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第4章 冬
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文化祭が終了した後から、急に外の空気が冷たくなっていった。もう冬に近付いているってことが、分かる。
朝、家を出る時、寒くて肩を震わせた。
冬はなんとなく寂しい。
目に見える色が、とても寂しい色に変わっているように感じるんだ。
それはいつもその頃に、慣れ親しんだ場所を離れるって、本格的に決まるのがその頃だったから。
だから、寂しいと感じてしまうんだ。
冬は私にとって、さよならの季節。
とても寂しい季節。
だけど、今年はそうはならないよね。寂しいという気持ちを、持たなくてもいいんだよね。
私がそんなことを思ってるなんて、きっと誰も知らない。
こんな思いを抱いているなんて、知らないし気付かない。
そして理解もされないんだろう。
だって普通は、そんなことを思ったりはしないんだろうから。
冬はクリスマスもあれば、お正月もある。
2月にはバレンタインもあるし。
そういう浮き足立つ話があるのに。
私はそういうもの全てが、寂しく感じる。
一応クリスマスには、友達同士で集まってクリスマスパーティーをしたことがあった。元旦には友達同士で、初詣に行ったこともあった。
バレンタインには友達同士で、チョコを交換したこともあった。
なのに、寂しい。
ずっと、抱いていた気持ち。
それが抜けない。
部屋の窓を開けると、空は冬の色をしていて、それが更に私の心を寂しくさせた。
「ふぅ……」
スマホの着信がなっても、私はそれに出ることが出来なかった。
こんな風に気持ちが落ちるのは、久しぶりだった。
もうこんな風に、気持ちが落ちることはないって思っていた。
なのに、この1年。
いろんなことがあり過ぎた。
だから、いろいろと考えてしまうんだ。
♪~♪~♪~♪~♪~!
何度目かの着信で、私は漸くスマホを手にした。待ち受け画面を見ると、柊冶先輩の文字。
その名前を見ると、少しは心が晴れていた。
「はい」
そう声を出した私。私の心は、まだ晴れてはいなかったらしく、電話の向こうで柊冶先輩は、「どうした」と言った。
『瑠璃?』
「あ……なんでもない」
そう答えたけど、先輩は納得してないみたいだ。
最近、先輩と週末に会うことが少なかった。先輩がバイトを増やしていたから。
なんで増やしたのって聞くと、微かに笑うだけだった。その笑いがなんなのか、私には分からなかった。
だけど、それ以上は追求はしない。
──キラワレタクナイカラ。
でも、私は寂しさがいっぱいになって、自分がもう限界だったのかもしれない。いつもはこんなことにはならなかったのに、明日また先輩に会えるのに。
寂しさが心をいっぱいにしていた。
「……会いたい」
呟くようにそう言った私に、先輩が「今から迎えに行く」と言った。
スマホを切って、先輩のバイクの音が聞こえるまで、そのまま部屋の中でゴロゴロとしていた。
私はどうしたんだろう。
今日はどうしてこうなんだろう。
誰も気付かない。
親でさえ、私のこんな気持ちを理解はしてくれないだろう。
お兄ちゃんも知らない。
だって、私自身だって分からないことなんだから。
どうしてこんな寂しいのか、自分でも分からないんだから。
なんでこんな気持ちになるのか、原因はやっぱり、ほぼ毎年のように「転校する」と聞かされてきたからだと思う。
この季節は、仲良くなった友達と過ごせる最後の季節だったから。
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
遠くでバイクの音が、近付いてくるのが分かった。その音を聞いて、私はバッグを持って部屋を飛び出した。母が何事かと思って、リビングから顔を出すけどお構いなし。
そのまま玄関を飛び出した。
玄関の前には、バイクに跨った先輩がいる。
制服姿とは違う、先輩。
そんな先輩の姿に、涙が出そうなくらいだった。
「瑠璃」
ヘルメットを外して、こっちを見る。
その笑顔にほっとした。
「おいで」
私は先輩の傍に近寄ると、先輩に触れた。先輩はそんな私にヘルメットを被せて、後ろに乗るように促す。
先輩の背中をしっかりと抱いて、それを確認すると、先輩はバイクを走らせた。
風が冷たい。
だけど、寒くはない。
先輩が傍にいるから。
先輩に会えたから。
寒くはない。
バイクを走らせて、先輩は自分のアパートへ向かった。
初めて先輩の家に行った後、何度か遊びに行っていた。何をするわけでもないけど、先輩のアパートでダラダラと過ごしていた。
今日もそうだと思った。
だけど、今日は違ったんだ。
先輩の表情が、少し違ったんだ。
その笑顔がいつもと違うから不安で、何も話すことが出来ない。
怖くて聞けない。
先輩のアパートに入ると、今までいなかった所為か、寒くて仕方なかった。
奥の部屋に行くと、いつものようにソファーに座った。
先輩は部屋に暖房入れて、あったかい紅茶を入れてくれた。
「寒かったろ」
そう言って紅茶を渡して来た。
その紅茶を受け取って、口に運ぶ。紅茶の暖かさが心にまで沁みる。
寂しい思いは消えないけど、先輩が傍にいてくれてるから、まだ大丈夫だって思える。
「ずっと会えなくてごめんな?」
隣に座り、そう言ってくる。
そのセリフに首を横に振る。
「バイト、忙しいの?」
そう聞いてみた。
今までそんなこと、聞いてこなかった私。
だから、驚いた顔をしていた。
「もう少し……かな」
答えた先輩はマグカップをテーブルに置いて、私を見る。
私もカップをテーブルに置いた。
「瑠璃」
顔を上げると、先輩は優しい目を向けてくれていた。
「なんかあった?」
「……なんでもない」
「なんでもないわけ、ねーだろ。お前が会いたいって言ってくるの、珍しい」
私は先輩に嫌われないようにって思って、ワガママを口にしたことがない。
会いたいなんてことも、言ったことがない。
でも、そう言ったことが先輩には嬉しかったみたいで。
そっと私を抱きしめた。
そっと抱きしめて、指で髪を弄っては遊んでいた。そんな先輩の癖が、胸をきゅんとさせていた。
寂しさはなくならない。
どうしてこんなにも寂しいのか分からないままだった。
朝、家を出る時、寒くて肩を震わせた。
冬はなんとなく寂しい。
目に見える色が、とても寂しい色に変わっているように感じるんだ。
それはいつもその頃に、慣れ親しんだ場所を離れるって、本格的に決まるのがその頃だったから。
だから、寂しいと感じてしまうんだ。
冬は私にとって、さよならの季節。
とても寂しい季節。
だけど、今年はそうはならないよね。寂しいという気持ちを、持たなくてもいいんだよね。
私がそんなことを思ってるなんて、きっと誰も知らない。
こんな思いを抱いているなんて、知らないし気付かない。
そして理解もされないんだろう。
だって普通は、そんなことを思ったりはしないんだろうから。
冬はクリスマスもあれば、お正月もある。
2月にはバレンタインもあるし。
そういう浮き足立つ話があるのに。
私はそういうもの全てが、寂しく感じる。
一応クリスマスには、友達同士で集まってクリスマスパーティーをしたことがあった。元旦には友達同士で、初詣に行ったこともあった。
バレンタインには友達同士で、チョコを交換したこともあった。
なのに、寂しい。
ずっと、抱いていた気持ち。
それが抜けない。
部屋の窓を開けると、空は冬の色をしていて、それが更に私の心を寂しくさせた。
「ふぅ……」
スマホの着信がなっても、私はそれに出ることが出来なかった。
こんな風に気持ちが落ちるのは、久しぶりだった。
もうこんな風に、気持ちが落ちることはないって思っていた。
なのに、この1年。
いろんなことがあり過ぎた。
だから、いろいろと考えてしまうんだ。
♪~♪~♪~♪~♪~!
何度目かの着信で、私は漸くスマホを手にした。待ち受け画面を見ると、柊冶先輩の文字。
その名前を見ると、少しは心が晴れていた。
「はい」
そう声を出した私。私の心は、まだ晴れてはいなかったらしく、電話の向こうで柊冶先輩は、「どうした」と言った。
『瑠璃?』
「あ……なんでもない」
そう答えたけど、先輩は納得してないみたいだ。
最近、先輩と週末に会うことが少なかった。先輩がバイトを増やしていたから。
なんで増やしたのって聞くと、微かに笑うだけだった。その笑いがなんなのか、私には分からなかった。
だけど、それ以上は追求はしない。
──キラワレタクナイカラ。
でも、私は寂しさがいっぱいになって、自分がもう限界だったのかもしれない。いつもはこんなことにはならなかったのに、明日また先輩に会えるのに。
寂しさが心をいっぱいにしていた。
「……会いたい」
呟くようにそう言った私に、先輩が「今から迎えに行く」と言った。
スマホを切って、先輩のバイクの音が聞こえるまで、そのまま部屋の中でゴロゴロとしていた。
私はどうしたんだろう。
今日はどうしてこうなんだろう。
誰も気付かない。
親でさえ、私のこんな気持ちを理解はしてくれないだろう。
お兄ちゃんも知らない。
だって、私自身だって分からないことなんだから。
どうしてこんな寂しいのか、自分でも分からないんだから。
なんでこんな気持ちになるのか、原因はやっぱり、ほぼ毎年のように「転校する」と聞かされてきたからだと思う。
この季節は、仲良くなった友達と過ごせる最後の季節だったから。
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
遠くでバイクの音が、近付いてくるのが分かった。その音を聞いて、私はバッグを持って部屋を飛び出した。母が何事かと思って、リビングから顔を出すけどお構いなし。
そのまま玄関を飛び出した。
玄関の前には、バイクに跨った先輩がいる。
制服姿とは違う、先輩。
そんな先輩の姿に、涙が出そうなくらいだった。
「瑠璃」
ヘルメットを外して、こっちを見る。
その笑顔にほっとした。
「おいで」
私は先輩の傍に近寄ると、先輩に触れた。先輩はそんな私にヘルメットを被せて、後ろに乗るように促す。
先輩の背中をしっかりと抱いて、それを確認すると、先輩はバイクを走らせた。
風が冷たい。
だけど、寒くはない。
先輩が傍にいるから。
先輩に会えたから。
寒くはない。
バイクを走らせて、先輩は自分のアパートへ向かった。
初めて先輩の家に行った後、何度か遊びに行っていた。何をするわけでもないけど、先輩のアパートでダラダラと過ごしていた。
今日もそうだと思った。
だけど、今日は違ったんだ。
先輩の表情が、少し違ったんだ。
その笑顔がいつもと違うから不安で、何も話すことが出来ない。
怖くて聞けない。
先輩のアパートに入ると、今までいなかった所為か、寒くて仕方なかった。
奥の部屋に行くと、いつものようにソファーに座った。
先輩は部屋に暖房入れて、あったかい紅茶を入れてくれた。
「寒かったろ」
そう言って紅茶を渡して来た。
その紅茶を受け取って、口に運ぶ。紅茶の暖かさが心にまで沁みる。
寂しい思いは消えないけど、先輩が傍にいてくれてるから、まだ大丈夫だって思える。
「ずっと会えなくてごめんな?」
隣に座り、そう言ってくる。
そのセリフに首を横に振る。
「バイト、忙しいの?」
そう聞いてみた。
今までそんなこと、聞いてこなかった私。
だから、驚いた顔をしていた。
「もう少し……かな」
答えた先輩はマグカップをテーブルに置いて、私を見る。
私もカップをテーブルに置いた。
「瑠璃」
顔を上げると、先輩は優しい目を向けてくれていた。
「なんかあった?」
「……なんでもない」
「なんでもないわけ、ねーだろ。お前が会いたいって言ってくるの、珍しい」
私は先輩に嫌われないようにって思って、ワガママを口にしたことがない。
会いたいなんてことも、言ったことがない。
でも、そう言ったことが先輩には嬉しかったみたいで。
そっと私を抱きしめた。
そっと抱きしめて、指で髪を弄っては遊んでいた。そんな先輩の癖が、胸をきゅんとさせていた。
寂しさはなくならない。
どうしてこんなにも寂しいのか分からないままだった。
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