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03 刑部姫(おさかべひめ)
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「して、まずはどうすればいいのじゃ!?」
「え、ええと、そうですね……。まずはその、あなたのお名前を聞いてもいいですか? 城化物が名前……なんでしょうか?」
「む? ああ、それは通称じゃ。私の本来の名は刑部姫(おさかべひめ)だ!」
刑部姫(おさかべひめ)。そう告げられた名前に佳祐は聞き覚えがあった。
確か姫路城に住む女性の妖怪。城の天守に隠れ住み、年に一度城主に会って、城の運命を告げたとか。
漫画家として多少の雑学に精通している佳祐はそんなような記憶を思い出す。
(そうか、この子があの刑部姫。……あれ? だけど、どうしてそれがこんなマンションに? 本来は姫路城にいるはずでは?)
そのことを疑問に思った佳祐は思わず目の前のあやかしに尋ねる。
「あの、刑部姫って姫路城にいるあやかしですよね? なんでこんなマンションにいるんですか?」
彼がそう尋ねると刑部姫は「うっ」と胸元を抑えながら告げる。
「それが……あそこからはだいぶ前に追い出されたのじゃ……。前に祈祷師じゃか、陰陽師だかに無理やり退散させられてな……。行き場を失った私はこうして城に近い建造物に住み着くことにしたのじゃ」
城に近い。ああ、だからマンションか。と佳祐は納得する。
それでもよく追い出されなかったな、佳祐が再び尋ねると、
「いや、追い出されたぞ。色々なマンションを。で、転々としている内にこのマンションにたどり着いた。が、このマンションの持ち主が我々あやかしに通じる者でな。特別に住まわせてくれたのじゃ」
「へー、って!? ここの大家さん、あやかしがいること知ってて貸出してるの!?」
「ん? そうじゃが、なんじゃお主知らずにこのマンションに入ってきたのか。このマンションは全室ルームシェアだと書かれていただろう」
「へ?」
そんなバカな。ルームシェアマンションなんてチラシにはどこにも、とそう思いながら佳祐はチラシを一度確認してみる。すると――
「……ん、んんんんん!?」
チラシを光に当ててみたところ、下の方になにやら文字が出てくる。
これは光に透かしてみることで現れる隠し文字? そのからくりに気付いた佳祐がマジマジとそこに書かれた文字を確認する。
『ただし、全部屋あやかしとのルームシェアとなります。入室される方はこの条件を飲んだ方と認識させて頂きます』
「だ、騙されたああああああああああ!!」
叫ぶ佳祐。
それもそのはずであり、これはまごう事なき悪質な契約詐欺であった。
そんな彼を刑部姫は呆れた表情のまま眺める。
「なんじゃ、知らずに入ってきたのか? 道理でわらわの脅しにも本気で腰を抜かしていたわけじゃ」
「はあ、そりゃまあ、そうですよ……っていうか、刑部さん。ここルームシェアなんですよね? じゃあ、なんでオレを襲おうとしたんですか?」
「いや、あれはその……ちょっと脅かしてやろうというか。久しぶりの人間じゃったからついついからかってやったのじゃ。ちなみに本気で食うつもりはなかったぞ。そんなことをすればここのオーナーに追い出されるからのぉ」
「はあ……」
なにやら釈然としない様子で頷く佳祐。
しかし、そんな彼に気づいた様子もなく刑部姫は佳祐の仕事道具と思わしき紙やペンを手に取る。
「で、まずはどうすればいいのじゃ!? この紙にお主の漫画のような絵を描けばよいのか!?」
「ああああ! ちょっと待ってください! いきなり原稿にペンを入れようとしないでください! そんなことしたら大変なことに……って、ちょっとー! それオレの描きかけの原稿ーー!!」
刑部姫が手に持つ原稿へと慌てて手を伸ばす佳祐。
二人の奇妙な共同生活。また、漫画制作の道はここから始まっていくのだった。
「え、ええと、そうですね……。まずはその、あなたのお名前を聞いてもいいですか? 城化物が名前……なんでしょうか?」
「む? ああ、それは通称じゃ。私の本来の名は刑部姫(おさかべひめ)だ!」
刑部姫(おさかべひめ)。そう告げられた名前に佳祐は聞き覚えがあった。
確か姫路城に住む女性の妖怪。城の天守に隠れ住み、年に一度城主に会って、城の運命を告げたとか。
漫画家として多少の雑学に精通している佳祐はそんなような記憶を思い出す。
(そうか、この子があの刑部姫。……あれ? だけど、どうしてそれがこんなマンションに? 本来は姫路城にいるはずでは?)
そのことを疑問に思った佳祐は思わず目の前のあやかしに尋ねる。
「あの、刑部姫って姫路城にいるあやかしですよね? なんでこんなマンションにいるんですか?」
彼がそう尋ねると刑部姫は「うっ」と胸元を抑えながら告げる。
「それが……あそこからはだいぶ前に追い出されたのじゃ……。前に祈祷師じゃか、陰陽師だかに無理やり退散させられてな……。行き場を失った私はこうして城に近い建造物に住み着くことにしたのじゃ」
城に近い。ああ、だからマンションか。と佳祐は納得する。
それでもよく追い出されなかったな、佳祐が再び尋ねると、
「いや、追い出されたぞ。色々なマンションを。で、転々としている内にこのマンションにたどり着いた。が、このマンションの持ち主が我々あやかしに通じる者でな。特別に住まわせてくれたのじゃ」
「へー、って!? ここの大家さん、あやかしがいること知ってて貸出してるの!?」
「ん? そうじゃが、なんじゃお主知らずにこのマンションに入ってきたのか。このマンションは全室ルームシェアだと書かれていただろう」
「へ?」
そんなバカな。ルームシェアマンションなんてチラシにはどこにも、とそう思いながら佳祐はチラシを一度確認してみる。すると――
「……ん、んんんんん!?」
チラシを光に当ててみたところ、下の方になにやら文字が出てくる。
これは光に透かしてみることで現れる隠し文字? そのからくりに気付いた佳祐がマジマジとそこに書かれた文字を確認する。
『ただし、全部屋あやかしとのルームシェアとなります。入室される方はこの条件を飲んだ方と認識させて頂きます』
「だ、騙されたああああああああああ!!」
叫ぶ佳祐。
それもそのはずであり、これはまごう事なき悪質な契約詐欺であった。
そんな彼を刑部姫は呆れた表情のまま眺める。
「なんじゃ、知らずに入ってきたのか? 道理でわらわの脅しにも本気で腰を抜かしていたわけじゃ」
「はあ、そりゃまあ、そうですよ……っていうか、刑部さん。ここルームシェアなんですよね? じゃあ、なんでオレを襲おうとしたんですか?」
「いや、あれはその……ちょっと脅かしてやろうというか。久しぶりの人間じゃったからついついからかってやったのじゃ。ちなみに本気で食うつもりはなかったぞ。そんなことをすればここのオーナーに追い出されるからのぉ」
「はあ……」
なにやら釈然としない様子で頷く佳祐。
しかし、そんな彼に気づいた様子もなく刑部姫は佳祐の仕事道具と思わしき紙やペンを手に取る。
「で、まずはどうすればいいのじゃ!? この紙にお主の漫画のような絵を描けばよいのか!?」
「ああああ! ちょっと待ってください! いきなり原稿にペンを入れようとしないでください! そんなことしたら大変なことに……って、ちょっとー! それオレの描きかけの原稿ーー!!」
刑部姫が手に持つ原稿へと慌てて手を伸ばす佳祐。
二人の奇妙な共同生活。また、漫画制作の道はここから始まっていくのだった。
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