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新生パーフェクト・ヴァンパイア
しおりを挟むその時 ―― 。
ラヴィの体から光がわきあがった。何かゆらゆらと揺れ動く銀色の光に取り巻かれたが、レインはそれにも気づかずもう止められない欲にかられて生き血をすする。
足りない、もっと欲しい・・・もっと・・・。
「レイン・・・耐え・・・なかったら・・・ごめんね・・・。」
弱々しい、ほとんど聞き取れないほど儚《はかな》い声がした。
レインはハッとした。これ以上はダメだ・・・という警報音が頭に鳴り響いた。その瞬間、我に返ったレインはあわてて口を放した。
「・・・ありがとう。」
レインは熱い息を吐きだして、自分がつけた傷口から滴《したた》る血を舐《な》めた。そしてそのまま、優しく首すじにキスを。
「もう・・・充分《じゅうぶん》だ。」
ラヴィはゾクっとする心地よさで赤くなった顔を、少しレインの方へ向けた。心臓の音がはっきりと分かるほどドキドキしている。初めは痛みだったものが快感に変わり、その余韻《よいん》の中で頭がクラクラしていた。
これが吸血鬼の・・・このまま多くの人は恍惚《こうこつ》と死んでゆく。でも・・・レインから注がれるものは純粋で、ただ優しい・・・とラヴィは感じた。
しっかりと立ち上がったレインは、声も出ない様子で動揺している追手の二人を見据《みす》えた。湧《わ》き立つ何か途方《とほう》もない力が体内に漲《みなぎ》っている。こんな強烈な感覚は覚えたことがない。
だけど変異種だとか、種特異性吸血鬼《パーフェクト・ヴァンパイア》って?
つまりラヴィも・・・吸血鬼?
とにかく・・・。
「種特異性吸血鬼《パーフェクト・ヴァンパイア》ってのがどれほど凄《すご》いか知らないが、気に入らない。それに、なぜか負ける気がしなくなった。」
たぶん今のお前のことだよっ!追手の二人は同時にそう思うも、ショックのあまり絶句。
嘘《うそ》のように体が軽くなったレインは、ラヴィを抱き上げて素早く飛び去った。そして、子供たちがいる場所へと空から戻って来た。上空から見下ろしてみれば、その場に残った吸血鬼兵団はすっかり気を抜いていて、子供たちをそばで見ていない。
レインは地に降り立つとすぐ、ほとんど直感に頼ったやり方でイメージしながら腕を動かし、力を放った。
子供たちがいる場所の地面から黒い壁がサッと立ち上がった。それは青白い雷光《らいこう》のようなものをまとってギラギラしている。
なんと、能力がズバ抜けて高い王の血統にしか作れないと言われる、結界。同族である吸血鬼の侵入をも防げるものだが、代々受け継がれてゆくうちに効力は薄《うす》れていったと聞いていた。
それなのに、こんなに強力そうなものが、あっという間に・・・できた。できるような気がしてやってみたら・・・ほんとに出来た。しかも、こんなに容易《たやす》く・・・俺の体に何が起こった?
この急な展開と事態に、湖のほとりに残っていた吸血鬼の兵団は騒然《そうぜん》としている。空から堂々と舞い戻ってきた反逆者は、急に不敵な男に変わっていて、苦しそうに歪《ゆが》んでいた顔まで今は臆《おく》するほど凛々《りり》しい。
そこへ、それらのリーダーと、同行した男も戻ってきた。途中、湖の方に巨大なエネルギーがいっきに放出されるのを見た。それは天へ向かって走り抜けるように聳《そび》え立ち、青白い稲光《いなびか》り状のものを頻繁《ひんぱん》にチラつかせている。
二人は驚愕《きょうがく》した。捕まえていた子どもたちはみな、見たこともないその結界に守られているのだから。
「陽の光をものともせず、能力は数十倍に跳ね上がる。あの男、やはり種特異性吸血鬼《パーフェクト・ヴァンパイア》に・・・?!」
周りの木々に絡《から》まるものや藪《やぶ》の中、地面を張っている蔓《つる》という蔓が突然勢いよく動き出す。あらゆる蔓《つる》が絡《から》み合いながら力強く空中を駆け回り、堅牢《けんろう》な檻《おり》を築《きず》き上げて吸血鬼の兵団を閉じ込めた。
「一瞬で・・・?!」
圧倒的・・・!
「この辺り一帯には、俺が狩りをするために力を与えた植物が張られている。いわば俺の巣だ。もうすぐ陽が射してくる。そのまま灰にしてやる。」
吸血鬼兵団のリーダーは唖然《あぜん》とレインを見つめている。
こいつ、何も知らず話も呑《の》み込めていない感じだったが・・・ ただ怒りで熱くなっているだけか?
「正気か、そこで力を使い続けていれば、お前も一緒に焼け死ぬぞ。」
「そうだな、もとよりどうでもいい。」
やはりこいつ、ただの投げやり・・・!
「わ、わかった、落ち着け。すでに手遅れだったと報告する。どうせもう、今さらどうあがいたところで、その女に利用価値はない。」
「この町には二度と来るな。次は容赦しないからな。」
解放してもらえた吸血鬼兵団はそろって東を見ると、光が射してくるのを恐れて去った。
空はもう、ぼんやりと白《しら》み初めていた。
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