最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン

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第60話 ヌートヌーン

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「一体どこから入り込んできた!」
「陛下をお守りしろ!」
 
 怒号を上げながら会議室内に大量の騎士がなだれ込む。
 
「各国の王をすぐさま安全な場所へお連れしろ! 最優先だ!」
「御意!」

 皇帝の号令の元、王たちは会議室外へと連れ出される。
 皇帝自身も周りを騎士に取り囲まれながらいそいそと会議室の外へ出ていった。

「グレイス! お前も一緒に来い」

 騎士に伴われて会議室を出ようとするカルディア王が振り返って俺に声をかける。

「私は少しこちらで様子見をします。これでも腕には自信がありますので、残らせてください!」
「…………分かった。無理はするなよ」

 そうしてカルディア王も会議室の外へと出ていった。

「みんなを逃がしていいの? 黙って見てるけどさ」

 そんな中、会議室内に残っていたセーイチが魔族へ問いかける。
 それはまるで同級生にするような気安さだった。

「雑魚に用はない。我々が用あるのはセーイチ、お前だけだ」

 セーイチはおどけるように肩をすくめる。

「各国の王に皇帝陛下までいらっしゃるのになんともまあ……」

 そこで騎士の一団が会議室内になだれ込んできた。
 おそらく彼らが他国にもその名を轟かせている皇帝親衛隊だろう。
 
 皇帝親衛隊は白銀の鎧に身を包み、整然とした隊列で会議室に立つ。
 彼らの鎧は魔法で強化されており、まるで光を放っているかのように輝いている。
 全員が険しい表情を浮かべ、鋭い視線で敵を見据えている。
 その姿は圧倒的な存在感を放ち、ただ立っているだけで場の空気が引き締まるようだった。

「まさかネズミが皇宮内へと潜り込むとはな。後悔させてやる! 魔族だからと言って誰でも恐れると思うなよ。我が帝国は唯一魔族と対抗できる国家だ。貴様らに目にもの見せてやる!」

 騎士たちは抜刀し、武器を構える。
 その後方には魔術師と思われる一団も現れ、魔法の詠唱を早くもはじめていた。
 もしかしたら彼らだけで始祖を撃破できるかもと期待が高まる。

「きゃははははは。こいつら僕たちに対抗できるらしいよ!」
「きゃははは、よかった遊び相手ができたね! ローランド、ミディア。手出し無用だよ!」
「「かしこまりました」」

 始祖は抱かれていた手から離れて、それぞれ単独で宙に浮かぶ。

 後方より始祖たちに様々な魔法が放たれるが、凄まじい魔力の壁が始祖たちの前に立ちはだかり、放たれる魔法の一つ一つをことごとくはじき返していく。
 そのバリアはまるで生きているかのように揺らめき、近づく魔法を吸い込むように消し去ってしまう。

 衝撃波が放たれるたびに空気が震え、激しい閃光が会議室を照らすが始祖たちは微動だにしない。
 彼らの冷ややかな視線と絶対的な防御力に、周囲の騎士や魔法使いたちは焦りと驚愕を隠せなかった。

「んな!? なんだと」
「最上級の魔法が通用しない?」
 
 始祖たちはゆっくりと地面に降り立ち、騎士たちを冷静に見つめる。
 その顔には不敵な笑みが浮かび、赤ん坊の姿とは裏腹に凄まじい威圧感を漂わせている。

「身なりに惑わされるな! こいつらは悪魔だ、やれ!!」

 騎士団長と思われる男の号令の後、騎士たちが始祖に襲いかかる。

「無駄な抵抗はやめて帰りなよ。僕たちには勝てないんだからさ」

 一人の始祖があどけない口調で言うが、その言葉は嘲りを含んでいた。
 騎士たちが武器を振り下ろす寸前、始祖たちが小さな手を軽くかざした。

 次の瞬間、騎士たちの剣が空中で止まる。
 まるで見えない力がそれを掴んだかのように、剣も体も動かせなくなった騎士たちは必死にもがき始めたが、全く身動きが取れない。

「お遊びはここまでだよ」

 もう一人の始祖が微笑みを浮かべ、指を軽く弾いた。
 
 ――瞬間、会議室全体に強烈な衝撃波が放たれ、騎士たちは次々と弾き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
 鎧がきしむ音が響き、倒れ込む騎士たちから苦痛の呻き声が漏れる。

 それでも何人かの騎士は衝撃波に耐え、意を決して武器を構えると、始祖に向かって猛然と切りかかっていく。
 だが、その刃が始祖の体に触れた瞬間、まるで何もなかったかのように弾かれ傷一つつけることができない。
 始祖たちは涼しい顔を浮かべたまま、その小さい手で騎士の体を掴むと、まるで脆い人形を扱うようにその手足をちぎり捨てていく。

「うぎゃあああああ!!!」
「止めてくれぇえええ!!!」
 
 会議室内はすぐに阿鼻叫喚の嵐となった。

「きゃはははは。脆い! 人間は脆いなあ!」
「でもリアクションはいいよね! もっともっと鳴きなよ! きゃははははははは」

 返り血で真っ赤に染まった始祖たちの笑い声が会議場内に響く。
 騎士たちはその姿を目撃すると顔を青くした。

「化け物だこいつら!」
「逃げろぉ、死ぬぞ!」

 騎士たちは次々と逃げ出していく。
 
「馬鹿、逃げるんじゃない! 肉壁になってでも陛下をお守りしろぉ!」

 騎士団長は必死に引き止めるが彼の言う事を聞くものはいなかった。
 
 期待はしていたけど、彼らでは始祖たちに敵いそうにないな。
 このままでは被害が広がるだけで潮時だ。
 
 始祖が逃げ出す騎士たちに更に襲いかかろうとした時、俺は彼らの前に立ちふさがる。

「あれ、君はグレイスだね」
「そうかさっきもいたよね。何してるのかなとっと思ったけどさ」

 始祖たちは攻撃の手を止めて、気安く話しかけてくる。
 
「なんで俺のことを知ってるんだ?」

 始祖と俺は初見のはずなんだけど。
 
「だって見てたもん勇者との対決」
「なかなか面白い見世物だったよあれは。きゃははははは!」
「君も僕たちと遊ぶかい?」

 始祖は狂気に満ちた視線を今度は俺に向ける。
 
「おいおい、お前らの狙いは俺だろ?」

 そこへセーイチも訪れる。

「メインディッシュは最後に取っとくのさ」
「にしても散らかしちゃったね。一旦、綺麗にしようか」

 始祖は手のひらに小さな円球を浮かべると、そこに圧倒的な魔力を注ぎ込んでいく。
 その球体は徐々に膨れ上がり、空間を飲み込むようにして広がり始めた。
 球体の内側に触れたものはすべて跡形もなく消滅し、残っていた騎士たちもまた、逃げる間もなくその球体に飲み込まれていく。

 数瞬後、先ほどまで会議室だった場所はまるで巨大な球体でくり抜かれたように不自然な空間がぽっかりと残されていた。
 
「スペースも出来たことだし、そろそろを召喚しようか」
「いいね! 世界一の都市で暴れてもらおうか!」

 そこにローランドが青い顔をして割り込む。
 
「始祖様、お戯れを! をこんな所で召喚すると取り返しのつかないことが!」

 それを聞いた始祖の顔が嫌そうに歪む。

「うるさいな」

 始祖はローランドに向かって手を開く。
 
 そしてその手を閉じて拳を作ると――――

 グシャリとローランドは圧縮された肉塊となった。
 肉塊の下には血溜まりが出来ている。

「後で僕たち好みの形で元に戻してやるから少し黙ってなよ。コアは破壊していないからさ」
「きゃははははは。口うるさいのがやっといなくなったね」

 ミディアはそのローランドの無惨の姿を目にして、呆然として膝をつき震えていた。

 始祖の一人が満足そうにしながら、片手を前につきだす。そして――
 
「いでよ、ヌートヌーン!」

 空間が歪み、その隙間から細長く異様に伸びた手足が現れる。
 巨大な魔物がゆっくりと姿を現し、その異形は人間の骨格とはかけ離れ、ねじれた関節が不気味さを強調していた。
 手足の先端には鋭い爪が輝き、不自然に細い脚部が一層の異様さを醸し出している。

 肉塊の中心には異様に大きな一つ目があり、ヌートヌーンが完全に姿を現すと、その目が黒から真紅に輝きを変える。
 瞬間、空気が張り詰め、凍りつくような重圧が場を支配した。
 
「あれ、どっちがやる?」 

 セーイチは気軽な様子で聞いてくる。
 肩の力は抜けており、強がっている感じはしなかった。

「…………やれるのか? 俺はいいけど」

 その魔力の圧倒的な強さは、まるで冥府の終焉回廊に巣食う規格外の魔物を彷彿とさせた。

「はは、頼もしいね。俺も“やれるかも”くらいかな。じゃあ、共闘しようか」

 セーイチが腰の鞘から剣を抜く。
 それがまるで合図となったかのように、ヌートヌーンが長い手を振り回し、俺たちは素早くジャンプしてかわす。
 
 ヌートヌーンの手が振り抜かれた先の壁が一瞬で粉砕され、その衝撃は壁の向こうに広がる都市にも届いていた。
 まるで大規模な爆撃を受けたかのように、轟音が響きわたる。

「んな!? なんて威力だ……」

 その場に響く市民たちの悲鳴。
 たった一撃で甚大な被害が広がり、ここからでもその凄まじさが伝わってくる。
 その惨状を見て、血の気が下がる。

「くそっ、なんてことだ。仕方ない……」

 これ以上、こいつにここで暴れさせるわけにはいかない。
 冥府の終焉回廊で得た能力は奥の手として取っておくつもりだったが、そういう訳にもいかなそうだ。

 俺は新たに得ていた融合スキルを発動する。
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