おじいさんとおじいちゃん

Green hand

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おじいさんとおじいちゃん

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『おじいさんとおじいちゃん』

あるところに、おじいさんとおじいちゃんわんこが暮らしていました。

夜が明ける頃、おじいさんの1日が始まります。
日課の体操を済ませて、庭先の縁側へ行くと、使い古しの毛布の上でおじいちゃんは丸くなってまだ気持ち良さそうに眠っています。
その姿を見て、おじいさんは起こすのをやめて、先に部屋の掃除を済ませることにしました。
おじいさんの掃除は簡単です。箒で部屋中を丸く掃いて、全てのゴミを玄関へ落とします。そして、ある程度溜まってきたら、ちりとりでゴミをまとめてゴミ箱へ捨てるのです。
しばらくすると、縁側のおじいちゃんは家の中から聞こえてくる物音で目を覚ましました。
お尻を突き出して、前足を伸ばして、全身をぷるぷると振って、おじいちゃんも朝の体操をします。それから、窓ガラスをガリガリ引っ掻きます。
おじいさんが気づいてくれるまで、ガリガリ、ガリガリ。
しばらくすると、着替えを済ませたおじいさんがやって来て、窓ガラスを開けてくれました。
おじいさんはおじいちゃんを見下ろして、おじいちゃんはおじいさんを見上げて、

「よぅ、おはよう。」

(おぅ・・おはよう。)

朝の挨拶をしました。



支度を済ませて、おじいさんとおじいちゃんは、朝の散歩に出かけます。
最初は、おじいちゃんが先を歩きます。時々おじいさんを振り返りながら、草むらの匂いを嗅いでオシッコをすると、そこにおじいさんはマヨネーズの空き容器に入れてきた水を撒いていきます。
足早に歩くおじいちゃんに出来るだけ合わせておじいさんも足を運びます。けれど、

「はぁ・・はぁ・・」

どうしても息が上がってしまいます。おじいちゃんはおじいさんを見て、少しスピードを緩めます。けれど、[アレ]が済むまでは、おじいちゃんも気が気ではないのです。

「はぁ・・大丈夫だよ。大丈夫だから・・はぁ・・・。」

おじいさんも、よく分かっていました。
頭を下げて一生懸命地面を嗅いで四つ足で力強く歩くのは、言ってみればおじいちゃんの大事な仕事なのです。
おじいちゃんの呼吸も、徐々に荒くなってきた頃、散歩中の最大の大仕事がやってきました。

「・・・・・・・。」

おじいちゃんは突然立ち止まり、後ろ足を開いて、腰をへこっと下げました。
おじいさんはそれを見て安心し、手提げ袋からビニール袋を取り出して片づけます。
その横で、おじいちゃんはスッキリした顔で、おじいさんの片付けを見ています。そして、片付け終えるのを見計らって、おじいちゃんはおじいさんの顔をじっと見つめて、言われてもないのにお座りをします。
おじいさんとカチッと目が合うと、おじいちゃんはさらに強い視線を注ぎます。

「・・・・・・・」

(・・・・・・・)

両者、一歩も譲る気配はありません。

「・・・・・・・」

(・・・・・・・)

けれど、

「・・・・・降参だ。」

毎日必ずおじいさんが負けます。
笑みを浮かべながら溜め息をついて、手提げ袋から、1口サイズのジャーキーを1つ取り出すと、

「ご飯前だから、1つだけな?」

(よっしゃ。)

おじいちゃんにご褒美をあげました。
それから家へ着くまで、おじいちゃんはおじいさんの隣りを歩いて、徐々に明けてゆく朝の空気を吸いこんで、暖かい晴れの日を、蒸し暑い雨の日を、雲で覆われた寒々しい日を、毎日毎日、2人1組でのんびりと歩きます。



家に着くと、次は朝ご飯です。
畳の部屋の古いちゃぶ台に、慣れた手つきでおじいさんは食事を並べていきます。そして最後に、畳の上におじいちゃんの分を。
おじいさんの朝食は、焼いた食パン1枚にハムを乗せたものと、ヨーグルトとホットコーヒー。
おじいちゃんは、おじいさんの隣りで畳の上のお皿に盛られたドッグフードにほぐした鶏のササミ乗せたものを食べます。そして、

(・・・・・・)

「・・・ん、これか?」

おじいさんが食べ終えたヨーグルトの容器をもらって、容器に張りついたヨーグルトをペロペロ舐めます。



そして、暖かい晴れた日には2人で縁側や庭で過ごし、雨の日は部屋でテレビを見たり、趣味の絵を描いて過ごします。
蒸し暑い日は、2人畳の上で横になり、お腹を出して暑さを凌いだり、冷やしたスイカを食べたり、とにかく無理して動くと体に毒だと、部屋でのんびり過ごします。
寒い日は、おじいさんはストーブを付け、炬燵に入って過ごします。年を取ってからは、ストーブの前はおじいちゃんの指定席になりました。



日暮れ前、2人は2度目の散歩へ出かけます。前半は、おじいちゃんが前を歩き、後半は2人でのんびり歩きながら、夕焼け空の下を、降りしきる雨の中を、雪と白い吐息が舞う中を、そんな四季の移ろいを楽しみながら、変わらずそこにある我が家へ帰っていきます。



そして、早めの夕食を2人で済ませて、眠気に誘われるまでの間、それぞれしたいように過ごして、眠りにつきます。

「よぅ・・おやすみ。」

(おぅ・・おやすみ。)

これは、そんな風にのんびり穏やかに暮らす、おじいさんとおじいちゃんのお話です。

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