元悪役令嬢のハンバーガー無双!~断罪からの大逆転!前世知識チートで、私を陥れた連中をまとめてざまぁしてやります!~

緋村ルナ

文字の大きさ
9 / 17

第8章:後悔の王子、決別の王女

しおりを挟む
 貴族会議での一件は、瞬く間に王都中の噂となった。
『追放された公爵令嬢、伝説の店の創業者として凱旋!』
『たった一つの料理で、頑固な貴族たちを黙らせた女傑!』
 私の名は、もはや「悪役令嬢」としてではなく、「革命家」として人々の口にのぼるようになった。

 この勢いを逃す手はない。私はすぐさま次の手を打った。王都の一等地に土地を買い取り、『カロル・バーガーズ 王都本店』の建設に着手したのだ。カロルの森の1号店をさらに洗練させた、三階建ての壮麗な店舗。完成前から、王都の人々の期待は最高潮に達していた。

 そして、グランドオープンの日。
 店は開店と同時に、かつてないほどの客で溢れかえった。人々は列をなし、私の作る新しい味に熱狂した。その喧騒を、店の二階にある私のオフィスから眺めていると、不意にドアがノックされた。

「レティシアさん、お客様が……その、あなたに会いたいと」

 入ってきたミリィの表情は、どこか困惑している。いぶかしく思いながら「通してちょうだい」と告げると、入ってきた人物を見て、私はわずかに眉をひそめた。

 そこに立っていたのは、私の元夫――王太子のクラヴィス殿下だった。
 やつれた、という表現がしっくりくる。かつての自信に満ちた輝きは失せ、目の下には隈が浮かんでいた。

「……レティシア」

 か細い声で、彼は私の名を呼んだ。私は表情を変えず、椅子に座ったまま応じる。

「クラヴィス殿下。このような平民の店に、一体どのようなご用件でしょうか」
「……やめてくれ。そんな他人行儀な呼び方は」
「では、元夫殿、とお呼びすればよろしいかしら?」

 私の冷たい態度に、クラヴィスは苦痛に顔を歪めた。彼はゆっくりと私に歩み寄り、テーブルの前に立つ。

「君の噂は聞いている。貴族会議でのことも……。君が、これほどのことを成し遂げるとは、思ってもみなかった」
「そうですか。それは、あなたが私のことなど、何も見ていなかったというだけの話ですわ」
「……その通りだ。私は、愚かだった」

 クラヴィスは、堰を切ったように話し始めた。私が追放された後、全てがうまくいかなくなったこと。私が言っていた通り、国庫の管理はずさんになり、義母である王妃とその一派が好き放題に私腹を肥やしていること。そして、彼が私の代わりに選んだあの平民の少女が、王妃教育から逃げ出してばかりで、全く妃としての役目を果たせていないこと。

「私は、君という存在がいかに大きかったか、いなくなって初めて気づいたんだ。君の的確な助言、国を思う心……その全てを、私は踏みにじった。すまなかった、レティシア。本当に、すまなかった」

 彼は、深く、深く頭を下げた。王太子が、平民に身を落とした元妻に。
 だが、私の心は少しも動かなかった。

「謝罪は受け取りましょう。ですが、それだけです。過去は変わりません」
「……頼む、レティシア。王宮に戻ってきてくれ。もう一度、私の妃として、この国を支えてはくれないか。君が必要なんだ!」

 必死の形相で、彼は私に手を伸ばそうとする。
 私は静かに立ち上がり、窓の外に広がる賑やかな街並みを指さした。店の前には、私のハンバーガーを求めて、たくさんの人々が笑顔で列をなしている。

「ご覧になって。あれが、今の私の全てです」

 私はクラヴィスに向き直り、きっぱりと言い放った。

「今の私にふさわしいのは、王妃の座ではありません。この鉄板と、焼きたてのハンバーガーと、そして、私を信じてくれる仲間たちと共に作る、新しい未来です」
「レティシア……」
「お帰りください、殿下。あなたの後悔に付き合っているほど、私は暇ではないのです」

 私の言葉に、クラヴィスは膝から崩れ落ちた。
「そんな……頼む、考え直してくれ……!」
 彼は床に膝をつき、私に懇願した。王国の次期国王たる者が、一人の女性の前で、みっともなく泣き崩れている。

 そして、その光景は、偶然にも階下へ向かう客たちによって目撃されてしまった。
 王太子が、追放した元妻にひざまずいて復縁を迫り、無様に振られる。
 この衝撃的なニュースは、王都本店の大成功という話題と相まって、燎原の火のごとく国中に広まった。

 王室の威信は、地に落ちた。
 民衆の心は、もはや国王や王太子ではなく、自らの手で未来を切り開く一人の女性――レティシア・アルディナ・グレイスに向けられ始めていた。それは、王室の求心力が、決定的に揺らいだ瞬間だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令嬢、放浪先で最強公爵に溺愛される

鍛高譚
恋愛
「スカーレット・ヨーク、お前との婚約は破棄する!」 王太子アルバートの突然の宣言により、伯爵令嬢スカーレットの人生は一変した。 すべては“聖女”を名乗る平民アメリアの企み。でっち上げられた罪で糾弾され、名誉を失い、実家からも追放されてしまう。 頼る宛もなく王都をさまよった彼女は、行き倒れ寸前のところを隣国ルーヴェル王国の公爵、ゼイン・ファーガスに救われる。 「……しばらく俺のもとで休め。安全は保証する」 冷徹な印象とは裏腹に、ゼインはスカーレットを庇護し、“形だけの婚約者”として身を守ってくれることに。 公爵家で静かな日々を過ごすうちに、スカーレットの聡明さや誇り高さは次第に評価され、彼女自身もゼインに心惹かれていく。 だがその裏で、王太子とアメリアの暴走は止まらず、スカーレットの両親までもが処刑の危機に――!

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

エアコン魔法、全自動チョコレート製造魔法、魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ

鷹 綾
恋愛
「魔法の無駄遣いだ」 そう言われて婚約を破棄され、南方の辺境へ追放された元・聖女エオリア。 けれど本人は、まったく気にしていなかった。 暑いならエアコン魔法を使えばいい。 甘いものが食べたいなら、全自動チョコレート製造魔法を組めばいい。 一つをゆっくり味わっている間に、なぜか大量にできてしまうけれど―― 余った分は、捨てずに売ればいいだけの話。 働く気はない。 評価されても困る。 世界を変えるつもりもない。 彼女が望むのは、ただひとつ。 自分が快適に、美味しいものを食べて暮らすこと。 その結果―― 勝手に広まるスイーツブーム。 静かに進む元婚約者の没落。 評価だけが上がっていく謎の現象。 それでもエオリアは今日も通常運転。 「魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ」 頑張らない。 反省しない。 成長もしない。 それでも最後まで勝ち続ける、 アルファポリス女子読者向け“怠惰ざまぁ”スイーツファンタジー。

悪役令嬢の断罪――え、いま婚約破棄と?聞こえませんでしたわ!

ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢アクア・ラズライトは、卒業パーティーの最中に婚約者であるジュリアス殿下から「悪役令嬢」として断罪を突きつけられる。普通なら泣き崩れるか激昂する場面――しかし、超合理的で節約家なアクアは違った。

そんな未来はお断り! ~未来が見える少女サブリナはこつこつ暗躍で成り上がる~

みねバイヤーン
ファンタジー
孤児の少女サブリナは、夢の中で色んな未来を見た。王子に溺愛される「ヒロイン」、逆ハーレムで嫉妬を買う「ヒドイン」、追放され惨めに生きる「悪役令嬢」。──だけど、どれもサブリナの望む未来ではなかった。「あんな未来は、イヤ、お断りよ!」望む未来を手に入れるため、サブリナは未来視を武器に孤児院の仲間を救い、没落貴族を復興し、王宮の陰謀までひっくり返す。すると、王子や貴族令嬢、国中の要人たちが次々と彼女に惹かれる事態に。「さすがにこの未来は予想外だったわ……」運命を塗り替えて、新しい未来を楽しむ異世界改革奮闘記。

君だけの呼び名

章槻雅希
ファンタジー
 カリーナは自分は王子様に愛されていると確信していた。だって、彼は私にだけ特別な呼び名をくれたから。  異世界のロシア語と同じような言語形態を持つ国であり、名前には友人や親戚が呼ぶ略称、家族・恋人・主君が呼ぶ愛称がある。更には隠されたもう一つの呼び名もあり、複雑な名前の言語形態はそれを有効活用されているのだった。  『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした

由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。 無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。 再び招かれたのは、かつて母を追放した国。 礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。 これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。

処理中です...