Eternal Chains - 圧政の影

ペコかな

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第2章: 希望の種

3. 密偵の影

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反乱軍の誓いが結ばれた翌日、

リーシャとその仲間たちはさらなる計画を練るために、グレタの家に集まっていた。

古代の知識を学びつつ、セリオンに対抗するための戦術を考える彼らの意志は強かった。
しかし、その背後に、不穏な影が忍び寄っていることに気づく者はいなかった。


グレタの家の一角で、リーシャは地図を広げ、村の防御の脆弱な部分を仲間たちと確認していた。


「ここが一番危険な場所だ。
もし王国軍が攻めてきたら、私たちはこの道を守り抜かないといけない。」
リーシャは指で地図の一部を指し示しながら言った。


「でも、この湿地帯は自然の要塞だろう?」
アンリが言った。
「敵が容易に攻め込むのは難しいはずだ。」


「その通りだけど、油断は禁物よ。」
リーシャは慎重な表情で答えた。
「セリオンは私たちの予想を超えた動きをしてくる可能性があるわ。
彼の力を侮ってはいけない。」


グレタは静かに頷いた。
「リーシャの言う通りだ。
セリオンは狡猾な男だ。
私たちが計画を立てている間にも、彼は何かを企んでいるかもしれない。」


その時、部屋の外で不意に物音がした。
全員が緊張し、身構えた。

リーシャは素早く扉に向かい、剣の柄に手をかけた。

「誰だ?」
リーシャが鋭い声で問いかけた。


すると、扉の向こうから現れたのは、村の若い少年だった。
彼は息を切らし、明らかに何か重大なことを伝えようとしていた。


「リーシャさん! 大変です、村の中に見知らぬ男たちがいます。
彼らが何をしているのかはわからないけれど、何か探しているみたいなんです!」


リーシャは目を細めた。
「それはいつからだ?」


「今朝早くからです。
彼らは市場や家々を回り、村人たちに質問をしているようです。
でも、何かがおかしいんです。
普通の旅人や商人には見えません…」


少年の言葉に、グレタが重く口を開いた。
「セリオンの手先だろう。
彼らは私たちの動きを探っているに違いない。」


「密偵か…」
アンリが怒りを抑えきれない様子で言った。

「奴らが何を企んでいるか分からないが、放っておくわけにはいかない。」


リーシャは一瞬考え込んだ後、冷静な口調で指示を出した。

「アンリ、君とグレタさんはこの家を守っていて。
私は少年と共に村へ戻る。
彼らが何を企んでいるのか確かめる必要がある。」


「リーシャ、一人で行くのは危険だ。俺も一緒に行く。」
アンリが即座に反対した。


「ありがとう、アンリ。

でも、もし私たち全員が罠にはまったら、それこそセリオンの思う壺よ。」
リーシャは断固として言った。

「私が彼らの注意を引いている間に、君たちは反乱軍を守って。」


アンリはしばらく考えたが、リーシャの決意の強さを感じ、渋々頷いた。
「わかった。無理はするなよ。」


リーシャは微笑んで応えた。
「もちろん。無事に戻るから、心配しないで。」


そう言って、リーシャは少年と共に村へ向かった。
道すがら、彼女の心にはさまざまな思いが交錯していた。
密偵が送り込まれたということは、セリオンが彼らの動きを察知し始めた証拠だ。

これ以上、敵に情報を漏らすわけにはいかない。
彼らの計画はまだ始まったばかりなのだから。


村に着くと、リーシャは慎重に密偵たちを探した。
少年が示した場所に向かうと、確かに二人の男が市場の一角で何かを探しているのが見えた。

彼らは村人に何かを尋ねているが、その態度にはどこか脅迫めいたものがあった。


リーシャは距離を保ちながら、彼らの会話を盗み聞きすることにした。


「ここには何もないな。
あの老女が言っていたことは本当なのか?」


「さあな。でも、セリオン様が俺たちを無駄足を踏ませるとは思えない。
奴らが何かを企んでいるなら、必ず尻尾を掴んでやる。」


リーシャは彼らの言葉を聞き、冷たい汗が背筋を流れるのを感じた。
セリオンが彼女たちの動きを完全に把握しているわけではないが、確実に何かを疑っている。
そして、彼らは情報を得るために村人たちを脅している。


リーシャは静かに息を整えた。
ここで動けば、密偵たちに気づかれるかもしれない。
しかし、何もしなければ、彼らが村を破滅させる可能性もある。
リーシャは決断を下し、静かに市場の影から現れた。


「何をしている?」


彼女の鋭い声が市場に響いた。
密偵たちは驚き、すぐに振り返った。


「お前は誰だ?」
一人の男が不機嫌そうに問い返した。


「私はこの村の者だ。」
リーシャは堂々と答えた。
「何を探しているのか教えてもらおうか。」


男たちは一瞬戸惑ったが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「我々はただ旅をしているだけだ。少し村のことを知りたくてな。」


「旅人がこんな朝早くから村中を嗅ぎ回るものか?」
リーシャは鋭く切り返した。

「お前たちのような者が、私たちの村で何を企んでいるのか、すぐに白状するんだ。」


その言葉に、男たちは明らかに苛立ちを見せた。

「ふん、口の利き方には気をつけた方がいいぞ。
我々に逆らえばどうなるか、思い知ることになるからな。」


リーシャは冷静さを保ちながらも、内心では緊張していた。
だが、彼女は決して引くことはなかった。

「私たちは、この村を守るために戦っている。
お前たちのような者に屈するつもりはない。」


密偵たちは互いに視線を交わし、次の行動を考えているようだった。
しかし、その時、背後から別の村人たちが集まり始めた。

彼らもまた、リーシャの意志に共鳴し、密偵たちを包囲するように立ち上がった。


「ここで何をしているんだ?」
アンリが大声で問いかけながら、村人たちを率いて現れた。

「この村に余計なことをするつもりなら、黙ってはいないぞ。」


密偵たちはその様子に明らかに動揺していた。
彼らは二人しかおらず、周囲には反乱を決意した村人たちが次々と集まっていた。


「よし、引き上げるぞ。」
一人の密偵が低い声で言い、仲間に合図を送った。
「ここでは無理だ。」


密偵たちは、急いで村から立ち去ろうとしたが、その目には何かを企んでいる陰湿な輝きがあった。
彼らはただ去るだけでなく、セリオンに報告するつもりであることは明らかだった。


リーシャは密偵たちの背中を見送りながら、心の中で決意を固めた。
彼らが再び戻ってくる前に、反乱軍の計画をさらに進め、村を守るための準備を整えなければならない。


「アンリ、みんな、ありがとう。
これで時間を稼げたけれど、油断はできないわ。
セリオンは確実に私たちを狙っている。」


「俺たちは何としてでも、この村を守るぞ。」
アンリが力強く言った。

「セリオンの手先なんかに、好きにさせやしない。」


リーシャは頷き、仲間たちの決意を感じ取った。
彼らの戦いは、これからさらに厳しいものになるだろう。
しかし、彼らは決して諦めない。

彼らの心に宿る希望の光は、どんな暗闇にも負けることはない。

そして、リーシャは誓った。
セリオンとの戦いに勝利し、この村と王国を取り戻すために、彼女は最後まで戦い抜くと。

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