少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ

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黒い部屋

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「ユーリ、愛してる」

「…俺も、好き…だけど」

「なにか問題でもある?」

「問題というわけじゃ」

「……うそはいけないよ」

さっきは何故かとっさに頷いてしまったが、本当にこんなにあっさりでいいのだろうか。
告白なんてした事もされた事もないけど、ムードというものがあるのではないのか?

俺は改めてやり直そうと思ってイヴの方を見ると、イヴは全く笑っていなかった。
さっきまで笑っていたのに、どうかしたのかと背筋が冷たくなる。

首に触れられて、喉仏を触られる。
俺が唾を飲むとイヴにも指先から伝わってくる。

イヴは小さく呟いた。

「うそをつくわるいこは俺がしつけてあげる」

そう言ってイヴは俺の喉を噛んだ。
本気ではなく甘噛みだけど、噛み殺される気がして固まった。

イヴが怒ってる、そう本能が警報を鳴らしている。
俺は「愛しています」と言うしかなかった。

それは脅されて言ったのか、それとも本心なのか分からなくなってきた。
イヴは言わされている言葉で満足なのか……俺の意思はいらないの?

それって、二人で恋をしてるって言えるのか?

「ユーリ、一緒に寝る前に…一緒にお風呂入ろう」

「俺、用事があって」

「用事?夜は外出禁止だよ、昼でも堪えられないのに」

「違うって、家族に…」

イヴの本音が少し漏れていたが、家族に手紙を書くだけだと言った。
それだけならイヴは怒らないだろうと思っていたが、イヴの顔つきが変わった。

家族って、イヴに会わせた事がない…と思ったがパレードの時に俺の知らない間に会ったんだと母さんから聞いた。
もしかしてなにか失礼な事をしてしまったのか?

イヴの嫌な事が分からないから無意識にやってしまったのかもしれない。
イヴは俺の腕を掴んで、近くの部屋に押し込んだ。

狭い部屋で、なにがあるのか暗くて分からなかったが床が冷たかった。
扉から差し込む光で一瞬だけ見えたが、その部屋にゾッとした。

イヴは後ろで扉を閉めてこの部屋に俺とイヴしかいなかった。

真っ黒なベッドが一つあり、拘束具がベッドに取り付けられたものだった。

「い、イヴさん…この部屋って」

「あぁ、ユーリには使わないよ…ユーリはこれで充分だからね」

話が微妙に噛み合わないが、イヴは暗闇の中でも真っ赤に染まる瞳が目立っていた。
この瞳になったイヴはヤバい、今までの経験からして嫌な予感しかしない。

イヴが近付いてくるから俺は奥に逃げる事しか出来ないが、ベッドの上には上がらないように警戒していた。

手探りでベッドの場所を探していたら、冷たいなにかに触れた。

ベッドがある筈の場所には無数の瞳がギョロりと俺の方を見ていた。
魔法がある世界で何を言ってるんだとバカにされるかもしれないが幽霊とかそんなのは信じていない。
でも実際に見えるとそれはまた別の話だ。

イヴが怖かったが、目玉の方が何倍も怖い!
イヴのところに行こうと思ったら、腕が冷たいなにかに掴まれた。

「ひぃっ!!」

「ユーリ、俺を盾にして」

「え…?」

腕を掴んだのはイヴで、俺を自分の後ろに引っ張った。
盾って何の事だ?暗くてよく見えないがイヴは見えているのか?

狭い部屋でも照らせるほど明るい炎は出せないが、自分の足元くらいは見える。

両手に力を込めると、炎の魔術が塊になり球体に変化した。
俺の真っ暗で見えなかった室内がだんだん見えてきた。

部屋が全体的に黒かったのを入った時に見ていた。
壁も床も全て黒い部屋、だからなにかの模様のように黒い床にさらに黒いシミはなかった。
壁を見ると、壁にもシミが付いていて…少しではなくペンキをぶっ掛けたように広範囲のシミだった。

いつの間にこんなのが出来たのか、ずっと俺の前に立っていて動かない。
イヴの腕を掴むと、肌ではなく服が冷たくなっていた。
まるで水に掛かったように、ヌルッとしたなにかが手に付着した。

それを確認しようと手に灯りを近付けた。

「ユーリ」

「えっ、な、んですか?」

「先に部屋を出てて」

「でも…」

「ユーリにこの姿は見せたくない」

イヴの様子が変だったから不安だったが、俺はイヴの言う通り部屋を出た。
明るい場所で手のひらを見ると、震えが止まらなくなった。

俺の手には真っ赤な血がべったり付いていた。
イヴは怪我をしているのか、分からず部屋に戻ろうとしたが扉が開かない。

あの目玉はいったいなんだったんだろう。

少ししたら、イヴが部屋から出てきた。
全身ずぶ濡れのイヴはなにがあったのか聞けない雰囲気だった。
前髪を掻き上げる姿はかっこいいが、そういう事ではない。

「イヴさん、さっきの目玉は…」

「気付かれたみたいだね、もっとユーリを隠さないと」

「……へ?」

「ユーリ、家族のところにどうしても行きたいなら俺も一緒に行く」

「家族のところに行くんじゃなくて、手紙を書くんです!」

「…………そうなのか?」

イヴは不穏な事を言っていた気がしなくもないが、一緒に行くと言っていた。
もしかして、家族のところに帰るから住み込みをやめるって言うと思って勘違いしてる?

手紙を書くだけだ、俺が住み込みをすると言ったのはそもそも実家に帰りたくないからだ。

イヴに事情を話すとイヴは「本当に帰らない?ユーリの家はここだよ」と念を押された。

俺が頷くと、安心したのかイヴは怖い顔から柔らかい表情に戻った。

イヴの腕に触れた時、俺の手に血がついていたが腕を見ても何処にも血はなかった。
もう一度腕に触れようと伸ばしたが、イヴは一歩引いた。

「だめだよ、穢れる」

「イヴさん、さっき部屋にいたのって」

「ユーリ」

俺の口に人差し指を当てて、言葉を遮った。

部屋にいたなにかは考えてはいけない…そういう事なのだろう。
この部屋には二度と近付きたくないが、他の部屋にも同じのがいたらと思うと顔を青ざめた。

イヴは俺の頬を撫でて「もう何処にもいないから大丈夫、ユーリの嫌なものは俺が全て見せないから」と笑っていた。

イヴの言葉の真意は分からないが、あれはもうこの家にいないって事なのか?
だったら安心だけど、あれは俺が見た黒いものに似ていたけど…そうなのかな。

「ごめん、先に俺が風呂に入るから部屋で待ってて」

「は、い…分かりました」

イヴは濡れた体を洗うために風呂に向かって歩いていった。
なんで濡れているのか聞きたかったが、イヴが歩いた足元を見ると床の真っ赤な絨毯は変色していなかった。
そうなると、イヴの水の魔術で濡れた事になる。

水の魔術はレベルが高ければ高いほど、濡らしたい…攻撃したい相手にのみ水の魔術をぶつける事が出来る。
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