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相変わらず犯罪が多い。
もちろん犯罪者は処刑しているけどそう簡単に犯罪はなくならない。
これだけ厳しく取り締まっても犯罪を犯すとは救いようがないな。
俺は死体の山を築きたくはないのに愚民が俺にそうさせる。
まったく王は大変だな。
だが俺は愚民どもを少しくらいは信じている。
いくら愚民とはいえ俺の善政の恩恵に預かれば犯罪をするとは思えない。
なら答えは決まっている。
「誰かが何か企んでいるとしか思えないな」
俺は知らないが俺の予想は当たっている。
隣国の手の者が暗躍しているのだ。
「ギルドの調査の結果は相変わらず何も異常を見つけられないか」
まあ無能だから当然の結果だろう。
どこかに犯罪を唆すような集団が潜んでいるはずなんだがな。
「こうして犠牲者が出るってことは宣戦布告みたいなものだよな」
「舐められていいの?」
「いいはずがない。どうせこんなことをするのは隣国だろう。報復しよう」
「さすがユータね」
「兵士に隣国を適当に荒らすよう命令しよう。これは警告だ。いきなり滅ぼすような事はしないけど警告くらいはしてやろう」
「さすがユータね」
「まあな」
こうして兵士が適当に隣国を荒らして帰ってきた。
まあ詳細は省いても問題ないだろう。
まあ警告としては十分だろう。
「これに懲りて犯罪なんて唆さなくなればいいんだけどな」
だが無駄だった。
相変わらず薬物は流行している。
一度薬物に依存してしまった人がそう簡単にやめられるはずがない。
供給が滞れば次は凶悪な犯罪に走ってしまうかもしれない。
相手は薬物依存症なのだからまともに考えられるとは思えない。
短絡的に凶行に走ってもおかしくはない。
大きな犯罪を防ぐためには小さな罪を見逃してやるしかないか。
仕方ないから俺が依存性の低い薬物を供給してやろう。
「みんなはユータほど上手くはないから薬物に頼るのも仕方ないと思うの」
「そうだよな」
だが思ったような結果にはならなかった。
素晴らしい効果と依存性のなさから中毒になる奴らが続出した。
依存性がないからのめり込むとはな。
俺は悪くない。
悪いのは薬物を乱用する奴らだ。
「失敗だったかな?」
「ユータがすごすぎるから失敗ではないわ。依存する人が悪いもの」
「そうだよな」
「ユータはすごいから」
「まあな」
「さすがユータね」
「まあ当然だな」
これで薬物依存症の問題も片付いたので犯罪者集団の件も片付けてやらないとな。
俺は兵士に命令し、再び隣国を荒らすように指示した。
「ついでに好きに犯していいぞ」
「さすがユータ様!話がわかる!」
「ユータ様万歳!」
「偉大なるユータ様大帝国に栄光あれ!」
「ユータ様!万歳!最高!素敵!抱いて!」
隣国への報復で国民の支持率も相変わらず高い。
他国へは兵士に任せるとして、俺が無能なギルド員に代わって犯罪組織のことを調べるか。
「気をつけてね、ユータ」
「ああ」
犯罪組織ごときに遅れを取るとは思えないが注意しておこう。
相手は卑劣な集団だ。
罠があってもおかしくはない。
俺に罠が通用するとも思えないけどな。
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