惚れて通えば千里も一里

藤いろ

文字の大きさ
1 / 6

第1話

しおりを挟む
今日も疲れた。残業は基本でこれでも給料は足りなくて副業を割と真面目に考えなければいけない。疲れとストレス以外に何があるのかこの世の中。
そんな私、九沢九士郎(クザワ クシロウ)40歳はしがないサラリーマン。特別役職はなく、社会に入って知ったのは嘘と建前と未だに会社って昭和だなって事だけ。
特に趣味もなく、結婚してない家族もいない。何の為に生きているのか・・・・。
そんないつもの日付が変わっての帰り道。コンビニに寄って夕飯の弁当を買わなきゃ。
もうストレスでガッツリ食べたい気分。年の割に胃は強いんだよね。
コンビニに入り、そこに奇跡が!
300円で焼肉とハンバーグ、ご飯も負けない量入ってる超カロリー弁当!!
しかもラス1!これは買うしかない!!
と手に取ると、もう一つの手が。
「え??」
「あっ」
もう一つの手の持ち主と目が合う。
そこにはダボッとしたフード付きのピンクのラインが入ったジャージを着た美少年。
「あの・・・・」
美少年が言う。
「離してくれませんか、これ僕が買うんで」
え~!買うの!?全然似つかわしくない!君みたのはケーキとかタピオカとかのが似合うよ!そもそもこの量食べきれるの!?
「フッ似合わないとか食べきれるのかとか思ってるでしょう?」
心を読まれた!?
「ええ、ええよく言われますし思われますよ!でもしかし敢えてなんです!・・・・僕はね、いっぱい食べて大きく強くなりたいんですよ!!」
そ、そんなお父さんが小さい息子にいうような夢を!
こんなに綺麗なのに!
「目標はなかやまきんに君です!」
「だ、ダメだ!き、君はそのままが良い!!」
私はとっさに弁当を奪い取りとんでもない事を言っていた。
「・・・・・・」
「・・・あっあのそのどういう意味かというと!その・・・・」
「~~~~~~~また言われた!わ―――!!」
何と美少年その場で泣き出した!えっえっどうすれば良いの!?わ、私のせいか!?
「どうしました!?」
店員さんが駆けつけてくる。ヤバいヤバい!
「あっ連れがちょっと!あ、あの!これくだい!!」
大盛り弁当を買い、うずくまりグスグスしてる美少年をかかえ店を出る。
美少年はめちゃくちゃ軽かった。
美少年と弁当を持ち公園へ。
「グスグス・・・」
「あ~ご、ごめんなさい。変な事言って・・・・」
「グス・・・大丈夫です。僕の方こそすみませんでした・・・・さっきもちょっとありまして・・・・溜まってたものが一気に出てしまいました」
「あーあるよねーそういうの!ストレスの限界っていつ来るか分からないし!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙が気まずい・・・・そりゃそうだ、こんなオッサンにあんな事言われたらどうやっても気分良くなるもんじゃない。
「お詫びにこのお弁当あげるから!・・・じゃあえっと頑張って!」
はぁ~情けない・・・・こんな言い方しか出来ないなんて。無駄に年取るってこういう事なんだろうなぁ。
そんな事を想いながら立ち去ろうとした時。
「僕・・・そんなにこのままが良いんでしょうか?」
「え?」
「皆そう言うんです。僕は可愛いからとか綺麗だから筋肉つけちゃダメとか親も兄弟もクラスでも・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・君は君がやりたい事をやるべきだ」
「え?」
「さっきはあんな事言ってすまない。君は本当に誠実で真面目で優しい子なんだな。
家族友達の為に悩み、夢も持ってて芯もある。正直羨ましいくらいだよ。私には何もないから・・・・」
私は美少年の隣に座る。
「でも、君の見た目だけ気にする人の話は聞く必要はない。君はこんなに心痛めてるんだから。好きな事をするべきだ!周りが何か言ってきても私が味方するよ!オッサン一人じゃ何の戦力にもならないかもだけど、ハハッ」
「~~~~~!あ、ありが、ありがとうございます!!うわ~~~ん!!!」
「え~!?ど、どうしたの!?」
さっきよりすごい涙!大口開けてめっちゃ泣いてる!
「今まで皆見た目ばっかで!グスッ誰も僕の気持ちの事なんて気にしてくれなかったから~~!」
本当に溜まりに溜まってたんだな・・・・。今の子は私の時代より人間関係が複雑らしいからなぁ。それで自分のしたい事まで否定されたら辛いよな。私の時と全然違うんだなぁ。
「うわ~~~~ん!!!」
「・・・・少し控えようかぁ~もう夜中だし~」
「うわ~~~~ん、おじさん~~~!!」
「は、え、わ、私!?」
「好き~~~~~!!!」
「え!?なんて!?」
「大好き~~~~~!!!」
「何で!?どういう意味!?」
「恋的な意味~~~~!!!」
「・・・・・ハァ!?」
思った。今の子は本当に私の時と全然違う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

初恋ミントラヴァーズ

卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。 飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。 ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。 眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。 知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。 藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。 でも想いは勝手に加速して……。 彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。 果たしてふたりは、恋人になれるのか――? /金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/ じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。 集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。 ◆毎日2回更新。11時と20時◆

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

可愛いがすぎる

たかさき
BL
会長×会計(平凡)。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...