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第3章
5.
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ユリアはいつもの時間にふと目を覚ました。
冬だというのに温かくてこの上なく心地よい。その温かい腕に後ろから包まれて、ユリアは守られるように眠っていた。
身体は全身が鉛のように重かった。
何とか身体をよじってみると、間近でヘルマンが薄目を開ける。
「もう、起きたのか」
少し掠れた低い声が体に響く。ヘルマンはユリアの髪を撫でた。
「もう少し眠っていろ」
部屋の暖炉には火がついている。
明け方まで二人で激しく抱き合っていて、外が白み始めたのは覚えている。最後の方は記憶がない。
そこから体を清め、火をつけてくれたのだろうか。
二人とも服を着ていないが、かえってお互いの体温で温かかった。
ユリアは反転し、ヘルマンに向き直って抱きついた。
太い腕に頭を乗せ、広い背中に手を回した。隆起した筋肉に触れる。
肩に頬を擦りつけるようにしながら、ユリアもまた再び目を閉じた。
昨夜はいつ眠ったのだろう。
あれは、仕事が終わって、いつものようにヘルマンの寝室に来て。どちらからともなく唇を重ね、舌を絡ませ合って。
もうすぐ首都へ行かないといけないな、という話をしていたら、ヘルマンが急に怖い顔をした。
ユリアが首都に行くたびに、婿にと望む求婚書が山のように届く。首都のパーティーでヘルマンがいるのにも関わらず声をかけるものも増えてきた。
ヘルマンは伺うように自分を見上げる緑の瞳を見据えた。
ヘルマンの望み通り、数年前からユリアはヘルマンの部屋でずっと共に生活している。ユリアのあらゆることはこの手で行うことができるようになった。
――それなのに少しも満足できない。
これ以上ないほど愛し尽くしても、まだもっと、と思ってしまう。
「ご主人様……?」
「……行きたくないな」
はあ、と息を吐いて、ヘルマンはユリアのジャケットを脱がし始めた。ユリアはされるままにシャツだけの楽な格好になる。
自身もジャケットとベストを脱ぎ、ユリアを再び抱きしめた。
そのままベッドに腰かけ、ユリアを膝の上に乗せた。
「ずっとこうしていたい」
「僕もです」
ユリアはさらりとそんなことを言ってのける。
ヘルマンは少し笑いながら、ユリアの耳に舌を這わせた。びくりと反応が良く、ゆっくりと首筋にも刺激を与える。
ユリアは小さく震えながら、赤い唇を必死で動かした。
「あ……ご主人、様……だめです。久しぶり、だから……」
少し触れただけで反応してしまい、声が漏れてしまうのが恥ずかしい。逃れようとするのをヘルマンは許さなかった。
「久しぶりにしたのは、君の希望だろう」
腰を掴んだまま首筋をゆっくりと舌で味わい、時折吸い付く。そのたびにユリアは熱い息の混じった声を漏らした。
「あ、ふ……だ、って、仕事の日は……」
仕事の前の日に抱きつぶされ、腰をさすりながら出勤した時は、歩き方がどうしてもおかしかった。フェルナンドの痛ましいような、同情されたような視線もつらかった。
なので、仕事の前日は基本的には一緒に寝ないようにしていた。くっついて寝るとどうしてもその先に進みたくなるので、寝室も別にすることがあるほどだ。
ヘルマン自身もここ最近はルイスの調査に付き合って忙しいこともあり許容していたが、やはり不満だった。
寝るのは一緒でないといけないと今日改めて思い直した。
「ユリア。もうここをこんなにしているのに。これからも耐えられるのか?」
ユリアは両手で口を押えながら必死で頷いた。
望んでヘルマンの意に従ってきた。なし崩しにたくさんのことをしてきたこともあるが、これだけは譲ってしまうと、仕事にならないと思う。
ヘルマンは笑った。
「では、耐えてみるといい」
ヘルマンの手がユリアの下着を下した。
久しぶりの刺激を期待して、それはもう勃ち上がりかけていた。ヘルマンがやんわりとそこを握ると、一気に脈打つ。
「ううっ、ん……」
いつもよりゆっくりと動かされているようで、もどかしくてユリアは自分から動こうとした、その時。
パチン、と音がして、急な締め付けに、ユリアはぎょっとして自分の勃ち上がった前を見下ろした。
「ご、ご主人様。これ……」
勃ち上がったその根元に、黒いバンドの様なものが巻かれている。
「耐えられるよう、手伝ってやる」
「い、ぃたい、です、ご主人様」
敏感なそこにそんなものをまかれ、恐怖でユリアは声が震えた。
恐る恐るヘルマンを見れば、青い瞳が欲情をたたえながらすっと細められた。
「締めているというのに、ユリア。もうここを濡らして……」
「ああぁっ……!」
つつ、とヘルマンの指が上下に撫でるように動き、ユリアは声を上げた。
その声も許さないようにヘルマンの口でふさがれる。深い口づけを交わし、貪るように口内を責められながら、ヘルマンの指が後孔へ侵入した。
そこはすでに待っていたかのように濡れて指を迎え入れる。ヘルマンは念入りにそこをほぐした。
びくびくと身体が跳ねる。いつもならとうに達している刺激だった。それなのに前を絞められているせいで熱が逃れず、じんじんと痛みか快感かわからない刺激が続く。
何度そうして絶頂なのか何なのかわからないものを与えられただろうか。
息も絶え絶えて、目の前も霞む。ただすがるようにヘルマンの首に手を回し、許しを請うしかできなかった。
「ご主人様、おね、お願いします。取って……これ……も、む、りぃぃっ――ああ!」
言いながら、また強い刺激に体が跳ねる。
「ほら、精を放たなければ、何度でも達することができるだろう」
ヘルマンの優しい声が今は恐ろしく聞こえた。
ユリアは必死で首を振った。
「むり、無理です。も……っく、あ、あぁ!」
ヘルマンはもう片方の手でユリアの前も包み込み上下に動かした。ぬるぬるとしたそれは触れるか触れないかの弱さで、いつもよりずっと弱い刺激なのに、限界まではち切れそうなそこには十分すぎる気持ちよさだった。
後ろの刺激も連動するかのように押しつぶされる。
「そ、そこ、やめ……めてっ!だめ、中、だめっ……っく、――っくぅぅ」
ユリアは体を二つに折り曲げ、大きくびくりとはねた。
深く重い快感だった。
体中が性感帯になったように、ヘルマンの息がかかるだけでびくりとはねる。
「ああ、中がすっかり弱くなってしまった」
「ふっ、ふああんっ」
ヘルマンの声だけに反応してしまった。
もう、つらくて、苦しくて、ユリアはヘルマンに縋った。
「許して……も、ゆるして、くださ……ごしゅ、あ、ああああ!」
喋っている途中でヘルマンのものがユリアの中に侵入した。突然の圧迫感と強烈な快感にユリアは悲鳴を上げる。
「ほら、ちゃんと息をしなさい」
深い青の瞳に見つめられ、ユリアは無意識に後ろを締め付けてしまう。
ヘルマンは少し耐えるように笑ってからユリアの髪を撫でた。
「――いい子だ」
そういってまた唇を塞がれる。
後孔を穿ちながら口を塞がれると、苦しさで頭まで犯されているようになる。
全身が熱く、脳まで焼き切れそうで、体中を熱が駆け回っている。
「ん、んんっ、ん――っ!」
ヘルマンが抜き差しをするたびに、敏感な部分が引っかかれるようにこすれ、もうずっと絶頂の中にいるようだ。
「ほら、ちゃんと舌を動かして」
ヘルマンはまだ許してくれなかった。ひとしきり口内を舐め取ってから、ようやくユリアをベッドに横たえた。
見上げたヘルマンは少し汗ばんだ額から髪をかき上げる。
その姿が獣のようで、ユリアは恐ろしくなって身を震わせた。そんなユリアの姿を見てヘルマンの興奮は増したようだった。
「ユリア。綺麗だ」
そう言いながら動きを再開する。
今度はヘルマンが上にいるから、完全に動きを封じられたようになる。
次第に早くなる動きに合わせ、ヘルマンはユリアの前に触れた。
「やっ、も、そこ、触らな……ああっ!」
熱くて、苦しい。
ヘルマンの動きに合わせて、巨大な快感の波が襲い掛かってくるようだった。
もはや悲鳴を上げることもできず、ユリアはあまりの絶頂に一瞬意識を手放した。
首筋に歯を立てられ急速に引き戻される。それでも快感の余韻がまだ続いていて全身が動かなかった。
ヘルマンは前を絞めていたバンドを外した。
「っは、あ、な、なんで……でな……」
急激に解放され、熱を放つはずが、そこからはただだらだらと白濁がこぼれるように垂れるだけだった。
ヘルマンの動きが激しくなる。
射精の気持ちよさがだらだらといつまでも続き、ユリアは声もなく再び気を失った。
その後目が覚めて、今度は普通に愛おしむように優しくもう一度。
絞められて痛かったと文句を言えば、治すといわれ、口に咥えられて、もう一度。
もう出すものがなくなったというのに、挿入され、ゆるゆるとした刺激で延々と……。
覚えていたのはそこまでだった。
「ひどい……」
二度寝してからどれくらい時間が経ったのか。もうお昼前のようだった。
ユリアは思わずつぶやいた。声が掠れている。
すかさずヘルマンが水を渡した。
ベッドの上、ヘルマンにもたれるようにして座りながらユリアはそれを飲んだ。
「どうした?」
「ご主人様。――やりすぎです」
「つらかったか?すまない」
すまないと思っているとは思えない顔でヘルマンはユリアにキスをした。
「つらいです」
宥めるように首筋にも口づけられる。
――本当に止めたければ、名を呼ぶよう言われている。
確かに名は呼ばなかった。しかし名を呼ぶのは、ヘルマンを拒絶するようで、まだ言ったことはない。
「お腹は減ってないか」
「もう少ししてからで、いいです」
そうやってお昼まで二人でベッドの上でごろごろして過ごした。
「――首都にはルイスも行くことになった」
「え……何でですか」
ユリアの髪を梳かしながらヘルマンが言ったのへ、ユリアが思わず振り返る。
「今度の旅行先は首都だというから、同行することにした。ついでにフェルナンドについて少しパーティーにも顔を出すだろう」
「ルイスはまだ子供ですよ」
「子供を伴うティーパーティーがある」
二人で楽しくやるだろう、という。ルイスとフェルナンドで出かけることはこれまでも度々あったので不思議はないが。
「最近……ルイスがお世話になっているらしいですね」
「きいたか?」
「いえ。でも出入りしているのを見かけているので」
また前を向いたので、表情は見えない。声は少し低かった。
「――やりたいことが見つかったようだ。今やっていることがどれほど続くかはわからないが、せっかくだからさせてやればいい」
「寂しいですね。――僕には何も言ってくれない」
「そのうち話すだろう。君は親替わりだから。とても近い存在だからな」
そう言われて、寂しさが少し和らぐ。
ユリアはヘルマンに体重を預けた。
「すっかり甘えてしまって……すみません」
「私にもルイスを育てる楽しみを分けてくれ」
ちゅ、とユリアの頬に口づけてヘルマンは優しい笑みを見せた。
そうやって負担のない言い方をしてくれる。
ルイスが何をしているのかはわからないが、ヘルマンが見守ってくれているというなら安心だ。
ルイスは平民ではあるけれど、フェルナンドは以前から色んな所へ連れて行きたがっていた。
それにようやく乗っかる気になったのだろうか。
「今年のタウンハウスは、にぎやかになりますかね」
「そうだな」
首都にルイスも行くなら、一緒に行きたいところがたくさんある。
ユリアは少し楽しみになった。
冬だというのに温かくてこの上なく心地よい。その温かい腕に後ろから包まれて、ユリアは守られるように眠っていた。
身体は全身が鉛のように重かった。
何とか身体をよじってみると、間近でヘルマンが薄目を開ける。
「もう、起きたのか」
少し掠れた低い声が体に響く。ヘルマンはユリアの髪を撫でた。
「もう少し眠っていろ」
部屋の暖炉には火がついている。
明け方まで二人で激しく抱き合っていて、外が白み始めたのは覚えている。最後の方は記憶がない。
そこから体を清め、火をつけてくれたのだろうか。
二人とも服を着ていないが、かえってお互いの体温で温かかった。
ユリアは反転し、ヘルマンに向き直って抱きついた。
太い腕に頭を乗せ、広い背中に手を回した。隆起した筋肉に触れる。
肩に頬を擦りつけるようにしながら、ユリアもまた再び目を閉じた。
昨夜はいつ眠ったのだろう。
あれは、仕事が終わって、いつものようにヘルマンの寝室に来て。どちらからともなく唇を重ね、舌を絡ませ合って。
もうすぐ首都へ行かないといけないな、という話をしていたら、ヘルマンが急に怖い顔をした。
ユリアが首都に行くたびに、婿にと望む求婚書が山のように届く。首都のパーティーでヘルマンがいるのにも関わらず声をかけるものも増えてきた。
ヘルマンは伺うように自分を見上げる緑の瞳を見据えた。
ヘルマンの望み通り、数年前からユリアはヘルマンの部屋でずっと共に生活している。ユリアのあらゆることはこの手で行うことができるようになった。
――それなのに少しも満足できない。
これ以上ないほど愛し尽くしても、まだもっと、と思ってしまう。
「ご主人様……?」
「……行きたくないな」
はあ、と息を吐いて、ヘルマンはユリアのジャケットを脱がし始めた。ユリアはされるままにシャツだけの楽な格好になる。
自身もジャケットとベストを脱ぎ、ユリアを再び抱きしめた。
そのままベッドに腰かけ、ユリアを膝の上に乗せた。
「ずっとこうしていたい」
「僕もです」
ユリアはさらりとそんなことを言ってのける。
ヘルマンは少し笑いながら、ユリアの耳に舌を這わせた。びくりと反応が良く、ゆっくりと首筋にも刺激を与える。
ユリアは小さく震えながら、赤い唇を必死で動かした。
「あ……ご主人、様……だめです。久しぶり、だから……」
少し触れただけで反応してしまい、声が漏れてしまうのが恥ずかしい。逃れようとするのをヘルマンは許さなかった。
「久しぶりにしたのは、君の希望だろう」
腰を掴んだまま首筋をゆっくりと舌で味わい、時折吸い付く。そのたびにユリアは熱い息の混じった声を漏らした。
「あ、ふ……だ、って、仕事の日は……」
仕事の前の日に抱きつぶされ、腰をさすりながら出勤した時は、歩き方がどうしてもおかしかった。フェルナンドの痛ましいような、同情されたような視線もつらかった。
なので、仕事の前日は基本的には一緒に寝ないようにしていた。くっついて寝るとどうしてもその先に進みたくなるので、寝室も別にすることがあるほどだ。
ヘルマン自身もここ最近はルイスの調査に付き合って忙しいこともあり許容していたが、やはり不満だった。
寝るのは一緒でないといけないと今日改めて思い直した。
「ユリア。もうここをこんなにしているのに。これからも耐えられるのか?」
ユリアは両手で口を押えながら必死で頷いた。
望んでヘルマンの意に従ってきた。なし崩しにたくさんのことをしてきたこともあるが、これだけは譲ってしまうと、仕事にならないと思う。
ヘルマンは笑った。
「では、耐えてみるといい」
ヘルマンの手がユリアの下着を下した。
久しぶりの刺激を期待して、それはもう勃ち上がりかけていた。ヘルマンがやんわりとそこを握ると、一気に脈打つ。
「ううっ、ん……」
いつもよりゆっくりと動かされているようで、もどかしくてユリアは自分から動こうとした、その時。
パチン、と音がして、急な締め付けに、ユリアはぎょっとして自分の勃ち上がった前を見下ろした。
「ご、ご主人様。これ……」
勃ち上がったその根元に、黒いバンドの様なものが巻かれている。
「耐えられるよう、手伝ってやる」
「い、ぃたい、です、ご主人様」
敏感なそこにそんなものをまかれ、恐怖でユリアは声が震えた。
恐る恐るヘルマンを見れば、青い瞳が欲情をたたえながらすっと細められた。
「締めているというのに、ユリア。もうここを濡らして……」
「ああぁっ……!」
つつ、とヘルマンの指が上下に撫でるように動き、ユリアは声を上げた。
その声も許さないようにヘルマンの口でふさがれる。深い口づけを交わし、貪るように口内を責められながら、ヘルマンの指が後孔へ侵入した。
そこはすでに待っていたかのように濡れて指を迎え入れる。ヘルマンは念入りにそこをほぐした。
びくびくと身体が跳ねる。いつもならとうに達している刺激だった。それなのに前を絞められているせいで熱が逃れず、じんじんと痛みか快感かわからない刺激が続く。
何度そうして絶頂なのか何なのかわからないものを与えられただろうか。
息も絶え絶えて、目の前も霞む。ただすがるようにヘルマンの首に手を回し、許しを請うしかできなかった。
「ご主人様、おね、お願いします。取って……これ……も、む、りぃぃっ――ああ!」
言いながら、また強い刺激に体が跳ねる。
「ほら、精を放たなければ、何度でも達することができるだろう」
ヘルマンの優しい声が今は恐ろしく聞こえた。
ユリアは必死で首を振った。
「むり、無理です。も……っく、あ、あぁ!」
ヘルマンはもう片方の手でユリアの前も包み込み上下に動かした。ぬるぬるとしたそれは触れるか触れないかの弱さで、いつもよりずっと弱い刺激なのに、限界まではち切れそうなそこには十分すぎる気持ちよさだった。
後ろの刺激も連動するかのように押しつぶされる。
「そ、そこ、やめ……めてっ!だめ、中、だめっ……っく、――っくぅぅ」
ユリアは体を二つに折り曲げ、大きくびくりとはねた。
深く重い快感だった。
体中が性感帯になったように、ヘルマンの息がかかるだけでびくりとはねる。
「ああ、中がすっかり弱くなってしまった」
「ふっ、ふああんっ」
ヘルマンの声だけに反応してしまった。
もう、つらくて、苦しくて、ユリアはヘルマンに縋った。
「許して……も、ゆるして、くださ……ごしゅ、あ、ああああ!」
喋っている途中でヘルマンのものがユリアの中に侵入した。突然の圧迫感と強烈な快感にユリアは悲鳴を上げる。
「ほら、ちゃんと息をしなさい」
深い青の瞳に見つめられ、ユリアは無意識に後ろを締め付けてしまう。
ヘルマンは少し耐えるように笑ってからユリアの髪を撫でた。
「――いい子だ」
そういってまた唇を塞がれる。
後孔を穿ちながら口を塞がれると、苦しさで頭まで犯されているようになる。
全身が熱く、脳まで焼き切れそうで、体中を熱が駆け回っている。
「ん、んんっ、ん――っ!」
ヘルマンが抜き差しをするたびに、敏感な部分が引っかかれるようにこすれ、もうずっと絶頂の中にいるようだ。
「ほら、ちゃんと舌を動かして」
ヘルマンはまだ許してくれなかった。ひとしきり口内を舐め取ってから、ようやくユリアをベッドに横たえた。
見上げたヘルマンは少し汗ばんだ額から髪をかき上げる。
その姿が獣のようで、ユリアは恐ろしくなって身を震わせた。そんなユリアの姿を見てヘルマンの興奮は増したようだった。
「ユリア。綺麗だ」
そう言いながら動きを再開する。
今度はヘルマンが上にいるから、完全に動きを封じられたようになる。
次第に早くなる動きに合わせ、ヘルマンはユリアの前に触れた。
「やっ、も、そこ、触らな……ああっ!」
熱くて、苦しい。
ヘルマンの動きに合わせて、巨大な快感の波が襲い掛かってくるようだった。
もはや悲鳴を上げることもできず、ユリアはあまりの絶頂に一瞬意識を手放した。
首筋に歯を立てられ急速に引き戻される。それでも快感の余韻がまだ続いていて全身が動かなかった。
ヘルマンは前を絞めていたバンドを外した。
「っは、あ、な、なんで……でな……」
急激に解放され、熱を放つはずが、そこからはただだらだらと白濁がこぼれるように垂れるだけだった。
ヘルマンの動きが激しくなる。
射精の気持ちよさがだらだらといつまでも続き、ユリアは声もなく再び気を失った。
その後目が覚めて、今度は普通に愛おしむように優しくもう一度。
絞められて痛かったと文句を言えば、治すといわれ、口に咥えられて、もう一度。
もう出すものがなくなったというのに、挿入され、ゆるゆるとした刺激で延々と……。
覚えていたのはそこまでだった。
「ひどい……」
二度寝してからどれくらい時間が経ったのか。もうお昼前のようだった。
ユリアは思わずつぶやいた。声が掠れている。
すかさずヘルマンが水を渡した。
ベッドの上、ヘルマンにもたれるようにして座りながらユリアはそれを飲んだ。
「どうした?」
「ご主人様。――やりすぎです」
「つらかったか?すまない」
すまないと思っているとは思えない顔でヘルマンはユリアにキスをした。
「つらいです」
宥めるように首筋にも口づけられる。
――本当に止めたければ、名を呼ぶよう言われている。
確かに名は呼ばなかった。しかし名を呼ぶのは、ヘルマンを拒絶するようで、まだ言ったことはない。
「お腹は減ってないか」
「もう少ししてからで、いいです」
そうやってお昼まで二人でベッドの上でごろごろして過ごした。
「――首都にはルイスも行くことになった」
「え……何でですか」
ユリアの髪を梳かしながらヘルマンが言ったのへ、ユリアが思わず振り返る。
「今度の旅行先は首都だというから、同行することにした。ついでにフェルナンドについて少しパーティーにも顔を出すだろう」
「ルイスはまだ子供ですよ」
「子供を伴うティーパーティーがある」
二人で楽しくやるだろう、という。ルイスとフェルナンドで出かけることはこれまでも度々あったので不思議はないが。
「最近……ルイスがお世話になっているらしいですね」
「きいたか?」
「いえ。でも出入りしているのを見かけているので」
また前を向いたので、表情は見えない。声は少し低かった。
「――やりたいことが見つかったようだ。今やっていることがどれほど続くかはわからないが、せっかくだからさせてやればいい」
「寂しいですね。――僕には何も言ってくれない」
「そのうち話すだろう。君は親替わりだから。とても近い存在だからな」
そう言われて、寂しさが少し和らぐ。
ユリアはヘルマンに体重を預けた。
「すっかり甘えてしまって……すみません」
「私にもルイスを育てる楽しみを分けてくれ」
ちゅ、とユリアの頬に口づけてヘルマンは優しい笑みを見せた。
そうやって負担のない言い方をしてくれる。
ルイスが何をしているのかはわからないが、ヘルマンが見守ってくれているというなら安心だ。
ルイスは平民ではあるけれど、フェルナンドは以前から色んな所へ連れて行きたがっていた。
それにようやく乗っかる気になったのだろうか。
「今年のタウンハウスは、にぎやかになりますかね」
「そうだな」
首都にルイスも行くなら、一緒に行きたいところがたくさんある。
ユリアは少し楽しみになった。
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