【コミカライズ】人違いで求婚された令嬢は、円満離縁を待ち望む

渡波みずき

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 寄宿学校から合格通知が届いても、通わせてもらえる気配はなかった。仕事さえすれば、食事は他の女中と同じものをもらえた。部屋に戻ってからは藁の敷布団のうえで泥のように眠り、まだ皆が起き出す前の朝陽を頼りに何度も本を読みかえす。日々はその繰り返しだった。

 やわらかかった指先にはひび割れが目立つようになり、爪のツヤは消えた。使用人の入浴に高価な固形石鹸を使わせるほど、叔父一家は寛容ではなかった。冷水浴ばかりのせいで、艶やかだった髪はすぐにごわごわにふくらんで見る影もなくなった。

 コルネリアは暖炉と厨房の灰を集め、灰と廃油から液体石鹸を作っては、こっそりと使用人たちに配った。一度目は火起こしが大変だったが、二度目からは料理長がかまどを使わせてくれるようになった。庭師が剪定したハーブをくれ、次の石鹸からはずいぶんとにおいがマシになった。それでも、髪や肌の艶は戻らなかった。

 16歳になる貴族子女は、建国記念日に王宮で開かれる宴に招かれ、社交界にデビューするものだ。父に代わり、叔父が爵位を継承したからと言って、貴族でなくなったわけではない。だが、コルネリアは自分が宴に招待されるとはちらとも考えてもいなかった。

 招待状が届いたことも知らずに過ごしていたところに、思いがけずディアナからお呼びがかかった。癇癪持ちの彼女を怒らせぬようにと、慌てて部屋に向かうと、そこには顔見知りの仕立て屋のマダムと針子たちが勢揃いしていた。

「あなた、今年デビューでしょ? あたしが付き添いをしてあげるわ」

 頭ごなしに言われて、返事もできずにいるコルネリアを、マダムたちが気の毒そうに見つめている。よもや、先代男爵の令嬢が同じ屋敷で使用人をさせられているとは思いもよらなかっただろう。

 視線を浴びて恥じ入っているうちにも、ディアナはまるで自分の衣裳でも仕立てるように、デビュタント用の白いドレスのデザインについて注文をつけていく。

 袖のかたち、襟ぐりの深さに、裾の広がり具合、レースの質に生地の種類。並べ立てられる内容に、コルネリアは意外な気持ちになった。ディアナは自分のうつくしさを誇っているし、自分以外に金をかけるのが大嫌いだ。それなのに、コルネリアのデビューのためにこんなに良くしてくれるだなんて、思わなかった。
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