異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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死闘続発★ホモら共存編

再会、のち、お仕置き

   
    
「…………これ……………登るの……?」

場所は第2の壁のすぐ下。
…俺は絶句した。

「あ、コージさんは赤色の布です。上から引っ張るので、しっかり掴まっているだけで充分ですよ」

壁から垂らされた2本の布。1本は青で、もう1本は赤。
コナーさんが言うには、この布で身体を固定して、上に上がるらしいんだけど…。
壁は50メートル。支える布は1本だけ。
……いや、怖いっしょ…?

「って、あれ…? 2本だけ? ギルドの人とミゲルさんのは…」

狐さんが青の布を身体に巻き付けているので、青年とミゲルさんの分の布がない。

「俺達は正式な手続きをして城下町にいますから、入った時と同様、正式な手続きをして出ます。記録上は壁の中にいるのに、実際には壁の外にいるとなれば、色々と疑われますからね」

なるほどー。そりゃ確かに疑われるな。……俺も正式に出て行きたいけど…。

「コージさんはダメですよ。貴方は今、逃げ出す立場なんですからね」

で、ですよね…。




********************



「コージ……。何故だコージ…。何で、逃げたんだ…。愛し合ったのに…。俺を…受け入れて、くれたじゃないか…」

コージを逃がしてしまった後、俺…スティーブは、兵舎に戻ってきた。
予想通り、というかなんというか…、団長の落ち込み具合は物凄い。頭を抱えるようにしてうずくまり、危なげな表情で何かブツブツと呟いている。
執着や妄執、といった単語が浮かんできたが、団長とコージが出会ってまだ1日程度。惚れやすい団長でも、流石にあり得ない……と、信じたい。
団長の周りには、コージを追っている者以外の第1部隊が集まり、必死に励まそうとしているが、アイツらも表情には悲しみが浮かんでいる。
コージは俺の気付かない間に、聖騎士達の心に深く居座ってしまっていたようだ。

「団長。……悪いが、コージには逃げられた」

「!!! あ、あぁぁぁあぁあぁぁぁあああぁ!!」

俺が報告すると、絶望の底に叩き落とされたように、団長が泣き叫んだ。
なんて頼りない姿だよおい…。それで良いのか、聖騎士団長。いつも凛としてるだけ、今の様子はちょっとウケ…ごほん、衝撃的だ。
ただな、失恋と決め付けるにはまだ早いぜ団長。

「で、コージから伝言を預かっている」

「……でん、ごん」

真っ赤になった目で、すがるように俺を見る団長。
俺は安心させるように、優しく微笑んだ。

「『ごめん、ガレに脅されてるから、1回お別れだ。俺は自分の仕事に戻る。もし用があるんなら、俺の職場に来てくれ』、だとよ」

「…………………しょくば…。……………………職場…? ……………オーディアン…ギルド……!!!!」

団長、完全復活!!
さっきまでの姿が嘘のように、覇気を取り戻した。もう1度、コージに会える可能性が出てきたと言うのと、コージが自分の意思で去った訳ではない、という事が分かったのが、大きかったようだ。

「移動届けを出してくる」

「……えっ、いや、団長…」

「なんだ」

「いや…団長なのに…、王都にいなきゃ」

「聖騎士を辞める」

「えっ、いやっ、えええぇぇぇ…!?」

…………マズイ。辞めないよう、コージに説得してもらおう。

「でもな…、上層部になんて説明するよ…」

第1部隊の者達が、団長の復活と共に喋り出す。

「司教を名乗る馬鹿がコージを襲ったせいで、『死神の吐息』に付け入る隙を与えてしまい、コージが拐われたので追い掛ける…、で良いだろう」

「あ、そういうば、その司教はどうなったんだ?」

「デネブ司教が団長の部屋で転がってたよ」

「ああ、あのデブ」

「おいおい…、シャムロック家の親戚なんだろ? あんまそんな事言うもんじゃねーぞ」

「責任問題になるんじゃね?」

「しらばっくれるだろ」

「……『コージ・アヤマ1人なら、侵入者から逃げられたが、司教がいたせいで庇わざるを得ず、結果として連れ去られた』という事にしてみたらどうっすか?」

「お前やるな! 新人の癖に!」

「ああ、新人の癖に」

「ちょっ、発想に新人関係ないじゃないっすか!」

「そこの新人の案でいこう。……新人の癖に」

「団長までっ!?」

誰も彼もが、コージに会えるという事で元気を取り戻して、冗談まで言い合っている。

……なぁコージ。お前は信じないかも知れねーけどさ、俺ら聖騎士にとって、コージはもう大切な存在なんだよ。
だからさ、まぁ、あれだ。俺らは暗黒属性にゃ厳しいが、あんま嫌うなよ。
俺だって、お前の事、大切なんだ。





********************



「死ぬかと思った! 死ぬかと思ったぁぁ!!」

「すみません。壁上に登ったら、布を引き上げてる奴、懲らしめておきますね」

「アッ…、俺は大丈夫なんで、あんまり恐い事は…」

「大丈夫です。3ヶ月くらい歩けないだけです」

「だけ!? それで、歩けない『だけ』なの!?」

さっき、俺の身体を固定している赤い布が、一瞬落ちかけた。俺、背は低めだけど、決して軽い訳じゃないんだから、上で引っ張ってくれている人も疲れて気が抜けたんだろう。
申し訳ない。もし罰せられる事になったら、頑張って庇おう。

狐さんは腕に布をぐるぐる巻いて、自力で壁を登っている。90度直角の、壁を…。

「ふぅ…、残り、3分の1くらいですね…」

あ、もうそんな所まで登ってきたの? はやーい。でも下は見ないぜ。泣きたくないからな。

「………あ、コージさん! お頭が見えましたよ!」

狐さんの言葉に上を向くと、十数メートル先の壁上に、俺をじっと見るガレがいた。
目が合うと、そわそわし始めて…。落ち着け落ち着け。もうちょっとだから。

「狐さん、俺がいなくなって、ガレどんな様子でした?」

ふと、気になった。あんだけ俺を逃がしたがらなかったガレが、俺を手離した。何か理由があったんだろうけど、その後のガレが気になる…。

「……冷静になろうと努めていましたよ」

「…褒めてやろう」

「お願いします。それだけで、お頭は心底喜びますので…」

ガレはガレで、頑張ったようだ。頭なでなでしてやろう。
……そう言えば、背の高い人は頭を撫でられ慣れてないから、背の高い人を堕としたければ頭を撫でると効果的って何かの雑誌に書いてあったな…。……やってみるか。

そう思っていると、無事に壁上に到達。身体を固定した布を外そうとするが、ガレに抱き付かれて阻止された。

「ぅお…。えーと、1日と…半日ぶり?」

「…危険な事に巻き込んで、悪かった」

…ぎゅってされて、そんな悲しそうな、愛しそうな、声で謝られたら、許さないなんて言えないわな…。まったく、ズルい奴だ。

「……おんぶ!」

「…ん?」

「俺、走らされて超疲れた! だから、おんぶ! してくれたら、許してやる」

「…ふははっ、そうだな。俺の嫁はワガママだから、ご機嫌取りなら仕方ないな。お姫様抱っこでも良いんだぞ?」

「嫁じゃねーし。ワガママじゃねーし。お姫様抱っこヤだし」

うん。俺、シリアス嫌いだ。だから、ガレとの間柄で許すとか許さないは正直どうでも良い。怪我人だって、青年に手刀を落とされて気絶したおっさんしかいないから、俺が怒る要素は無い。……強いて言うなら、『性奴隷』呼ばわりされた事くらいだ。
まぁ、それは後々ネチネチ言うとして…。

「ミゲルさん、青年と、合流しないと…」

「………ミゲル? 何がどうしてそうなった?」

「脱出を手伝ってくれたんだよ。詳しくは本人から聞いてくれ」

俺が言っちゃ、ダメだよな。戻りたい意思は自分で伝えてこそ、だ。

「コージ、クソ共に手ェ出されなかったか?」

心配するように、俺の身体を触りまくるガレ。
……カイルの事は黙っていよう。と、思っていたんだけど…。

「………………これは、なんだ」

ガレが俺の首筋に付いた赤い点を見付けてしまった。
不機嫌MAXで、カイルに付けられた痕をじぃっと見詰めるガレ。
俺は勿論、慌てて否定する。

「むっ、虫刺され! 別に、キスマークって訳じゃないぞ!」

「コナー。クソ共の団長と、どんな様子だった?」

「…えーっと………」

狐さんがガレに聞かれて、視線をあっちこっちへ。
頼むぜ狐さん。俺の貞操は、狐さんに掛かっているんだ!

「……仲、良さげでした…」

「…………ほぉーーーーー…」

うわぁぁん! 狐さんの裏切り者!!

「まっ、待てガレ!! カイルは別に違うんだ!! あいつは暗黒属性自体を敵視してる訳じゃなくてだな!! ツンデレなのを除けば普通に良い奴なんだ!! ガレ! 待って! 流石にこんなとこじゃ! いっいやっ! うわぁぁぁぁぁやめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!」





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