命の記憶

桜庭 葉菜

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久しぶり 3

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「今日はありがとう。後で連絡するね」

 こうちゃんも「わかった」といってくれた。

 私が笑顔で手を振るとぎこちなく振り返してくれる。

 それがまたちょっと面白くて、私は笑いながらその場を立ち去った。

 少ししてこうちゃんの走る足音が聞こえてくる。

 その音は少しずつ遠ざかっていき、やがて聞こえなくなった。

 私は今から帰る人たちに紛れて帰った。

 家に帰って今日のことを色々と思い返す。

 最初はこうちゃんに会えるか不安で、会えても私のことを覚えていなくて、でも最後はこうちゃんが私のことを見つけてくれて。

 これで、よかったのかな。

 本当は「久しぶり」って2人で言い合って、昔の話をしたかった。

 会えなくなってしまってから今日までのことをたくさん聞きたかった。

 そうなることをずっと考えて、なにを話すか頭の中でたくさんシミュレーションした。

 それなのに思っていたことは全部出来なくなって、でもこうちゃんはやっぱり私に優しくしてくれて……

 結局私はどうなんだ?

 こうちゃんに会えたのは嬉しかった。

 でも私のことを忘れていることはどうしたらいいんだろう。

 話すべきなのか、それともこうちゃんに合わせてはじめましてにするべきなのだろうか。

 1人で考えていてもどうにもならない気がして、私は報告も含めて、桃子に相談することにした。

『なにそれー!?』

 桃子がいきなり大きな声を出す。

 私は思わず耳に当てていた携帯を離してしまった。

「だ、だから、連絡先を交換して……」

 携帯を持ち直し、もう一度説明をする。

 文字で説明するのは難しいと思い、私は電話で、桃子と別れた後のことを説明していた。

 そして連絡先を交換したということまでやっと説明ができたところ。

『もう他のクラスも帰ってるだろうから、連絡しちゃえば?』

「な、なんて送ればいいんだろう……」

『もー、どうして連絡先は聞けたんだか』

 それはごもっともです。

 ただ私はたまに頭で考えていることではなく、なんとなくでポロッと口に出してしまうことがあるのだ。

 あの時連絡先を聞けたのは奇跡と言ってもいいだろう。

 だがせっかく連絡先を聞けてもなにも連絡を取らないのでは、あの時の私の奇跡が無駄になってしまう。

 私は桃子と相談しながら「鈴木琴音です、りんごジュースごちそうさまでした」とだけ送った。

『返事きたら教えてねー』

 と最後に言われ、桃子がお風呂に入るため電話を切った。

 そっか、私、こうちゃんに会えたんだもんね……

 何故だか今更になってこうちゃんに会えたという実感が湧いてきた。

 3年半、会えなくて後悔していた人、望んだ通りではなくても無事に再会することができたんだ。

 これから時間をかけて仲良くなって、ちゃんと自分の気持ちを伝えよう。

 タイミング良くお母さんがそろそろお風呂に入るようにと伝えにきて、私はすぐに入った。

 お風呂から出てきたらこうちゃんから返信がきていますように。

 そう祈りながら携帯を机の上に置き、部屋を出た。
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