命の記憶

桜庭 葉菜

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久しぶり 1

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「そうだったんだ……」

 桃子は私の長い話を真剣に聞いてくれていた。

「でもさ、そんなに仲がよかったのに、どうしてさっき琴音のことがわからなかったんだろう?」

 本当に、どうしてなんだろう。

「私が昔と全然違う人になってて全く思い出せないとか?」

「そんなに変わってないと思うけど……私たちが小中一緒だったからそう見えるのかな?」

 正直わからなくなってしまうほど自分が変わったとは思えない。

 それとも、私との思い出なんて3年もたてば忘れちゃうものだったのかな……

 いや、もしかしたら、こうちゃんは怒っているのかもしれない。

 私が何も言わずに居なくなってしまったことを。

 引っ越した後で会いに行くことだって出来たのに。

 でも、公園で待ち続けても、必ず会えるわけじゃない。

 連絡先も知らないし、あの頃の私にはどうすることも出来なかった。

 そう、言い訳するしかなかった。

「あーもう、ダメダメ! 彼が琴音の探していた人だって分かったんだから、これからなんとでもなるよ!
だからもう少し、私と文化祭を楽しも?」

 また桃子に心配をかけてしまった。

 今まで会いたいと思っていた彼に、まずは会うことができたんだ。

 その先のことは後で考えよう。

 桃子にタピオカドリンクのお礼を言い、ずいぶんと長居したこの教室から出た。

 お化け屋敷や縁日に行き、食べ物はワッフルや焼きそばを食べた。

 他にも吹奏楽部の演奏を見たりもした。

 楽しいことは終わるのが早いもので、文化祭終了の放送が流れ始める。

 あのあと、こうちゃんに会うことはなかったが、桃子のおかげで文化祭を楽しむことができた。

「今日はありがとう、楽しかった!」

「私も、来てくれてありがとうね!」

 これからクラスで用事があるらしく、桃子とはここでお別れ。

 文化祭の熱がまだ冷めない廊下を1人で歩く。

 楽しかったことが終わると、どうしてこんなに寂しくなるのだろうか。

 その寂しさからか、きっかけもないのにこうちゃんのことを思い出してしまった。

 次会うことはできるのだろうか。

 そもそも今日の状態では次会ったところでどうしたらいいのかもさっぱりわからない……

 あーもうだめだ、桃子が励ましてくれたのに。

 私は何とか思考を停止させる。

 何も考えずに昇降口で靴に履き替え、外に出た。

 そのまま無心で歩き、昇降口から校門までの道のりのうち、半分ぐらいを過ぎた時だった。

「待って」

 後ろから声をかけられる。

 停止させた頭ではその声の主が誰なのかわからず、私は恐る恐る後ろを向いた。

 そこには息を切らせたこうちゃんがいた。

「ごめん、俺のこと、こうちゃんって呼んでくれたのが気になって。
俺とどこかで会ったことあるの?」

 会ったことあるの、か……

 やっぱり私のこと忘れちゃったんだ。

 私に怒ってた訳じゃないだけ、マシなのかな。

「ごめんなさい、人違いでした」

 訳分からないことを言っていることは分かっている。

 でももう、顔を見られただけでもう十分だ。

 こうちゃんは今日声をかけてきた女の子のこともきっとすぐに忘れてくれるだろう。

 もうこうちゃんのことはこれっきりにしよう。
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