あたたかな鳥籠を君に、優しい口づけをあなたに

サイ

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第1章

17.悪夢しかない(※)

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 ジュニアのパーティにヘルマンはいつもより少し早く到着した。
 フェルナンドに急かされたのもあったが、時間があればユリアの様子も見ておきたかった。
 パーティの担当者に変わりはないかと尋ねつつ、数人の挨拶を受け、会場を見渡す。
 もう終盤に近いから比較的落ち着いた雰囲気ではあるが、子供たちが楽しそうに遊んでいた。
 この輪の中に入れたのだろうか、と少し心配しつつ、辺りを見渡してもユリアの姿はない。
「帰ったのか」
「そんなはずないですけどね。待ってるって言ってましたよ」
 世話係らに聞くと、休憩室の方に三十分前くらいに行ったということだった。
「貴族にしか見えないから、そっちで話してるのかもしれませんね」
「休憩室……いってみよう」
 人が苦手なユリアが、同世代とはいえ密室で三十分も?
 違和感があった。
 かすかなそれはヘルマンを逸らせ足早に休憩室へ向かわせた。



『金貨一枚分の役にも立たねえ、このガキが!』
 ガラガラとした男の声。
『脱ぎなさい。できないのなら、もう一度覚え直さなくてはいけないよ』
 陰湿で落ち着いた男の声。
 ああ、また始まった。
 ユリアはぼんやりとした頭で考えていた。
 何をして耐えていたんだったっけ。この時間をどうやり過ごせば、僕は壊れずにいられたんだろう。
 わからない……。
 鋭い首筋の痛みに、急激に現実に引き戻されるようだった。
 体は鉛のように重いのに、心臓は早鐘のように鳴っている。頭が痛くて重い。
「――っは、ああ!」
 いたい、痛い!
 首がちぎれそうなほど痛くて、ユリアは身じろいだ。素早く動くほどの力はなく、わずかに声が出るだけだった。
 誰かが体の上にいる。相変わらずソファに押し付けられたままで、身動きが取れない。
「やっと起きたか?ユリア」
 上に乗っていた男が離れて行く。赤い髪。名前は……誰だったか。
 その唇に、血が滴っている。ユリアの血だ。男が離れた後も首筋が痛くて、この痛みがユリアを夢から強制的に引き戻したのだ。
 夢も、現実も、悪夢だ――。
 頭はまだ働かない。それなのに恐怖だけはくっきりと感じている。
「次に寝たら、首絞めるから」
 何でもないことのように言ってのけるミヒルの目は相変わらず興奮をたたえている。むしろユリアの血を見て更に興奮を増したようだった。
「なん……」
 声が出なかった。訳が分からない。自分がどうしてここにいるのかも。
 口の中に残った苦みが先ほどの行為を思い出させた。
 周囲には泥酔して目の焦点が合っていないものが数名。
 すぐ外では健全なパーティが開催されているというのに、扉一枚でここまで大胆な行動に出ることが信じられなかった。
「次いいか?」
「いいぜ。じゃあ交代な」
「ユリアちゃん、はい、こっちね」
 ユリアの横にいた男が力づくでユリアの頭を引き寄せた。がくりと身体が倒され、男の膝に頭を乗せる形になる。その動きでグラグラと目が回った。
「おーい、寝るなよ」
 視線が定まらず目が宙を泳いでいるのを、ミヒルの平手が容赦なく引き戻す。いっそ気を失っていられたらよかった。
 目の前にその男の反り立ったものが出された。うっ、と拒否感を感じるよりも早く頭を掴まれ咥えさせられる。
「ちゃんとお仕事してね」
 ソファに横になる形で咥えさせられると、起き上がることもできず体を動かすこともままならなかった。軽く頭を押さえられているだけなのに、口の奥まで入れられて苦しい。
 お仕事……僕の仕事は何だったんだろう。
 そう思いながら、必死で舌を動かす。どうすれば早く終わるのか思い出そうとしても頭は働かなかったから、ただ舌を動かし、唾液をあふれさせながら奉仕した。
「――ああ、これはすごいな。すぐ出そう」
 男の愉悦の声に、二人が笑う。何がそんなに面白いのか、酒を飲みながらずっと笑っている。
「じゃあ手伝ってやるよ」
 ミヒルがユリアの前にしゃがんだ。目線で指示し、もう一人の男がユリアのズボンを下ろした。
「――――っ!!」
 抵抗しようにも手足に力は入らないし、声も挙げられない。その手も足も押さえつけられ、ただ脱がされたという恐怖に全身が凍り付いた。
 ミヒルの手が腹から舐めるように移動し、胸にたどり着く。
「――うぅぅっ!!」
 突然爪で胸の突起を押しつぶされ、あまりの痛みに、声にならない叫び声が上がった。その開かれた喉に男のものが更に深く入ってくる。
 苦しさやら痛さやらで、ユリアは涙をにじませた。
「いい顔じゃねえか」
 言いながら、ぐりぐりとそこを痛みで刺激しながら、ミヒルはユリアのシャツをめくりあげた。
 へえ、と声を上げる。
「なんだお前。もう使われてんじゃねえか」
 ユリアの傷だらけの肌を見て、ミヒルは嬉しそうに笑った。二年の間についた、刃物の傷、殴られたり、ガラスの破片、木の破片、投げられた石。色々なもので傷つけられたユリアの肌は大小の傷で覆われていた。それをミヒルは、すでに誰かと遊んだ後と解釈した。
 遠慮はいらないとばかりに胸の突起に生温い舌を這わせてきた。
「――ぐっ、うう」
 吐きそうになり、そうなると傷がひきつる。
『吐くなよ。吐いたら今度は、そっちの腕を切り落とすからな』
 あの男の声が響いた。
『おら、もっと舌を使え、下手くそ。口全部使え。――おら、こぼすなよ、吸え』
 言われたとおりに舌を動かす。
「はは、なんだ、積極的になったな」
 咥えさせている男が喜びの声を上げる。
 胸の突起を舐めてたミヒルが、にやりと笑って――。
「んぁっ――――――」
 鋭い痛みに体が跳ねた。
 舐められて敏感になったそこを、思い切り噛み付かれたのだ。
 あまりの痛さに息が止まる。それでも口の中のものは動きを止めず、質量を増し――熱を放って終わった。
 引き抜かれ、ようやく口の中が解放される。
 ユリアは激しく咳き込んだ。胸が取れたんじゃないかと思うくらいじんじんと痛み、息が苦しくて頭が更に重くなったように感じる。
 手足はまた誰かに拘束されていた。
「よしよし、ご褒美やるよ」
 ミヒルがそういって、今度はユリアのものを握りこんだ。
 それは恐怖に縮んで柔らかいままだったのに、徐々に力を込めてするするとさする。
「いや、いやです……やめてください。い、痛い……」
「痛いだけか?集中しろよ。勃たせないと握りつぶすからな」
 ひっ、とのどが鳴る。
 この男はやりかねない。――しかしそう言われると余計そこは恐怖で縮んでしまうようだった。あまりにも無理な要求だ。
「酒が足りねえんだな。待ってろ」
 そういってミヒルが片手を上げる。そばの男が酒瓶を渡した。
 また飲ませるのか。身構えたが、違った。
 ミヒルはその酒瓶から酒を手に取り、酒に濡れた手で再びユリアのものを握りこんだのだった。
 ただの酒ではない、ただの酒が、粘膜に触れただけでここまで熱くなるはずがない。
 しかし深く考えるより前に。ミヒルは今度は後ろにも手を伸ばし、その酒にまみれた手を入れてきた。
 そこは―――。
 はじまりのおそろしい記憶。
 深く深く封じ込めた、頭の深淵のところにある、恐怖の塊。
 熱い指がず、ず、と入ってくる。
「力を抜けよ……あ?おまえ、ここも使ったことあるんだな」
 ミヒルがまた笑った。
 指が中でうごめいている。熱くて燃えそうな指が、中を広げるように動き、探っている。
 やがてその場所にたどり着き、ぐぐぐ、と遠慮なく押しつけてきた。
 下半身に痺れるような刺激が引き起こされる。無理やりに、熱が前に集中し硬くなっていく。
 せり上がってくる吐き気に、全身が燃えるように熱い。乱暴な快感と全身の毛が逆立つような不快感。
『息をしなさい』
 あの男の恐ろしい声が聞こえる。
『吐いてはいけないよ。ここで快感を覚えるんだ。できるまで、今日は何度でもやるからね』
 逃げ道はないのだと言い聞かされる。
 ただ受け入れるだけだ。この、けだものたちの行為を。
 ユリアは抵抗するのをやめた。
 できるようにならないといけない。――なぜだったか。わからない、でも、これができないといけないんだ。生きていけない。だから……。
「うわ、すごいなこいつ」
「何が?」
「ちょっとお前も入れて見ろよ。中でうごめいて、誘ってきてる」
 ユリアの後ろにまた誰かの指が入れられた。
 圧迫感が増す。
「はっ、……あっ」
 息をするのが難しい。
「なあ、俺、舐めていい?」
 傍の男がそう言って、ユリアの前に顔をうずめた。
「お前が?舐められるんじゃなくて?」
「ああ。だって見ろよ、この顔。可愛くてたまんねえだろ?気持ちよくしてやるんだよ」
 言うや否や、男はユリアのものを咥え込んだ。
 すっぽりと生ぬるい口の中に入れられ、敏感なそこが急な刺激に跳ねる。後ろからぐりぐりと押され、前はぬるくて湿った舌が生き物のように這い回る。
「うあ、ああぁぁぁぁ―――っ!」
 急速に促され、ユリアは勢いよく精を吐き出した。その間も後ろを強く押され、逃げ出せない快感に追い打ちをかけるようにびくびくと体が痙攣する。
 思い出せないくらい久しぶりの吐精は長く尾を引いて暴れ回った。
 余韻にびくつくユリアに、「可愛いなあ」と下品な笑いで男はまだ口を離さなかった。
「いや……も、た、いた……ああっ!!」
 吐き出したばかりで敏感な先端を吸われ、舌を押し込まれ、ユリアはまた体を痙攣させた。
「あついな。俺……早く入れたい」
 ユリアの嬌声を聞いたからか、ごくりと唾をのむ声。
「まずは俺な」
「まだ狭くないか?」
「それがいいんだろ。狭くて痛くて泣き叫ぶのを、ゆっくりじっくり嬲りながら犯してやるんだよ」
 ユリアの身体はソファに仰向けに寝かされた。
「薬が足りなければ追加するが……その必要もなさそうだ。おい、手を抑えとけ。――ユリア、ゆっくり、可愛がってやるからな。ねじ込んで、舐めまわして、噛み切ってやる。いい声で泣けよ」
 ぐ、っと体重が覆いかぶさってくる。
 両手を固定されて身動きが取れない。
 ――あつい。熱い、熱い。
 体の内側から熱い。もう何も考えられない。
 いっそこの体が焼き切れてしまえばいい………。
 


 世界が暗く幕が下りたように感じた。その先に行けば苦しみから解放される、そんな予感がした。
 ユリアはそれに手を伸ばそうとした。
「―――ユリア!!!」
 遠くに自分を呼ぶ声が聞こえる。耳鳴りがひどくて聞き取れない。
 たくさんのものが割れて壊れる音がする。
「なん―――」
 ミヒルの呆気にとられたような声が耳元でしたかと思うと、ふっと身体が軽くなる。
 ―――ガシャン!ゴーン!
 ものすごい音がしている。
 身体は開放されたが、重く、指一本動かすことはできなかった。耳鳴りと頭痛で意識を今にも手放しそうだ。
 それでも何が起きたのかと視線をやるが、にじんだ視界の隅で、倒れる複数の子ども達が映っただけ。
 遠くで誰かが叫んでいる。ふわりと肌に触れる感触とかすかな重み。何かが体に掛けられたみたいだ。
 けたたましい破壊音は続いていた。
 ユリアはそれ以上目を開けていられなかった。
「――って、待って!ヘルマン様、死ぬ、その子、死んじゃう!!――護衛騎士、止めろ、ちがう、そっちじゃない、公爵様だ!」
 あれは、懐かしい、フェルナンドの声だ。
 そうだ、フェルナンドと、ヘルマン……あれは、夢だったんだっけ。
 
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