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イヴ視点9
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俺だけがその微かな変化に気付いて、胸に触れた。
心臓の鼓動を感じる、生きているのにまるで死んでいるようだ。
大きな黒い魔物が居なくなったら、人を襲っていた小さな黒い魔物も消滅した。
まるで魔物だけが、そこに存在していなかったかのようだ。
何故消えたか分からないが、ユーリの体温が戻ってきて嬉しかった。
俺の腕の中で眠るユーリを優しく包み込むように抱きしめる。
顔色も戻り、スースーと可愛らしい寝息が聞こえる。
まさか、こんな時に間近で寝顔が見れるとは思わなかった。
触れる事も、もっと別のタイミングが良かった。
雰囲気は大切だが、こうして傍にユーリがいる事は変わらない。
頬に触れて、愛しげにユーリの名を口にすると少しだけ反応した。
小さな言葉ではない寝ぼけたような声でも、俺にとっては特別だ。
もう一度ユーリの名を呼ぼうと思ったら、突然周りの歓声に邪魔をされた。
今のこの状況を、綺麗さっぱり忘れていた。
周りは俺を帝国を救った英雄だと盛り上がっていた。
俺の肩に触れる騎士団の男が誰よりも鬱陶しい。
皆で勝利の喜びを分かち合いたいんだろうという事は分かる。
そんな事より、せっかくユーリに触れられたんだから二人っきりにさせてくれ。
勝利が嬉しいなら、勝手にやってくれ…俺を巻き込むな。
もう少し、この温もりを感じたかったがそうもいかなくなった。
俺のところにユーリの友人達とユーリの母親がやって来た。
泣きそうな顔で頭を下げられて、俺も無意識に頭を下げていた。
「聖騎士様!息子を助けていただきありがとうございます!」
「……いや、それは」
「なんてお礼をしたらいいか…」
お礼なんていい、俺がしたいからそうしただけだ。
お礼を言うのは俺の方だ、ユーリと出会わせてくれてありがとう。
それを口にするのは変だろうか、やっぱり確実にユーリを俺のものにしてからだ。
それなら何の不思議もない筈だ、挨拶しに行くのは当然だ。
後の事は自分達でやるとユーリを奪われてしまった。
手の温もりが俺から離れていくのに、ぽっかりと大きな穴が開く。
これが全く知らない他人だったら、どんな手段でも奪い返す。
でも、目の前にいるのはユーリを大切に育ててくれた家族。
ユーリを奪われてもこの人には何も言えない。
今は、悔しいけど俺より家族が傍にいた方がユーリは安心だろう。
ユーリに付き添いたいが、ユーリを見送っていたらグレイグがやって来た。
「イヴ様!ご無事ですか!?」
「……」
ユーリと別れるのは名残惜しいが、グレイグと一緒に歩き出した。
人々の盛り上がる声に眉を寄せながら、城に戻った。
待っていたのか、俺を見るなりエマ様が駆け寄ってきた。
どうにかしてほしくてグレイグを見るが、温かい目で見ていてどうしようもない。
騎士の仕事に王族のお守りも含まれていただろうか。
今日はユーリに会えないならゆっくりと休みたい。
ユーリにこんな情けない顔は見せられない。
グレイグは俺の疲労にやっと気付いたのか、エマ様を離れさせてくれた。
この日から、俺は聖騎士だけではなく帝国の英雄になり本当の意味の唯一無二となった。
今までは聖騎士と呼ばれていたが、公に力を見せた事はなかった。
元々見せるつもりはなかったが、より聖騎士に対しての憧れが強くなった。
目立つのは嫌だが、後悔しているわけではない。
ユーリを守った、その事実は絶対に変わらない。
俺の銅像を広場に立てるとか言っていて、それだけは全力で拒絶した。
俺は英雄だとか言われても、これ以上目立つ事には反対だ。
さすがにそれは恥ずかしい、ユーリにしか俺という存在を見せたくないのに…
騎士団の中には国民に対して威張ったりする奴がいる。
元々貴族出身の騎士が多いから、その延長だろう。
何を勘違いしているのか、騎士団は国を守るために命を差し出す存在……影の存在なのによく威張れるな。
そんなに威張りたいなら帝王になればいい、エマ様は一人娘だから結婚したら帝王になれるだろう。
エマ様と結婚するのは騎士でもいいみたいだし。
帝王は何故か俺を気に入り、エマ様と結婚させたがっている。
聖騎士だからそうしないといけないというなら、今すぐにでもやめてやる。
散々心に決めた人がいると言っているのに、まだ独り身だからとしつこい。
独り身の騎士なんて同じ歳なら腐るほどいる。
エマ様だって選ぶ権利があるだろ、俺にだってある筈だ。
幼少期からエマ様の騎士として護衛をしていたのが理由だろうか、今すぐにでもやりたい奴に譲る。
でも、ユーリは強くてカッコいい俺が好きだから…やっぱり最後まで責任を持った方がもっとユーリに好きになってもらえるかもしれない。
だから俺は続けている、エマ様の護衛も聖騎士として人前に出る事も…ユーリのためなら苦ではない。
ユーリは病院に行ってすぐに元気になったようで、元気に走り回っていた。
良かった、ユーリが無事で…でもやっぱりユーリと離れるのは危険すぎる。
俺が守らないと、ユーリを…やはり離れるべきではない。
ユーリはまだ16歳、子供だ…もっと大人にならないといけない。
大丈夫、もう10年以上ユーリを毎日想っている。
数年くらい、我慢出来る…瞳に映さなくても俺とユーリの心はいつも寄り添っているよ。
城のバルコニーから街の全体を見渡せる、ユーリが住んでいる平民街を見つめて微笑む。
「聖騎士様!!」
下から俺を呼ぶ声が聞こえて、目線を下に向けると城に届け物をしている商人が手を振っている。
無視も出来るが、聖騎士の評判を下げるとユーリもガッカリするかもしれない。
軽く手を振ると、商人が嬉しそうにしていた。
これのなにがいいのか分からない、ため息を吐いて…もうバルコニーに出るのはやめようと思って部屋に戻った。
それにしても、黒い魔物は何故突然普通の人にも見えるようになったのか…ユーリに関係ない事なら特に気にする事はないが…また魔物を見てパニックになったら面倒だ。
心臓の鼓動を感じる、生きているのにまるで死んでいるようだ。
大きな黒い魔物が居なくなったら、人を襲っていた小さな黒い魔物も消滅した。
まるで魔物だけが、そこに存在していなかったかのようだ。
何故消えたか分からないが、ユーリの体温が戻ってきて嬉しかった。
俺の腕の中で眠るユーリを優しく包み込むように抱きしめる。
顔色も戻り、スースーと可愛らしい寝息が聞こえる。
まさか、こんな時に間近で寝顔が見れるとは思わなかった。
触れる事も、もっと別のタイミングが良かった。
雰囲気は大切だが、こうして傍にユーリがいる事は変わらない。
頬に触れて、愛しげにユーリの名を口にすると少しだけ反応した。
小さな言葉ではない寝ぼけたような声でも、俺にとっては特別だ。
もう一度ユーリの名を呼ぼうと思ったら、突然周りの歓声に邪魔をされた。
今のこの状況を、綺麗さっぱり忘れていた。
周りは俺を帝国を救った英雄だと盛り上がっていた。
俺の肩に触れる騎士団の男が誰よりも鬱陶しい。
皆で勝利の喜びを分かち合いたいんだろうという事は分かる。
そんな事より、せっかくユーリに触れられたんだから二人っきりにさせてくれ。
勝利が嬉しいなら、勝手にやってくれ…俺を巻き込むな。
もう少し、この温もりを感じたかったがそうもいかなくなった。
俺のところにユーリの友人達とユーリの母親がやって来た。
泣きそうな顔で頭を下げられて、俺も無意識に頭を下げていた。
「聖騎士様!息子を助けていただきありがとうございます!」
「……いや、それは」
「なんてお礼をしたらいいか…」
お礼なんていい、俺がしたいからそうしただけだ。
お礼を言うのは俺の方だ、ユーリと出会わせてくれてありがとう。
それを口にするのは変だろうか、やっぱり確実にユーリを俺のものにしてからだ。
それなら何の不思議もない筈だ、挨拶しに行くのは当然だ。
後の事は自分達でやるとユーリを奪われてしまった。
手の温もりが俺から離れていくのに、ぽっかりと大きな穴が開く。
これが全く知らない他人だったら、どんな手段でも奪い返す。
でも、目の前にいるのはユーリを大切に育ててくれた家族。
ユーリを奪われてもこの人には何も言えない。
今は、悔しいけど俺より家族が傍にいた方がユーリは安心だろう。
ユーリに付き添いたいが、ユーリを見送っていたらグレイグがやって来た。
「イヴ様!ご無事ですか!?」
「……」
ユーリと別れるのは名残惜しいが、グレイグと一緒に歩き出した。
人々の盛り上がる声に眉を寄せながら、城に戻った。
待っていたのか、俺を見るなりエマ様が駆け寄ってきた。
どうにかしてほしくてグレイグを見るが、温かい目で見ていてどうしようもない。
騎士の仕事に王族のお守りも含まれていただろうか。
今日はユーリに会えないならゆっくりと休みたい。
ユーリにこんな情けない顔は見せられない。
グレイグは俺の疲労にやっと気付いたのか、エマ様を離れさせてくれた。
この日から、俺は聖騎士だけではなく帝国の英雄になり本当の意味の唯一無二となった。
今までは聖騎士と呼ばれていたが、公に力を見せた事はなかった。
元々見せるつもりはなかったが、より聖騎士に対しての憧れが強くなった。
目立つのは嫌だが、後悔しているわけではない。
ユーリを守った、その事実は絶対に変わらない。
俺の銅像を広場に立てるとか言っていて、それだけは全力で拒絶した。
俺は英雄だとか言われても、これ以上目立つ事には反対だ。
さすがにそれは恥ずかしい、ユーリにしか俺という存在を見せたくないのに…
騎士団の中には国民に対して威張ったりする奴がいる。
元々貴族出身の騎士が多いから、その延長だろう。
何を勘違いしているのか、騎士団は国を守るために命を差し出す存在……影の存在なのによく威張れるな。
そんなに威張りたいなら帝王になればいい、エマ様は一人娘だから結婚したら帝王になれるだろう。
エマ様と結婚するのは騎士でもいいみたいだし。
帝王は何故か俺を気に入り、エマ様と結婚させたがっている。
聖騎士だからそうしないといけないというなら、今すぐにでもやめてやる。
散々心に決めた人がいると言っているのに、まだ独り身だからとしつこい。
独り身の騎士なんて同じ歳なら腐るほどいる。
エマ様だって選ぶ権利があるだろ、俺にだってある筈だ。
幼少期からエマ様の騎士として護衛をしていたのが理由だろうか、今すぐにでもやりたい奴に譲る。
でも、ユーリは強くてカッコいい俺が好きだから…やっぱり最後まで責任を持った方がもっとユーリに好きになってもらえるかもしれない。
だから俺は続けている、エマ様の護衛も聖騎士として人前に出る事も…ユーリのためなら苦ではない。
ユーリは病院に行ってすぐに元気になったようで、元気に走り回っていた。
良かった、ユーリが無事で…でもやっぱりユーリと離れるのは危険すぎる。
俺が守らないと、ユーリを…やはり離れるべきではない。
ユーリはまだ16歳、子供だ…もっと大人にならないといけない。
大丈夫、もう10年以上ユーリを毎日想っている。
数年くらい、我慢出来る…瞳に映さなくても俺とユーリの心はいつも寄り添っているよ。
城のバルコニーから街の全体を見渡せる、ユーリが住んでいる平民街を見つめて微笑む。
「聖騎士様!!」
下から俺を呼ぶ声が聞こえて、目線を下に向けると城に届け物をしている商人が手を振っている。
無視も出来るが、聖騎士の評判を下げるとユーリもガッカリするかもしれない。
軽く手を振ると、商人が嬉しそうにしていた。
これのなにがいいのか分からない、ため息を吐いて…もうバルコニーに出るのはやめようと思って部屋に戻った。
それにしても、黒い魔物は何故突然普通の人にも見えるようになったのか…ユーリに関係ない事なら特に気にする事はないが…また魔物を見てパニックになったら面倒だ。
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