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コルネリアがワレリア男爵令嬢として生を受けたのは、いまから16年前だ。バロー家は古い家柄ではあるものの、決して豊かではなかった。父は主に農業で暮らす男爵領の民のために、いかに領地経営をするかばかり考えているような真面目な男で、母はいつも父を支えている穏やかで勤勉なひとだった。
父母は長年子宝に恵まれず、遅く生まれたコルネリアには他に兄弟がなかった。いつかは婿を取るつもりだったが、さして裕福でもない田舎領地に来てくれる若者がいるのかと、父母はいつも不安そうだった。
だから、コルネリアはこころに決めていた。15歳になったら、王都の寄宿学校に通い、学び舎のなかで優秀な婿がねを見つけるのだと。寄宿学校は、国じゅうの英才が集まる共学校だ。出自の貴賤は問われない。もしも選んだ相手が平民ならば、男爵家の跡目は自分が継げばいい。
寄宿学校の入学試験に合格するためにと、日夜研鑽を積むなかで、コルネリアは思いがけず読書に取り憑かれた。家にある本は読み尽くし、ひとの家に招かれれば書棚にばかり目を奪われる。
娘に甘い両親は、領地の収穫量が上向くたびに装飾品のかわりに高価な本を買い与えた。
15歳になり、寄宿学校の入学試験を受けるため、コルネリアが家を留守にしているあいだに、悲劇は起きた。領地に野犬の群れが出たのだ。
ちょうど視察に出ていた両親のすぐ近くで、農民の幼な子が野犬に襲われかけた。母はとっさにその子を庇った。父は徒手空拳でふたりの前に身を投げ出した。
父はあっけなく噛み殺され、母は駆けつけた農夫たちのおかげで助かり、幼な子を守り切った。しかしながら、足には深い咬傷を負い、二度と床から起き上がることなく、傷口からの感染症で儚くなった。
男爵とその夫人を失ったバロー家にいち早く駆けつけたのが、現男爵となった叔父一家だった。彼らは客室に陣取って年長者としての権限をふりかざし、喪主であるコルネリアそっちのけで二度の葬儀をとりしきった。そのうち、いつのまにか屋敷の主寝室と女主人の部屋に居座って、あるはずもない遺言書を手に、国王から男爵の爵位をいただいていた。
コルネリアは日当たりの良い部屋を追いやられ、屋根裏に移り住んだ。かわりに、これまでの部屋は従姉のディアナが使い始めた。この家に住まなかったのは、騎士となった従兄だけだ。
父母は長年子宝に恵まれず、遅く生まれたコルネリアには他に兄弟がなかった。いつかは婿を取るつもりだったが、さして裕福でもない田舎領地に来てくれる若者がいるのかと、父母はいつも不安そうだった。
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ちょうど視察に出ていた両親のすぐ近くで、農民の幼な子が野犬に襲われかけた。母はとっさにその子を庇った。父は徒手空拳でふたりの前に身を投げ出した。
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