少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ

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「ユリ兄ー!次はこの話聞かせて!」

「よし、次は聖騎士様の話だな」

翌日、俺は街に子供達を集めて勉強会を開いていた。

朝早くに、父さんの仕事の畑仕事を手伝った。
いろんな野菜を育てているらしく、昨日収穫したから実になるのはもう少し先らしい。
水の魔術で野菜に水を与えて、畑仕事は終わり父さんは立派に出来た野菜を売りに行った。

俺は皆が起きる時間まで家にいて、昼くらいになって仕事を探しに行った。
俺の仕事は人がいないと出来ないから、人が多い時間帯にしか出来ない。

なにか困っている人がいないか見て回ると、子供が意外と多い事に驚いた。
小さな子供から学校に行っていても可笑しくない年齢の子までいた。

貧困街には当然学校はないし、この街から出られないなら学校に通えない。
じゃあ誰か教えてくれる人がいるのかな、近くにいるのはお母さん達だろうか。

「あの、ちょっといいですか?」

「はい?」

子供達が何処で学んでいるのか気になって聞くと普通に答えてくれた。
これが普通の街だったら不審人物を見るような目を向けられるだろう。

それほど同じ貧民同士で信頼関係があるって事なのかな。

俺が初めてここにきた時にリラに助けられたところを見ていたらしく、それも信頼される要素だったのかもしれない。

俺は学校に通っていたから勉強を教えてあげたいなと思った。
これは仕事ではなく、俺のボランティアでやりたいんだ。

お母さん達はここにいる人達は貧困街で育った人が多いから、学校に通っている人が少ない。
勉強を教えてくれる人がいないらしくて、是非と喜んでいた。

そして、俺が学んだ事を子供達を集めて教えてあげた。

聖騎士の話はさすがに貧困街にも本があるらしく知っている。
でもイヴの容姿もイヴがパレードで起こした英雄の話も知らない。
だから、教えた…イヴは美しくかっこよくて強くて優しいのだと…

子供達がキラキラと目を輝かせて聞いていて、カンカンと陶器を叩く音が聞こえた。
この音が、朝と夕方と夜を知らせる貧困街に必要な音なんだ。
空が見えないこの街ならではのやり方で、本当のところはどうなのか分からないがズレていても夕方の音が鳴ったら夕方だ。

「じゃあ今日はここまで」

「ありがとう!ユリ兄!」

「ありがとう!」

子供達がキャッキャとお母さん達のところに走っていく。
俺の名前は長いらしく真ん中がなくなりユリ兄と言われている。

初めてそんな呼び方をされて、驚いたが嬉しかった。

お母さん達はお礼の気持ちだと俺にお金を見せた。
今日はそんなつもりではなかったから返そうと思ったが、お母さん達は「気持ちだからいいのよ」と言われた。

気持ちがこもっていたら、返すのは失礼だと思い触れたら電流が発動するから、慎重に触れないギリギリのラインでありがたくお金を受け取った。
5人くらいの子供が集まっていたから、ワンコインでもかなりの値段になった。

これでまた借金返済に近付けたかな、早く家に帰ろう。

「よっ、ユー……いだだだ!!!」

「うわっ、リラ!?」

またリラが俺に触れて、電流で地面に倒れてしまった。

「大丈夫?」と声を掛けると、親指を立てて起き上った。
なんか、電流を浴びるのを楽しんでいるみたいに感じるんだけど気のせい。

リラはニッと笑って今日の仕事の事を聞いてきた。
昨日はリラのおかげで仕事が出来たが、今日は俺一人で頑張れた事を話した。
ボランティアのつもりだったけど、お金を貰ったら仕事だよな。

それを話したらリラは呆れたようなため息を吐いていた。

「あのなぁユーリ、この街の人達が怖いのはタダなんだよ…タダほど怖いものはないんだから貰わないとダメだ!…昨日の奴はちょっと図々しかったけどな」

リラはそう言って、俺の肩に触れようとしたからその前に避けた。
笑いながら立ち上がり、俺に手を振って歩き出そうとした。

その瞬間、誰かが街中に聞こえるほどの大きな声で「騎士様がお見えになりました!」と叫んでいた。
この貧困街に騎士?隔離されているから騎士に見放されていると思っていた。
リラを見ると、何故かリラは顔を引き攣らせていた。

賑やかだった街は静まり、街の人達は左右に体を寄せて道を開けていた。
俺もリラに電流に耐えながら腕を引かれて、端に寄せられた。

小さな声でリラに謝ると、しばらく痺れて腕の感触がないと言っていた。

「元気にしてた?皆」

明るい声が聞こえて、数人の足音が響いていて騎士の姿が見えた。
あれは騎士副団長のマティアスだ、漫画にも出てきたから覚えている。

マティアスとイヴは仲は良くはないがお互いの背中を預けるほどには信頼している。
マティアスに恋人がいて、イヴのライバルではなくエマの良き恋愛相談相手だった。
明るくて兄貴肌な仲間ポジションで、好感を持てるキャラだった。

貧困街に出入りしているのか、それは知らなかったな。
貧民には偏見がないキャラだったから、大丈夫だと思うけど…なんで周りの人達はこんなに顔色が悪いんだろう。

隣にいるリラも肩を震わせて怯えていた、もしかして双子がいるとか?

「…あれって」

「騎士副団長のマティアス様だ」

「やっぱり、でもなんで皆怯えて…」

「目を合わせるな、ターゲットにされる」
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