少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ

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魔術学園

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その言葉はあっさりしていて、言った俺の方が呆然としていた。
イヴは微笑んでいたが俺はその瞳に映っているのだろうか。

イヴに服を着せて、やっとの事で脱衣所を出た。
俺は朝食を作るために、エプロンをして厨房に立っていた。

昨日のようにイヴはカウンターの向こう側から俺を見つめていた。
昨日とは違うのは、俺達の周りにある空気だけだ。
風呂場の事があり、妙にイヴが気になってしまい…チラッと一瞬だけ見るとイヴがジッと俺を見ていて、目を逸らすの繰り返しだった。

包丁を切る音だけが、俺達の気まずい空気を和らげていた。

「ユーリ、今日は早く帰ってくるから」

「忙しくないんですか?」

「んー、皆俺を頼るけど…ユーリが待ってくれる家の方が大事だから」

それっていいのだろうか、聖騎士じゃないと出来ない仕事はあると思うし…

イヴの手が伸びてきて、俺の包丁を掴む手を握った。

びっくりして包丁から手を離してイヴの方を見た。

イヴは嬉しそうに「やっとまともにこっちを見てくれた」と俺の手を撫でていた。

イヴには気まずいという言葉はないらしい。

朝食を食べ終わり、イヴを玄関まで見送った。
イヴは「誰かが訪ねても絶対に出ないでね」と言っていた。
イヴに用があっても訪問者と会話一つしてはいけないらしい。

頷いて、イヴが手を振って家を出て…俺は洗濯でもしようかと後ろ振り返った。

誰かが訪ねてくるという話だったら正直困っていた。
誰の訪問者も対応しなくていいなら、俺が家にいなくても大丈夫だ。
治安がいい場所だし、セキュリティーも万全だから泥棒の心配はない。

今朝脱いだ服が脱衣所にまだあるから、脱衣所に向かって服をカゴに入れて運ぶ。
脱衣所のとなりにランドリーがあったから、隣の扉を開いた。

俺は20歳だが、まだ学生だ…イヴみたいに成績が良くて20歳で卒業出来るわけもなく、普通の学生だ。
来年卒業試験があるから、住んでいる場所が全焼して生活が変わったとしても休めない。

制服も教材も何もかもがないが、説明すれば何とかなるかな。

ランドリー室に置いてある魔力で動く洗濯機型の魔導機に服を入れる。
風の魔術と水の魔術を使って洗う、この洗濯機型の魔導機はレベル1でも稼働するんだ。
こういう魔力で動く魔導機にはレベルごとに動く種類がある。

レベルが低いと必要魔力は少なくていいが性能は良くない、逆にレベルが高いと必要魔力は多いが高性能だったりする。
イヴの家だから高性能の魔導機かと思ったが、厨房のキッチンといい…風呂場の水と湯といい、俺のレベルで全て出来るような低スペックのものばかりだ。
イヴが魔導機に高性能を求めていないんだろう、イヴほどの力があったら最高級の魔導機だって扱えるのになとクルクル回る洗濯物を見つめていた。

終わった洗濯物をランドリー室内で干して、風の魔術の球体を使って乾かす。
俺の魔術じゃ、乾かすのに時間が掛かるけど明日には乾いているだろう。

そろそろ時間かな、と思って部屋に戻ってエプロンを脱いでから鏡で身なりを整えて家を出た。

そんな早くにイヴだって帰れないだろうけど、とりあえず伝言だけ置いておこうと紙とペンを借りて「学校に行ってきます、夕方までには帰ります」と書いて玄関近くにある花瓶の下に挟んだ。

帰ってきたら一番に目立つ場所に置いたから大丈夫だろう。







*****

貴族街から出る時は行く時よりもスムーズに進んだ。

いつもはもっと早く学校に向かっているからか、俺以外に学生はあまり見かけない。
ちょっと遅刻してしまったかなと歩くスピードを速めた。

遅刻しても怒られるわけではない、18歳までは時間厳守で授業もびっしりと入っていた。
でも19歳からは好きな授業に参加出来る選択式の授業で、学校がやっている時間まで何時でも登校していい。
でも、卒業出来るかは自分の選択した授業で左右される。
多く授業を取ってもいいし、一つだけでもいい…出席日数も卒業に関係するからまるっきり行かなかったら当然卒業出来ない。

俺はレベルが低いからかなり頑張らないと卒業が難しいと先生に言われている。
だからかなりの数入れている、当然仕事との両立を考えてちゃんと調整している。

俺は卒業して、早く一人前のなんでも屋になりたいんだ…そのためには必要な授業は全て受けたい。

学校に到着して、すぐに先生のいる職員室に向かって事情を説明した。
昨日の騒ぎを知っていたのか、すぐに信じてくれて予備の制服と教材を借りた。

給料が貰ったら、また自分で買うつもりだ…それまで借り物で授業を受ける事になった。

更衣室で借りた紺色の軍服のような制服に着替えて、授業に急いで向かった。

俺の選んでいる授業は、体力と勉学と戦闘力だ。
重い荷物をよく持つし、高いところにも登るから体力が必要だ。

店番をしたりする事もあるから経営専門の勉学も必要だ。
今のところ俺はないが、先輩達は貴族の用心棒とかをやった事があるらしくて、いつか俺もやる時が来るかと思ってその時に備えて剣術を使う戦闘力も必要だ。

イヴは雇ってくれたが、それは永遠ではない。
いつかまたなんでも屋に戻った時のために授業は疎かになりたくない。
イヴの家でも学ぶ事は多いが、授業でしか学べない事も多い。
だから一つも授業を逃したくはないと思っている。

今の時間は勉学の授業をしていて、すぐに教室に入った。

普通の日常を過ごし過ぎて、きっと俺の頭からここは漫画の世界の内容が抜け落ちていたんだ。

もし、平和ボケをしていないでイヴに気を付けていたらきっと関わる事はなかったのかもしれない。

もう、あの時から運命が決まっていたとしたら転生したその日から俺は逃れる事が出来ない運命の中にいた。
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