1 / 12
〇 花のかおり
しおりを挟む
青紫色の小花に顔を近づけると、冷たい香りがすうっと鼻腔を抜けた。花穂をつくる植物は、甘い香りのラベンダーしか知らない。爽やかな香りに呼吸が深く落ち着いていく。
わたしのそばで、彼はささやく。
「花にくちづけて。さあ、目を閉じて──」
言われるがまま、まぶたを閉じる。くちびるに触れる花弁は、やわらかく脆い。
「何も考えないで。花にまかせて」
うなずくことももどかしい。わたしはそのまま微睡みに落ち、次に目覚めたときには。
自分がどこのだれであるかということまですっかりと、忘れ去っていた。
わたしのそばで、彼はささやく。
「花にくちづけて。さあ、目を閉じて──」
言われるがまま、まぶたを閉じる。くちびるに触れる花弁は、やわらかく脆い。
「何も考えないで。花にまかせて」
うなずくことももどかしい。わたしはそのまま微睡みに落ち、次に目覚めたときには。
自分がどこのだれであるかということまですっかりと、忘れ去っていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる