異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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権力系ホモ★グリス王国編

ビュンッとなってシュンッてなった

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「………ハッ!」
「あ」
「起きたか」
「おはようコージくん。オコメは美味しかったかね?」
「…?? はぁ…? おはようござ……ぁ、あ、ふあぁ~……」

目を覚ませば、目の前にオウのアイボリー色のふわふわな髪の毛があった。セキとセイに比べてちょっと童顔気味な顔が俺を見詰めていて、寝起きでちょっとビックリ。
目をパチクリさせていると、カイルの声が聞こえた。そっちを向けば、セキとセイとロイとカイルとルークさんが円形のテーブルを囲んで口をもぐもぐさせている。どうやら昼飯中らしい。
ルークさんが何かの葉っぱを食べながら俺に質問して、やっと俺は全部思い出した。

そうだ俺、米食って倒れたんだった。

「俺、どのくらい…」
「ほんの1時間程度だよ~。ご飯食べる? えぇと…なんだっけ。牛肉のなんちゃら……。ねーカイルなんだっけ」
「Boiled Beef and Carrots with Dumplingです」
「………だって」
「???」
「……牛肉と人参のゆで煮だ。牛脂のだんごも入ってる」
「ほほう……。食べる!」
「おいで」

お洒落な名前で言われても分かんなかった俺に、カイルが分かりやすく教えてくれた。ゆで煮って言葉は聞き慣れないけど、まぁ美味しそうな匂いがするから問題ないでしょう!

「そうだコージ。15時に魔導師団長が空間転移魔法を教えに来るぞ。あのあずまやで」
「あ、マジ? そんな昨日の今日で教えてくれるもんなんだね」
「あぁ。ネコチャンいっぱいのあの場所だ」
「ネコチャン!!!」





********************



水をバチャバチャ噴き出す噴水広場を抜けて、細水が流れる水路の横を歩く。花型に整えられた生垣の場所を通り過ぎれば、全面ガラス張りの大きな温室が見えてきた。その先の木材と白薔薇で作られたアーチを抜けると、大きな池に続く小道が表れて、小道を一歩ズレれば、ネコチャン達が踏み均して出来た獣道がひょっこりと顔を出す。
更に進むと、青い葉を生やす木々に隠された白いあずまやが見えてくる。
絶えず清風が吹くその空間は、木漏れ日が降り注いで幻想的であり、たくさんのネコチャン達が集うポカポカお昼寝スポットだ。

「ネコチャーン!」
『あ! 昨日のにんげん!』
『にんげんだー』
『おこるとこわいドラゴンもいるー!』
『ドラゴンやだー』
『にんげんだっこしろ~』
『今日はどーしたんだよぉ』

俺達に気付いたネコチャンが、それぞれにゃんにゃん鳴いてトコトコ寄ってくる。可愛い。優勝。
とりあえず怖がられてるっぽいセキは近寄らせないで、3メートル離れた場所で待機。
だっこをせがむ茶トラのネコチャンをもっふりと持ち上げて、赤ちゃんをあやす時みたいにゆらゆらしていたら、カイルとロイが『ママだな』『ママですね』なんてふざけた事を言った。
ムカついたので茶トラのネコチャンをパスして『ほらほらァ、頑張れよパパ』って言ってやったら、焦って持ち方を間違えたのか、茶トラのネコチャンの鋭いパンチを食らったようだ。
むふ。ウケる。

「おや。もう来ていたのかい」

穏やかな声にクルッと振り返ったら、そこには青い外套を羽織ったヴァロがいた。
今日も昨日もその前も、相変わらずカッコよくてムカつくぜ。俺がメガネを掛けても陰キャに拍車が掛かるだけなのに、ヴァロが掛けると途端にインテリになっちゃうんだから、世の中って不公平だよな。天は二物を与えるもんだよ。

「ヴァロー。午前中ぶり」
「うん。今さらコージの事を知ったけど、コージって凄い子だったんだね。下手に洗脳しなくて良かったよ」
「むふふ。分かれば良いのだ」

偉そうにふんぞり返る俺を見て、ニコニコ微笑むヴァロ。ザ・『微笑ましい』って感じの顔を見ても分かる通り、どうやら子供扱いされているらしい。
実際にまだ子供なんだけど、ヴァロやルークさん達が送ってくる視線は……、なんというか、幼児に対しての視線と同じな気がするんだ。だから、そこはちょっとヤだ。幼児扱いする奴の尻を狙うなって言ってやりたい。
でも前に1度、リイサスさんにそう言ったら『じゃあ大人扱いしよっか』ってニッコリ笑って滅茶苦茶エロいことされたから、もう言わないって決めてる。
俺は尻の平穏を優先したんだ……。

「空間転移魔法を教えてくれるって聞いて来たんだけど」
「うん。コージが転移出来るようになったら、いつでも遊びに来れるからね。じゃあまず…人払いをしようか」

そう言って何かブツブツと唱え始めたヴァロ。掌にバチバチと白い塊が集まって、一気に膨張した後に弾けた。思わず目をつむって顔を腕で覆ったけど、特に何も起きず拍子抜け。でもきっと何かしたんだろうな。『人払い』って言ってたし。

「これでよし。じゃあ空間転移魔法を教えます」
「よろしくお願いしまーす!」







「空間転移魔法は禁忌魔法であり古代魔法。属性的分類はないんだ。ただし最上級魔法。とっても難しくて魔力消費も激しい。僕が知ってる使える人は…、あぁ1人いる。精霊王が使える」
「精霊王って…、管理者の1人の」
「うん。悪魔族始祖、天使族始祖、精霊王が今この世界の管理者だね。悪魔族と天使族はここ50年あまり姿を見せてないが、精霊は割りとフレンドリーだから話を聞けるんだ」
「精霊フレンドリーなんだ…」
「うん。4体に1体はフレンドリー」
「ちょっと楽しそう」
「でも激レア」
「残念……」

あずまやの中のベンチに座って、ヴァロから予備知識講座を受ける俺。周りにはセキ達が立って一緒に話を聞いているが、ルークさんだけはネコチャン達と戯れている。ちなみに俺の膝の上にはハチワレのネコチャン。頭の上にはキジトラのネコチャンが鎮座している。
頭の上がもふもふで暖かくて俺嬉しい。

「転移できるのは1度行った場所だけ。それも、景色をハッキリ覚えていないとダメなんだ。だからもしこの城に転移するとしたら、人目のない安全な場所を見付けて、そこの景色をしっかり覚えておくんだよ」
「んー…こことか」
「良いんじゃない? ここを転移位置に決めてくれれば、猫達が君が来たって僕に知らせてくれるし」
「うーんヴァロに把握されるのは何かヤだなぁ」
「そ、そうかい……」

わざとらしくしょんぼりするヴァロ。ちょっと罪悪感に胸がチクチクするけど、把握されんのはヤだから気にしない。
でも、誰にも見られない安全な転移場所かぁ。転移される瞬間を目撃されると、空間転移魔法を使えるってバレちゃうからな。気を付けて選ばないと。

「では実践してみよう。えぇっと…、母方の実家に旧世界の本があってね……。その場の位置、周囲の光景、匂い、明度を鮮明に覚え、頭の中で構築する、らしい。自分がその場にいると思い込んだ後に詠唱を唱え…、全身の魔力を静脈から肺腑へと巡らせて最後に脳髄へ。蝸牛菅を通過し、体外に押し出すんだって」
「……魔力を、だよな?」
「うん、魔力を。まぁイメージで大丈夫だよ」
「肺腑って文字通り肺で良いの? 心の奥底、みたいな意味のことわざ、あった気ぃする」
「コージの思ってる肺臓で構わないよ。蝸牛菅は分かる?」
「えぇと…、耳の中のグルグル」
「そう。詠唱凄く長いんだけど、噛まずに言えそう?」
「あ、詠唱はダイジョブ。とりあえずやってみて良い?」
「……? 詠唱いらないの?」
「ウン。言わなくても発動出来るから」
「そ、れは凄いね……。…………あ、実践? 良いよ。まずは数メートルから始めてみようか」

動揺気味のヴァロ。俺のチート性能に若干引いてる感じもある。
でもそうだよなぁ。普通はこういう反応だよなぁ。
魔法ってのは、思っているより発動のハードルが高い。何十種類の長い詠唱を覚えて、鮮明なイメージを思い浮かべて、魔力を体の中で動かして……っていう感じで、やることが多いんだ。
魔法の威力が上がれば、詠唱の長さや魔力操作の難度も比例して上がる。だから魔導師とか魔法メインの冒険者って、実はかなり優秀だったりする。
俺の感覚で言えばー…、プログラミングしながらリフティングする感じ。
うん、意味分かんないよな。俺も分かんない。

だから、そんな難度MAXの激ムズ魔法をこんなにアッサリとやってのける俺は、まさにぶっ壊れチート。真面目にコツコツと詠唱を覚えてきた人にとっては、かなり妬ましいだろう。
どうしてこんなチートを使えるのかって言えば、俺がゼロアにお願いしたからだ。
……だとしても、こんなにホイホイとチート貰っちゃって、ホントに良かったのかなぁって気分になる時もある。
そもそも、ゼロアはどうして俺にチートをくれたんだろう? 『死なせちゃった詫び』、的なことは言ってたけど、どう考えてもチート過ぎる。世界征服も夢ではない。
一体何が目的なのやら……。



********************



まばたきをした一瞬で、コージは目の前から消えていた。
コージを注視していた聖騎士団長や古龍達と一斉に振り向けば、数メートル先の埋もれ水の前に、コージがポツンと立っている。
大きな目を更に大きく開き、パチクリとビックリした様子でコージは僕達の方を見ていた。そして数秒の沈黙のあと、顔をパァァァと輝かせて大ジャンプ。

「うぉっしゃーーーッ!! 見た、見た!? 瞬間移動した! 俺、瞬間移動しちゃった!!」

頬を朱色に染めてピョンピョン跳ねるコージ。すぐさま古龍達とギルドマスターが駆け寄り、コージをこれでもかと言うほどに褒めちぎる。
僕はさっきまでコージが座っていたベンチを見詰め、笑いが堪えられなかった。

───あぁ、なんて子だ。本当に成功させてしまうとは!


「ねっ、ヴァロ見た!? 成功したー!!」
「……うん、見てたよ。いや見えなかったけどね。凄いね……。成功しちゃったね」
「うん! 成功しちゃった!」

両手をバンザイしてギルドマスターに抱っこされるコージは本当に可愛いが、コージが成功させた『空間転移魔法』はちっとも可愛くない。
世界中の軍事機関が、喉から手が出るほど欲しがる魔法だ。使える者が現れたと知られれば、世界大戦は避けられない。それが『神の愛し子』ともなれば、とんでもない量の血が流れる事だろう。
詠唱は噛みやすく500字もある上に、頭の中でのイメージが難しい。必要魔力量は未だに不明。何せ使えるのは世界序列の上位3名程度だ。悪魔と天使と精霊に『どれくらいの魔力が必要ですか?』なんてバカ正直に聞ける筈もない。
それを、神に愛された、という理由でコージは簡単に使った。
勿論、これがコージの生活に役立つ事は間違いない。
コージの所属するオーディアンギルドから、この城までの移動時間がゼロになる。いつだって会いに来てくれる。それは嬉しい事だ。
だがリスクがあまりにも大きすぎる。
コージを頂点とした、あの救済組織………【アルカ十字団】がその名を各国に轟かせる事ができれば、そのリスクも多少は減るだろうが……。とにかく、アルカ十字団が一定の知名度を得るまでは、最高機密でかからねばなるまい。

………だがなぁ。バレるだろうなぁ。というか、国王らや宰相にはもう報告が行っているだろうな。
あの諜報部の男ジル・ブレイク、ずっとコージに纏わり付いていたあの男。コージに危害を加えるつもりはないのだろうが、目障りだったので結界で弾き出した。
あの位置であれば、近付きは出来なくても、コージが空間転移した瞬間は見られた。
しかし都合の良い事に、国王も宰相も王国騎士団長もコージに惚れている。コージの正体を知っていてなお、悪用する気は無いはず。
『オーディアンギルド』、『死神の吐息』、『聖騎士団』のメンバーで結成される【アルカ十字団】に、近々『グリス王国』も加わりそうだ。
僕も頑張ってアルカ十字団に入れて貰おう。



********************




秘密結社の名前は【アルカ十字団】に決定しました。
ちなみにアルカはラテン語です。


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