているのは分かってる。駿壱を見ると、本気な目で工場を見ていた。
工場の周りには、良樹たちよりも早く着いていた暴走連合の面子が勢ぞろいしている。
「ヨシキ」
アキラとヒデが俺のところに来て、工場を見る。
「ユリさん、なんで?」
「……俺が、俺のミスだ」
俺の隣で力なく言う駿壱。
ふたりが駿壱を見ると、何も言えなくなっていた。
「俺が、マミに油断したんだ」
真美は駿壱が初めに惚れた女だ。どうにもならないくらいに惚れていた女だ。
だから真美の裏切りを許せなかった。
なのに、そんな真美の行動に油断したと言う。
「許せなかった。でも……」
唇を噛んだ駿壱が、今でも真美のことを信じてるんだって感じた。
「行くぞ」
良樹がそう言うと、工場の中へ入って行った。
◆◆◆◆◆
ガシャンッと音をたてて扉を開くと、大勢の男達がその扉から工場の中へと入って行く。そしてそこには、マサシと一緒にいる真美の姿があった。
「やっぱり来た」
甘い声で話す真美。
真っ直ぐに良樹のところへ歩いて来る。そして良樹に抱きつく。
その真美に不快な思いを顔を出す。
「ヨシキ。あたしを迎えにきてくれたんだ」
その言葉に、良樹は虫酸が走る。
──なんでこの女と付き合っていたりしたんだろう。
──こんな自分のことしか考えていないような女と。
そう思うと自分に腹が立った。
「離れろ」
良樹はそう言うと、自分に抱きつく真美を引き剥がした。
「マミ。ユリはどこだ」
隣にいた駿壱が真美をじっと見てる。その駿壱に視線を移すと、ふっと笑った。
「あんたのユリは、他の男の手に落ちたよ」
そう言ってマサシのところに戻っていく。
「あんたの妹がいけねぇんだ。このマミの男を取るからなぁ」
マサシがそう言うと立ち上がる。そして真美を抱きしめキスをする。
マサシを受け入れていた、真美の行動が読めない。
ガサッと隣で動く音がした。
振り返ると駿壱が、真美に向かって歩いているのが見えた。
「マミ……ッ!」
真美の髪を掴んでマサシから引き剥がすと、顔を近づけ威嚇する。
「リナは関係ねぇだろ……ッ!俺のユリを返せッ」
大声が響く。そしてゆっくりと良樹は動いた。
マサシに向かって歩く。
「マサシ……。俺の姉貴を返してもらう」
ボキボキと手の指を鳴らして近付いてく。マサシも戦闘態勢に入る。
そして俺とマサシの殴り合いを合図に、喧嘩が始まった。
後ろでBTの面子と暴走連合の面子が殴り合いをしている。
鈍い音が響く。
そんな中、俺とマサシは睨み合い殴ったり蹴ったりを繰り返していた。そして駿壱は、真美の髪を掴んだまま動かない。じっと真美を睨み付けていた。真美も駿壱を睨み付けていた。
「シュンくん」
真美が駿壱の名前を呼んだ。
「昔の女に手、出すんだ。サイテーだね」
それでも駿壱は何も言わない。髪を掴んだまま何もしない。
それが駿壱の優しさ故の行動だ。
本気で惚れていた女なだけに、何も出来ない。
それが痛い程、伝わってくる。
「シュン!」
一樹の声が響く。
その声にはっとした駿壱は、真美の髪を離した。
「ユリを……返せ」
漸く出た言葉は低く冷たい。
「今はお前よりもユリが大事だ。そして妹が何よりも大事だ」
ゆっくりと低い声が、喧嘩の音に紛れて聞こえてくる。
「知ってるよな。俺が本気出したら女でも許さねぇ……」
真美に一歩近付いた。その駿壱の迫力に負けて、真美は後ずさりする。
前、理菜が襲われた時。
駿壱は後輩達を呼んだ。
そして良樹が、後輩達に真美を好きにしていいと命令した。
あの後、真美は女に飢えた後輩たちにヤられた。その話を駿壱は後輩達から黙って聞いていた。
「あの時よりも酷いこと、されてぇか」
駿壱の声が、真美に向けられる。
息を飲む真美を、駿壱は冷たい表情で見ていた。
「おい」
マサシが良樹に向かって拳を振り上げる。それをかわした良樹は、ニヤッとマサシに視線を向ける。
「いい加減に姉貴を返してくんねぇかな」
ドカッと蹴りを入れマサシが、冷たいコンクリートの上に転がった。そのマサシを見下ろし、腹を蹴る。
「うっ」と呻き声を上げるマサシを見たBTの面子。
BTの面子は、オドオドと逃げていくのを確認した。
「マミ。今後一切、俺らに関わるな」
ギロッと真美を見ると怖々と頷いた。
キッと唇を噛み締めたままだった。
大熊を倉庫に置いて、理菜を見てろって言うのは何度目だろうと、良樹は思っていた。そうでもしないと、自分も行くと言って利かないだろう。
真美が理菜を狙っていたのは、だいぶ前から知ってた。真美が、ジンたちと繋がったのは知ってた。
それが確信に変わったのは、青薔薇の下っ端たちが捕まった時。
その中に亜紀がいた。
だからこそ、理菜を関わらせるわけにはいかなかった。亜紀の為なら、自分のことなんかどうでもいいって考えている。
理菜から目を離すと、確実にJ・Fのところへ行ってしまう。そんな思いから、大熊を倉庫に置いて見張らせた。
不安は尽きない。
亜紀と浩介の姿も見えない。
亜紀はもしかしたら、他の青薔薇と一緒かもしれない。だが浩介は、いつも駿壱の周りをウロチョロしてる筈なのに、この日に限っていなかった。
それが理菜に知られたら、自分の所為だとして勝手な行動を取ってしまうだろう。
良樹は他の面子に、浩介を探すように命令した。今頃、下っ端達は街中を探し回ってる。
BTの溜まり場であるこの工場を見るのは何度目だろう。ここに真美が百合を捕らえているのは分かってる。駿壱を見ると、本気な目で工場を見ていた。
工場の周りには、良樹たちよりも早く着いていた暴走連合の面子が勢ぞろいしている。
「ヨシキ」
アキラとヒデが俺のところに来て、工場を見る。
「ユリさん、なんで?」
「……俺が、俺のミスだ」
俺の隣で力なく言う駿壱。
ふたりが駿壱を見ると、何も言えなくなっていた。
「俺が、マミに油断したんだ」
真美は駿壱が初めに惚れた女だ。どうにもならないくらいに惚れていた女だ。
だから真美の裏切りを許せなかった。
なのに、そんな真美の行動に油断したと言う。
「許せなかった。でも……」
唇を噛んだ駿壱が、今でも真美のことを信じてるんだって感じた。
「行くぞ」
良樹がそう言うと、工場の中へ入って行った。
◆◆◆◆◆
ガシャンッと音をたてて扉を開くと、大勢の男達がその扉から工場の中へと入って行く。そしてそこには、マサシと一緒にいる真美の姿があった。
「やっぱり来た」
甘い声で話す真美。
真っ直ぐに良樹のところへ歩いて来る。そして良樹に抱きつく。
その真美に不快な思いを顔を出す。
「ヨシキ。あたしを迎えにきてくれたんだ」
その言葉に、良樹は虫酸が走る。
──なんでこの女と付き合っていたりしたんだろう。
──こんな自分のことしか考えていないような女と。
そう思うと自分に腹が立った。
「離れろ」
良樹はそう言うと、自分に抱きつく真美を引き剥がした。
「マミ。ユリはどこだ」
隣にいた駿壱が真美をじっと見てる。その駿壱に視線を移すと、ふっと笑った。
「あんたのユリは、他の男の手に落ちたよ」
そう言ってマサシのところに戻っていく。
「あんたの妹がいけねぇんだ。このマミの男を取るからなぁ」
マサシがそう言うと立ち上がる。そして真美を抱きしめキスをする。
マサシを受け入れていた、真美の行動が読めない。
ガサッと隣で動く音がした。
振り返ると駿壱が、真美に向かって歩いているのが見えた。
「マミ……ッ!」
真美の髪を掴んでマサシから引き剥がすと、顔を近づけ威嚇する。
「リナは関係ねぇだろ……ッ!俺のユリを返せッ」
大声が響く。そしてゆっくりと良樹は動いた。
マサシに向かって歩く。
「マサシ……。俺の姉貴を返してもらう」
ボキボキと手の指を鳴らして近付いてく。マサシも戦闘態勢に入る。
そして俺とマサシの殴り合いを合図に、喧嘩が始まった。
後ろでBTの面子と暴走連合の面子が殴り合いをしている。
鈍い音が響く。
そんな中、俺とマサシは睨み合い殴ったり蹴ったりを繰り返していた。そして駿壱は、真美の髪を掴んだまま動かない。じっと真美を睨み付けていた。真美も駿壱を睨み付けていた。
「シュンくん」
真美が駿壱の名前を呼んだ。
「昔の女に手、出すんだ。サイテーだね」
それでも駿壱は何も言わない。髪を掴んだまま何もしない。
それが駿壱の優しさ故の行動だ。
本気で惚れていた女なだけに、何も出来ない。
それが痛い程、伝わってくる。
「シュン!」
一樹の声が響く。
その声にはっとした駿壱は、真美の髪を離した。
「ユリを……返せ」
漸く出た言葉は低く冷たい。
「今はお前よりもユリが大事だ。そして妹が何よりも大事だ」
ゆっくりと低い声が、喧嘩の音に紛れて聞こえてくる。
「知ってるよな。俺が本気出したら女でも許さねぇ……」
真美に一歩近付いた。その駿壱の迫力に負けて、真美は後ずさりする。
前、理菜が襲われた時。
駿壱は後輩達を呼んだ。
そして良樹が、後輩達に真美を好きにしていいと命令した。
あの後、真美は女に飢えた後輩たちにヤられた。その話を駿壱は後輩達から黙って聞いていた。
「あの時よりも酷いこと、されてぇか」
駿壱の声が、真美に向けられる。
息を飲む真美を、駿壱は冷たい表情で見ていた。
「おい」
マサシが良樹に向かって拳を振り上げる。それをかわした良樹は、ニヤッとマサシに視線を向ける。
「いい加減に姉貴を返してくんねぇかな」
ドカッと蹴りを入れマサシが、冷たいコンクリートの上に転がった。そのマサシを見下ろし、腹を蹴る。
「うっ」と呻き声を上げるマサシを見たBTの面子。
BTの面子は、オドオドと逃げていくのを確認した。
「マミ。今後一切、俺らに関わるな」
ギロッと真美を見ると怖々と頷いた。
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