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第38話 四聖皇ネプチューン
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「ようやく会えたな。ネプチューン……いや、俊」
扉の先。
大空を見渡す風景を背に玉座に座る人物。
それは十五、六歳くらいの少年。
茶髪の片目をを髪で覆った小柄な人物。
かつてオレや湊、花澄達と共にこの異世界に転移し冒険を共にした仲間。
春日(かすが)俊(しゅん)。
その彼があの時と同じ姿のまま玉座に座り、閉じていた目を開けるとオレを確認する。
「……誰だ。ここへ入る許可を与えてはいないぞ」
「随分な口調だな。百五十年も経ってオレのことを忘れたのか? この世界の住人にオレのことを殺していいと伝えておいたくせに」
「なに?」
オレのその声に俊は改めてオレを視界に入れる。
その瞬間、奴の目がわずかに細まったのが見えた。
「ほお、斑鳩(いかるが)真人(まさと)か。どうしてお前がこの時代にいる?」
「おいおい、昔の知り合いへの第一声がそれかよ。まあいいさ、あの時使ったスキル『睡眠』の効果が切れて、目覚めたらこの時代だったんだよ」
「なるほど、そういうことか」
オレがそう説明すると、しかし俊はまるで興味ないとばかりに立ち上がり、どこからともなく剣を取り出す。
「とはいえ都合がいい。いずれはお前を回収しなければならないと思っていたからな。自分からここへ来てくれたのは助かったよ。ついでにそちらの巫女も僕が手ずから処理しておこう」
「……ッ」
俊の発言に恐怖するように下がるシュリ。
オレはそんな彼女を庇うように前に出る。
「ふざけるな、俊。なぜお前は巫女を――シュリを殺すよう命令しているんだ」
「それがこの世界の秩序を守るためだ」
「秩序を守るだ? ふざけるな! そもそもなぜお前だけが生きてこの世界の英雄になってんだよ! お前と一緒にいたオレの親友、湊、花澄、壮一達はどこへ行った!? なぜ彼らを含めたオレ達を大罪人にした!? お前、あいつらに何をしたんだッ!!」
問いただしたかった事を口にするが、しかしそれに俊が答えることはなかった。
代わりに返ってきたのは冷酷な一言。
「君も彼らも、そしてその巫女もこの世界には不要な歯車だ。故に邪魔となる存在は消す」
「……ッ、そうかよ……」
その一言だけでオレは湊達がどうなったのか、なんとなくだが予想してしまった。
分かってはいたことだが、こいつのあまりに冷酷な表情、態度、一言がそれを決定づけてしまった。
許せない。
たとえ、どんな理由があろうとも。
オレの友人を、親友を、幼馴染を、そしてシュリまでも――。
そんなことをするこいつをのさばらせることは出来ない。
「俊。お前は今ここでオレが打ち倒す。湊達皆の――仇だッ!!」
瞬間、オレは『加速』を使用し、光速を超える速度で俊に近づく。
奴が構えるより早くオレは奴の体めがけ光速の一太刀を浴びせようとするが――
「固有スキル『停止』」
「ッ!?」
刹那、時が停止した。
オレが奴に剣を浴びせる寸前、その動きが固まり、硬直したオレの腹めがけ剣の柄を突き出す。
「がはッ!?」
同時に止まっていた時が動き出し、オレは遥か後方の壁にぶち当たり吐血する。
「真人さん!?」
シュリの叫びが聞こえ、オレはなんとか「大丈夫だ……」と起き上がる。
だがしかし、今のスキルはまさか……。
オレは思わず目の前で悠然と立ち尽くす俊を見上げる。
「そういえば僕の固有スキル教えていなかったな。まあ、今のでなんとなく分かったかもしれないがな」
「…………」
確かに俊はオレ達にも自分の固有スキルを教えなかった。
花澄や湊達が彼に尋ねたが彼は「……大したスキルじゃないよ」とごまかしていた。
だが、今のスキル。
オレが奴の体に触れる直前、オレの体が停止した。そこから導き出される結論はすなわち――
「そう、『停止』。僕のスキルは認識した相手の動きを一瞬停止させるスキルだ。どうやらお前は『加速』を使って自身の速度を光速に近づけているようだが、僕のスキルの前では無意味。たとえ光速で動こうとも、動きそのものを止めてしまえば、それで軽くひねり潰せる」
「へえ、軽くね……随分と甘く見られた!」
俊の発言にカチンと来たオレは『加速』の力を限界まで引き出し縦横無尽にこの空間を駆け巡る。
これほどのスピードでかく乱すればオレの姿を捉えることは不可能なはず!
そして、死角からの攻撃と同時に『創生』によって生み出した武器を四方から叩きつける!
これなら仮にオレの攻撃を止めても『創生』による武器の攻撃は届くはず。そう確信した瞬間――
「スキル『停止』」
再び俊のスキルが発動する。
だがそれは今度はオレの体だけでなく、この空間一帯の時間が停止し、オレが生み出した武器も俊に届く前に凍りついたように止まった。
なっ!? バカな!?
まさかあいつのスキルは相手の動きだけじゃなく、空間そのものを停止できるのか!?
停止と言ってもそれは時間停止とは異なり、オレの意識そのものはあった。
つまり時間そのものは流れている。停止しているのはあくまでもこの空間とそこにいる俊を除く生命や無機物のみ。
だが、それを理解した時には時既に遅く、俊の剣がオレの右肩へと入ると同時に時間が動き出す。
「がッ!?」
「真人さん!?」
俊の一刀を前に肩から血を吹き出し、吹き飛ばされるオレ。
なんて威力だ……。
体を停止させられたんじゃ防御のしようがない。
しかも、この威力。ただ一刀があまりにも重い。
「今の一撃を受けて死なないところを見ると、お前も相当なレベルを持っているようだな。だが、参考までに教えておこう。今の僕のレベルは――830だ」
「……ッ!?」
「そう、かよ……」
俊の宣言を前にシュナは息を呑み、オレはなんとなく思い描いていた最悪の事態に思わず舌打ちする。
やはり、俊のレベルはこれまでの相手とは桁違いだ。
だが、それもそのはず。
俊は伝承に曰く、この世界を救った英雄。
しかも、その後は神としてこの世界に君臨し続けた。
そんな奴のレベルが低いはずはない。
最低でも500……いや、600、700以上はあるかと覚悟していたが820とは――。
くそ、せめてオレのレベルがスキル『睡眠』時によって得られた最高レベル999かあるいは今夜アリアと戦う前に981ならば、まだ勝負はわからなかった。
だが、ここに来るまでに数々の聖十騎士団を相手にオレのレベルは消耗し、素の実力でも目の前に相手に劣る事態となっていた。
結果としてあの聖十騎士団達の行動は自分達の神でもあるネプチューンの助けになっていたということだ。
「けどな……たとえ、そうでもオレは負けるわけにはいかない」
「ほお」
「真人さん……!」
肩から血を流しながらもオレは必死に歯を食いしばり、立ち上がり、目の前の敵――俊を見据える。
「俊! お前だけはオレの命に変えてもここで必ず倒すッ!!」
扉の先。
大空を見渡す風景を背に玉座に座る人物。
それは十五、六歳くらいの少年。
茶髪の片目をを髪で覆った小柄な人物。
かつてオレや湊、花澄達と共にこの異世界に転移し冒険を共にした仲間。
春日(かすが)俊(しゅん)。
その彼があの時と同じ姿のまま玉座に座り、閉じていた目を開けるとオレを確認する。
「……誰だ。ここへ入る許可を与えてはいないぞ」
「随分な口調だな。百五十年も経ってオレのことを忘れたのか? この世界の住人にオレのことを殺していいと伝えておいたくせに」
「なに?」
オレのその声に俊は改めてオレを視界に入れる。
その瞬間、奴の目がわずかに細まったのが見えた。
「ほお、斑鳩(いかるが)真人(まさと)か。どうしてお前がこの時代にいる?」
「おいおい、昔の知り合いへの第一声がそれかよ。まあいいさ、あの時使ったスキル『睡眠』の効果が切れて、目覚めたらこの時代だったんだよ」
「なるほど、そういうことか」
オレがそう説明すると、しかし俊はまるで興味ないとばかりに立ち上がり、どこからともなく剣を取り出す。
「とはいえ都合がいい。いずれはお前を回収しなければならないと思っていたからな。自分からここへ来てくれたのは助かったよ。ついでにそちらの巫女も僕が手ずから処理しておこう」
「……ッ」
俊の発言に恐怖するように下がるシュリ。
オレはそんな彼女を庇うように前に出る。
「ふざけるな、俊。なぜお前は巫女を――シュリを殺すよう命令しているんだ」
「それがこの世界の秩序を守るためだ」
「秩序を守るだ? ふざけるな! そもそもなぜお前だけが生きてこの世界の英雄になってんだよ! お前と一緒にいたオレの親友、湊、花澄、壮一達はどこへ行った!? なぜ彼らを含めたオレ達を大罪人にした!? お前、あいつらに何をしたんだッ!!」
問いただしたかった事を口にするが、しかしそれに俊が答えることはなかった。
代わりに返ってきたのは冷酷な一言。
「君も彼らも、そしてその巫女もこの世界には不要な歯車だ。故に邪魔となる存在は消す」
「……ッ、そうかよ……」
その一言だけでオレは湊達がどうなったのか、なんとなくだが予想してしまった。
分かってはいたことだが、こいつのあまりに冷酷な表情、態度、一言がそれを決定づけてしまった。
許せない。
たとえ、どんな理由があろうとも。
オレの友人を、親友を、幼馴染を、そしてシュリまでも――。
そんなことをするこいつをのさばらせることは出来ない。
「俊。お前は今ここでオレが打ち倒す。湊達皆の――仇だッ!!」
瞬間、オレは『加速』を使用し、光速を超える速度で俊に近づく。
奴が構えるより早くオレは奴の体めがけ光速の一太刀を浴びせようとするが――
「固有スキル『停止』」
「ッ!?」
刹那、時が停止した。
オレが奴に剣を浴びせる寸前、その動きが固まり、硬直したオレの腹めがけ剣の柄を突き出す。
「がはッ!?」
同時に止まっていた時が動き出し、オレは遥か後方の壁にぶち当たり吐血する。
「真人さん!?」
シュリの叫びが聞こえ、オレはなんとか「大丈夫だ……」と起き上がる。
だがしかし、今のスキルはまさか……。
オレは思わず目の前で悠然と立ち尽くす俊を見上げる。
「そういえば僕の固有スキル教えていなかったな。まあ、今のでなんとなく分かったかもしれないがな」
「…………」
確かに俊はオレ達にも自分の固有スキルを教えなかった。
花澄や湊達が彼に尋ねたが彼は「……大したスキルじゃないよ」とごまかしていた。
だが、今のスキル。
オレが奴の体に触れる直前、オレの体が停止した。そこから導き出される結論はすなわち――
「そう、『停止』。僕のスキルは認識した相手の動きを一瞬停止させるスキルだ。どうやらお前は『加速』を使って自身の速度を光速に近づけているようだが、僕のスキルの前では無意味。たとえ光速で動こうとも、動きそのものを止めてしまえば、それで軽くひねり潰せる」
「へえ、軽くね……随分と甘く見られた!」
俊の発言にカチンと来たオレは『加速』の力を限界まで引き出し縦横無尽にこの空間を駆け巡る。
これほどのスピードでかく乱すればオレの姿を捉えることは不可能なはず!
そして、死角からの攻撃と同時に『創生』によって生み出した武器を四方から叩きつける!
これなら仮にオレの攻撃を止めても『創生』による武器の攻撃は届くはず。そう確信した瞬間――
「スキル『停止』」
再び俊のスキルが発動する。
だがそれは今度はオレの体だけでなく、この空間一帯の時間が停止し、オレが生み出した武器も俊に届く前に凍りついたように止まった。
なっ!? バカな!?
まさかあいつのスキルは相手の動きだけじゃなく、空間そのものを停止できるのか!?
停止と言ってもそれは時間停止とは異なり、オレの意識そのものはあった。
つまり時間そのものは流れている。停止しているのはあくまでもこの空間とそこにいる俊を除く生命や無機物のみ。
だが、それを理解した時には時既に遅く、俊の剣がオレの右肩へと入ると同時に時間が動き出す。
「がッ!?」
「真人さん!?」
俊の一刀を前に肩から血を吹き出し、吹き飛ばされるオレ。
なんて威力だ……。
体を停止させられたんじゃ防御のしようがない。
しかも、この威力。ただ一刀があまりにも重い。
「今の一撃を受けて死なないところを見ると、お前も相当なレベルを持っているようだな。だが、参考までに教えておこう。今の僕のレベルは――830だ」
「……ッ!?」
「そう、かよ……」
俊の宣言を前にシュナは息を呑み、オレはなんとなく思い描いていた最悪の事態に思わず舌打ちする。
やはり、俊のレベルはこれまでの相手とは桁違いだ。
だが、それもそのはず。
俊は伝承に曰く、この世界を救った英雄。
しかも、その後は神としてこの世界に君臨し続けた。
そんな奴のレベルが低いはずはない。
最低でも500……いや、600、700以上はあるかと覚悟していたが820とは――。
くそ、せめてオレのレベルがスキル『睡眠』時によって得られた最高レベル999かあるいは今夜アリアと戦う前に981ならば、まだ勝負はわからなかった。
だが、ここに来るまでに数々の聖十騎士団を相手にオレのレベルは消耗し、素の実力でも目の前に相手に劣る事態となっていた。
結果としてあの聖十騎士団達の行動は自分達の神でもあるネプチューンの助けになっていたということだ。
「けどな……たとえ、そうでもオレは負けるわけにはいかない」
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