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権力系ホモ★グリス王国編
あぁぁぁ行きたくねぇぇぇぇ
『ポール、古龍殿らの様子はどうだ?』
「(はい。移動中は人の姿に羽根のみを出し、馬車の周囲を飛んでおりました。現在はエジーナの街で他の方達と人間の食事を摂っておられます。この思念伝達も、気付かれているかと)」
『そうか。見逃してくれているのなら続けるぞ。それで…、阿山康治郎は?』
「(はい、大変に可愛らしいお方ですな。確かに古龍殿らを使役しておられますが、その力に目を瞑れば容姿も精神も愛らしい少年でございます)」
『………お前ならば《普通の愛らしい少年》と言うと思っていたが』
「(…普通ではありませぬな。……愛らし過ぎる、少年です)」
『……? どういう事だ?』
「(言葉の意味通りでございます。聖騎士や死神の吐息が惚れ込む訳です。毎日が命懸けの駆け引きな彼らにとって、阿山様は唯一心を休ませられる場所になり得ましょう。容姿も相まって、多くの者に性を向けられるのも仕方がないかと)」
『………ポール、この思念は息子達や近衛騎士ら、大臣達も聞いているんだぞ』
「(承知しておりますとも。これはわたくしからの忠告です。彼に危害を加えてはなりませぬ。オーディアンギルドの前に馬車を停止させた際に、思わず弓を構える程の殺気が、全身に刺さりました)」
『お前が弓を構えただと…?』
「(えぇ。冷や汗が止まりませんでした。阿山様は気付かれておられませんでしたが、その場にいた者全員に敵意を向けられていたのです。ガレ・プリストファーと聖騎士団長のマンハット様に同時に睨まれた時は、久々に死を覚悟しましたなぁ)」
『……………』
「(阿山様に危害を加えてはなりませぬ。破滅するのは我らだけではありません。ガレ・プリストファー1人でさえも、人類の存続を脅かす程の力を持った脅威であるというのに、聖騎士団長、更に聖騎士団の第1部隊や第3部隊など、この世界の生態系を見事に破壊してしまう者達が阿山様を取り囲んでおられます。彼らが怒れば、管理者が出て来ても可笑しくはありません。その管理者も、阿山様を気に入らぬという保証はありません)」
『管理者までが出てくると、お前はそう言うのか?』
「(阿山様を傷付ければ、可能性はあります。バージル国王、貴方も阿山様を見れば分かります。彼の笑顔を壊してはならないときっと理解します。どうか老いぼれの戯言と流さず、胸に留めておいて頂きたい)」
『…………………ポール、お前は今までずっと、賢く利口に、王家に尽くしてくれた…。……だが………、そう簡単に、その話を信じられる訳ではない。…阿山康治郎が魅了系のスキルを持っている可能性も充分にあり、お前が魅了されている可能性もまた、充分にある…。だが…、お前の忠告、覚えておこう…』
「(………感謝致します)」
********************
「あり得ませぬな」
思念伝達を切った後、内容を聞いていた肥えた大臣が鼻で笑った。
宰相は難しげな顔で考え込んでいる。
「国王のおっしゃる通り、魅了系のスキルか何かでしょう。阿山康治郎が死ねば、魅了も解ける」
「…! 殺すと言うのか」
息子であり、第1王子のレオナルドが大臣を睨み付けた。
レオナルドは確か、城下町で見掛けたと言う阿山康治郎を正妻に迎えたいと言っていたが…、もしやレオナルドも魅了されたのか? …諦めただろうか。
「良いではありませぬか! 魅了が解ければオーディアンギルドにも、教会にも、聖騎士団にも、序列入りの古龍にも恩を売れますぞ!」
「それは良い案だ。城に到着次第、拘束して処刑に」
「待て。それでは魅了されたままの古龍達に阻止されるだろう。すぐに殺すのが良い! あるいは毒か何かで…」
「オーディアンギルドからヒュドラの爪を買っていたじゃろう。毒を抽出して飲み物にでも混ぜれば…」
「わはは、自分の所属するギルドが売った毒で殺すとは!」
盛り上がる大臣や丞相達。こやつらは利益の可能性を前にすると、短絡的過ぎていかん。
…だが、もしも阿山康治郎が本当に魅了しているのであれば、大臣達の出す案は概ね正しい。
国の者を魅了されるのであれば、充分に『害がある』と言えるからだ。
………が、これで良いのかと脳が訴え掛けている。
あのポールだ。人身掌握に長けた弓の名手を、わざわざ御者に選んだのだ。
そのポールが、簡単に魅了される訳がない。ましてや純粋ぶった演技など、一瞬で見抜く筈だ。
それに…、阿山康治郎は『鑑定』と『アイテムボックス』を所持している可能性が高い。
偵察に送り出したジルからは、自然属性最上級魔法の『重力操作』を使ったと報告も入っている。
正直、殺すには余りにも惜しい人材である事は事実だ。
…………やはり、心と脳が危険だと発している。
経験から来る危険信号は侮れない。とりあえず、毒殺は止めさせなければ。気付かれたら滅亡あるのみ。
………それと大臣の胸ぐらを掴んで殴りかかろうとしているレオナルドも。
********************
夜。最高級の宿の一室…。
俺は項垂れていた。みんなも項垂れていた。
その理由はたった1つ…。
……なんかお城では、俺がみんなを魅了系スキルで惚れさせた悪女みたいになってるらしいから。
もうっ…なんなんだよぉッ!! 俺魅了なんてしてねーよッ!! するなら女の子にしてるよッッ!!! 誰が好きでこんな厳ついマッチョ共を魅了するんだよッッッ!!!!
ひどいーひどいーー! 王様も大臣とやらもみんなひどいー!!
………いやでもさぁ、正直、分からない事もないんだよね…。
俺の周りにいる奴らほとんど全員が、病的なまでに俺に惚れてんだもん。そりゃ疑うよ。
世界的にも有名な盗賊頭と聖騎士団長が俺の為に同じテーブルについて飯を食ってるんだもん。そりゃ疑うよ。
世界で91番目と92番目と93番目に強い古龍が、ドラゴンが、従魔になった挙げ句1体は性的な意味で俺に惚れてんだもん。そりゃ疑うよ!
あれ? 俺完璧に悪女じゃね?? 大臣たち大正解じゃね???
え? なんでエジーナの街にいる俺らが、城の情報を知ってるのかって?
…いや実はな? さっき、夕食を食べ終わった頃に、ジルがいきなり思念を繋げて来たんだよ。
ジルのスキル、『思念直通』って、1度でも使った相手なら、5分程度だけど思念を飛ばせるんだって。俺知らなかった。何そのプチチートって感じだよな。
で、そのジルが…『コージ、久しぶり。お兄ちゃんだ。時間が無いから単刀直入に言う。城の奴は全員敵と思え』って言ってきた後に、魔道具で録音したって言う大臣さん達の会話を聞かされて…。
あれ? 今気付いたけど、『思念直通』や『思念伝達』で送れるのって思念だけじゃなかったっけ? ジルどうやったんだろ?
……まぁそれは置いておいて…、毒殺は王様が阻止してくれたっぽいけど、俺殺害案はまだまだ出ていた。
えーっと、王子様? が大臣に怒鳴り散らした所で終わったから、結論がどうなったのかは分からない。
王子様が良い人っぽそうって事しか分からなかった。
………俺はみんなにこの事を話した。だって殺され掛けてるんだもん。
みんな大激怒して、セキなんか『ちょっと殺してくるわ★』って感じで飛び立とうとしてさ。俺、必死に押さえた。
この国の危機を防いだんだから褒めて貰っても良いと思う。
で、今は作戦会議中。
だけどどう足掻いても『攻撃される→反撃→グリス王国消滅』にしかならないんだ。セキ達が暴れるからさ…。
「…死者を出さず、攻撃されず、穏便にコージの存在を認めてもらうとか無理じゃね? 相手はコージが魅了してるって決め付けてるんだからさぁ」
オウがため息と共に呟いた。
まったくもってその通り。お偉いさん方は大抵頭が固い。多分異世界でもそれは同じだ。
「…1回の攻撃ぐらい目を瞑るってのはどう?」
「却下だ危険だ」
「デスヨネー…」
カイルに一刀両断され、撃沈。俺は仕方無しにルビーのペンダントに魔力を入れる作業に入った。
「コージが攻撃されれば、その時点で国は敵だ。重鎮らには死んでもらう」
「それは皆同じ気持ちです、セイ殿。ですが、そうなればコージはどう思うか…。穏便に終わらせるに越した事はありません」
「そりゃそ~だよねぇ。暴れて殺したらコージの印象が悪くなっちゃう」
「謁見の間に入った瞬間に全員を拘束してはどうか!」
「攻撃はされないでしょうが『害を成さない』という事には見事に失敗しますな」
「むッ! 確かに!!」
「そもそも魔法を妨害する魔道具を仕掛けられる可能性も充分にある。魔法が使えなければコージは自分を守れない」
「スキルが使えぬ訳ではないでしょう。コージくんにはセイ殿のスキルを真似た『天喰』があります。『色彩の上書き』も。…ないとは思いますが、万が一の際には己を守れるかと」
「…『天喰』は全部吹っ飛ばす。コージが…、ただの人間がいる場所で使えるかは分からない」
「……俺が、前に出ます…。王国騎士団に指示を出すのは俺の兄だから…、俺が魅了されている訳ではないって知れたら…、そう簡単には、攻撃されないかと……」
「では俺はそのロイを守る為、同じく前に出よう!!」
「……セキさんはコージを」
「お前が傷付けばコージも傷を負う! それに、俺はお前を気に入っているんだ! そのピクリとも動かない表情筋もな!!」
「…………喜ぶべき、でしょうか」
「怒って良いと思うぞ」
「ロイの兄…王国騎士団長は世界序列100位ですが、対策は?」
「俺がするよ~。昔、暇潰しに剣の達人って人間から剣を教わったんだよね。魔法が使えなくても、ある程度は相手に出来るかも」
「オウに任せてよかろう!! それより、王との交渉だ!」
「この中で最も話が通じそうな者は?」
「マンハット殿でしょう。何せ聖騎士団長です。世界中に名が轟いている」
「カイル!! 交渉出来るか!」
「…微妙です。王の説得自体は簡単でしょうが、貴族が厄介かと。自分の実力がない分、セキ殿らの実力も見極められない。ただの子犬が、ブラッディドッグに吠えるようなものです」
「ブラッディドッグは見た目だけは可愛いからなぁ」
「コージの事も、平気で侮辱するかも知れません。自分達の命が危険に晒されているとすら気付かない可能性も…」
「愚かさ限界突破だな」
「やっぱり最初に5人ぐらい殺してから交渉を…」
「だからコージが悲しむんだってそれじゃあさぁ!!」
「流石に、コージを侮辱される事は許せぬぞ俺は!」
「当然です。ですが向こうはそれを分かっていない」
「あー、王都にはコージの味方がいるんだよね?」
「えぇ。コージくんにしか名前は教えませんでしたが…、王直属の諜報員が1人。コージくんに危機を知らせたのも、彼です」
「……………コージが、『害を与えない』と認識させれば良いんだよな」
「あぁ。相手が馬鹿過ぎてどん詰まりだが」
「コージは……、あ、寝てる…」
「もう日付が変わった。街を観光して疲れたのだろう」
「まったく…可愛い寝顔。この寝坊助ちゃんめ」
「明かりを小さくしよう。ロイ、毛布を取ってくれ」
「はい…」
「…それでセイ。何か思い付いたのか?」
「あぁ。………まずは…」
********************
はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。
あれ?今回地の文超少なくね?
……まぁ良いや。
お気に入り3400、ありがとうございます!
いやぁ作者が救いようのないアホなもんですから矛盾とか王政の間違いを見付けても『まぁコイツアホだし』で済ませてください…。
気になる場合はソッと教えてください…。
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