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第六章 真相
【四十八】戦闘(弥助)
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才蔵師匠、小太郎殿と分かれ俺と弥生は左京と姫の捜索を続けていた。お千代部隊の偵察からそろそろ二人が安倍晴明の元へと向かうという情報を手に入れ、目星をつけていた道で待機していると、下の方から籠を担いだ忍四名と護衛と思われる忍が一人、足場の悪い坂道を登ってきた。
「弥生、きっと籠の中は灘姫様だ。しかし左京の姿が見えぬな。弥生、お主は籠を追ってくれ。敵の実力が解らぬ故、俺が合流するまで手は出すなよ。」
『承知しました。弥助兄さんはどうなさるおつもりですか?』
「きっと左京は籠を追ってくる。やつを捕まえて話をつけてからすぐに追いかける故、心配するな。」
弥生に籠を追わせ、奴らが登ってきた坂道を監視していると、下の方から凄い勢いで人が登ってくる気配を感じた。これは、来たか…。
「左京…。」
人影は足を止め、辺りを見回している。背後に降り立つと左京は剣を手に威嚇してきた。
『や、弥助か?何故こんなところに…』
二人の間に沈黙が流れる…
左京には聞きたいことが山ほどあるし、左京本人の仕業ではなかったとしても城を破滅させた事は事実。完全に許すなど今は出来ない、しかしここで戦っても何の意味もないことはわかっている。先に口を開いたのは左京だった。
『弥助、お主の言いたいことはわかる。しかし今は一刻も早く姫と合流したい…俺は安倍晴明と姫を会わせるのは危険だと思っているのだ。やつはきっと、姫を殺す…。どうか見逃してくれないか?』
「俺も同じ気持ちです、今は争っている場合では無いこともわかっています。ただ、行動に出る前に、貴方の口からお聞きしたい…貴方は自分のした事を後悔していますか…?」
少しだけ考えた左京はすぐに口を開いた。
『当たり前だ、俺のしたことは絶対に許される事ではない。全てが終わったらどんな罰も受けようと思っている。』
言い訳のような言葉を並べることも無く、潔く自分の罪を認めている左京。俺は左京の光となることを決めたのだ。これ以上の事は無い、信じよう。
「そうか…わかりました。貴方を信じます。」
『ありがとう、弥助よ。それよりも時間がない故、移動しながら聞いてくれるか?奥方様が先程、佐助殿に殺されたのだ…晴明殿の耳に入る前になんとしてもこの山から離れたい、協力してくれるか?』
「え、奥方様が…?どうして…元より俺たちの狙いは左京と灘姫様を取り戻すこと。先程通った籠には姫様が乗っておられましたよね?俺と弥生が籠を襲います故、左京は姫を助け逃げる振りをして一刻も早く山を降り、水月で待っていてください。俺達もこの場を切り抜け落ち合います故。」
左京と分かれ、俺は籠の監視をしていた弥生に追いついた。左京が籠に追いついたのを確認できたところで弥生と二手に分かれ、奇襲をかけることにした。籠の両脇から一斉に籠の持ち手を狙いクナイを投げつける。
”くそっ、何奴!姿を現せ!!”
クナイが掠った忍びが籠を置き、姫を護るように警戒態勢に入った。敵は左京を合わせて六人…目元以外を覆われた忍びは、お千代殿の部下のはずだから、狙うは真ん中の四人のみ!
籠を地面に降ろされた姫様が、今度は何事かといった様子で中から出てきた。姫様に気づかれぬよう、俺と弥生は目以外を覆い顔を隠すことにした。
『姫様、今のうちにこちらへ!!』
左京が姫様を連れて茂みの方へと走っていく。姫様がこちらを見ていないのを確認して籠を挟むように弥生と降り立った。弥生は長年戦闘から離れていた故、本気で挑んでくるであろう籠を運んでいた敵忍と戦わせるわけにはいかない…
「弥生、この四人は俺が片付ける!お主はあのくノ一を頼む!!」
『承知しました!』
小刀を手に、くノ一へ立ち向かっていく弥生。弥生には文を持たせてある故、あのくノ一はうまいこと合わせてくれることだろう。
「覚悟致せ!!」
敵が踏み込むより先に動き、一番近くにいた敵忍の頸動脈を切りつけた。血飛沫が飛び散り一瞬視界を奪われそうになったがすぐに立て直し煙幕玉を籠目掛けて放った。視界を奪われようとも、俺には小太郎殿に鍛え抜かれた観察眼がある。籠の下方に隠れようとしていた一人の首裏を一突きしこれで二人目。煙幕から逃れたのか背後から気配を感じ、しゃがみこんで足を掛け転んだところで心臓を一突きした。残る一人は殺さずに安倍晴明のところへと報告に行かさなくてはならない…一番難しいところだ。
『貴様、よくも仲間を!!』
弥生と戦っていたくノ一が此方へと向かってきた。弥生は…どうやら気を失っているようだ。
『すまぬな、全く攻撃せぬ訳にもいかない故、気絶してもらった。』
クナイで攻撃しながら耳元で小さく言葉を交わす。
「最後の一人を連れて、奇襲を受け姫と左京が行方不明になった旨を安倍晴明の元へ行き報告してくれるか?」
『承知した、少し攻撃するぞ?』
『これで終わりだ!!』
しまった!このくノ一…本気で強い…
俺が怯み一歩下がったところで、生き残っていた一人が畳み掛けるように攻撃を仕掛けてきた。ここまですれば、疑われる事もないだろう…。
「くそ、一旦退却じゃ!!」
倒れていた弥生の頬を叩き目覚めさせ、左京と姫様が入っていった茂みの方へと向かった。
『曲者、待ちやがれ!!』
追いかけてこようとした敵忍に手裏剣を飛ばし威嚇した。
『やめておけ、私達が敵う相手ではない。とにかく晴明殿の所へ報告に行くのが先だ。』
敵忍とくノ一が離れて行く気配がした。
とにかく、合流場所である水月へ向かうことにしよう。
「弥生、きっと籠の中は灘姫様だ。しかし左京の姿が見えぬな。弥生、お主は籠を追ってくれ。敵の実力が解らぬ故、俺が合流するまで手は出すなよ。」
『承知しました。弥助兄さんはどうなさるおつもりですか?』
「きっと左京は籠を追ってくる。やつを捕まえて話をつけてからすぐに追いかける故、心配するな。」
弥生に籠を追わせ、奴らが登ってきた坂道を監視していると、下の方から凄い勢いで人が登ってくる気配を感じた。これは、来たか…。
「左京…。」
人影は足を止め、辺りを見回している。背後に降り立つと左京は剣を手に威嚇してきた。
『や、弥助か?何故こんなところに…』
二人の間に沈黙が流れる…
左京には聞きたいことが山ほどあるし、左京本人の仕業ではなかったとしても城を破滅させた事は事実。完全に許すなど今は出来ない、しかしここで戦っても何の意味もないことはわかっている。先に口を開いたのは左京だった。
『弥助、お主の言いたいことはわかる。しかし今は一刻も早く姫と合流したい…俺は安倍晴明と姫を会わせるのは危険だと思っているのだ。やつはきっと、姫を殺す…。どうか見逃してくれないか?』
「俺も同じ気持ちです、今は争っている場合では無いこともわかっています。ただ、行動に出る前に、貴方の口からお聞きしたい…貴方は自分のした事を後悔していますか…?」
少しだけ考えた左京はすぐに口を開いた。
『当たり前だ、俺のしたことは絶対に許される事ではない。全てが終わったらどんな罰も受けようと思っている。』
言い訳のような言葉を並べることも無く、潔く自分の罪を認めている左京。俺は左京の光となることを決めたのだ。これ以上の事は無い、信じよう。
「そうか…わかりました。貴方を信じます。」
『ありがとう、弥助よ。それよりも時間がない故、移動しながら聞いてくれるか?奥方様が先程、佐助殿に殺されたのだ…晴明殿の耳に入る前になんとしてもこの山から離れたい、協力してくれるか?』
「え、奥方様が…?どうして…元より俺たちの狙いは左京と灘姫様を取り戻すこと。先程通った籠には姫様が乗っておられましたよね?俺と弥生が籠を襲います故、左京は姫を助け逃げる振りをして一刻も早く山を降り、水月で待っていてください。俺達もこの場を切り抜け落ち合います故。」
左京と分かれ、俺は籠の監視をしていた弥生に追いついた。左京が籠に追いついたのを確認できたところで弥生と二手に分かれ、奇襲をかけることにした。籠の両脇から一斉に籠の持ち手を狙いクナイを投げつける。
”くそっ、何奴!姿を現せ!!”
クナイが掠った忍びが籠を置き、姫を護るように警戒態勢に入った。敵は左京を合わせて六人…目元以外を覆われた忍びは、お千代殿の部下のはずだから、狙うは真ん中の四人のみ!
籠を地面に降ろされた姫様が、今度は何事かといった様子で中から出てきた。姫様に気づかれぬよう、俺と弥生は目以外を覆い顔を隠すことにした。
『姫様、今のうちにこちらへ!!』
左京が姫様を連れて茂みの方へと走っていく。姫様がこちらを見ていないのを確認して籠を挟むように弥生と降り立った。弥生は長年戦闘から離れていた故、本気で挑んでくるであろう籠を運んでいた敵忍と戦わせるわけにはいかない…
「弥生、この四人は俺が片付ける!お主はあのくノ一を頼む!!」
『承知しました!』
小刀を手に、くノ一へ立ち向かっていく弥生。弥生には文を持たせてある故、あのくノ一はうまいこと合わせてくれることだろう。
「覚悟致せ!!」
敵が踏み込むより先に動き、一番近くにいた敵忍の頸動脈を切りつけた。血飛沫が飛び散り一瞬視界を奪われそうになったがすぐに立て直し煙幕玉を籠目掛けて放った。視界を奪われようとも、俺には小太郎殿に鍛え抜かれた観察眼がある。籠の下方に隠れようとしていた一人の首裏を一突きしこれで二人目。煙幕から逃れたのか背後から気配を感じ、しゃがみこんで足を掛け転んだところで心臓を一突きした。残る一人は殺さずに安倍晴明のところへと報告に行かさなくてはならない…一番難しいところだ。
『貴様、よくも仲間を!!』
弥生と戦っていたくノ一が此方へと向かってきた。弥生は…どうやら気を失っているようだ。
『すまぬな、全く攻撃せぬ訳にもいかない故、気絶してもらった。』
クナイで攻撃しながら耳元で小さく言葉を交わす。
「最後の一人を連れて、奇襲を受け姫と左京が行方不明になった旨を安倍晴明の元へ行き報告してくれるか?」
『承知した、少し攻撃するぞ?』
『これで終わりだ!!』
しまった!このくノ一…本気で強い…
俺が怯み一歩下がったところで、生き残っていた一人が畳み掛けるように攻撃を仕掛けてきた。ここまですれば、疑われる事もないだろう…。
「くそ、一旦退却じゃ!!」
倒れていた弥生の頬を叩き目覚めさせ、左京と姫様が入っていった茂みの方へと向かった。
『曲者、待ちやがれ!!』
追いかけてこようとした敵忍に手裏剣を飛ばし威嚇した。
『やめておけ、私達が敵う相手ではない。とにかく晴明殿の所へ報告に行くのが先だ。』
敵忍とくノ一が離れて行く気配がした。
とにかく、合流場所である水月へ向かうことにしよう。
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