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青年の名を突き止めたい気はあったが、書斎はコルネリアの担当範囲外だ。貴族録は忍び込んでまで読むものではない。
翌朝目が覚めたときには、コルネリアはすっかりと女中としての日常に戻っていた。叔母やディアナの部屋の掃除をして、手分けして敷布を洗い、台所の手伝いに入る。屋敷で使う水は、井戸から汲み上げている。王都の水路とは無縁だ。
日が経つと、あの出会いが夢だったような気になる。けれど、屋根裏部屋で書名が目に入るたびに面影を思い出す。ほんの少しの時間を共に過ごしただけなのに、執着しすぎだと、自分でも思う。それなのに、忘れられない。
建国記念日から一週間経ったころ、不意にディアナから呼び出された。いつもの八つ当たりかと、身構えたコルネリアに、彼女は得意げな顔でいくつかの小箱を示して見せた。
「あんたもやっぱり、あたしが妬ましかっただけなのね! ほら、見なさいよ。みんな、あたしに夢中なのよ!」
揃いの真珠の首飾りと耳飾り、花を象ったブローチ、派手な意匠の首飾り。どれもそこまで値が張るものではない。揃いの装飾品はパリュールにしては点数が少ない。ブローチの中央の黄水晶は、さいきん鉱山が増えて安価になってきたと聞く。派手な品は、小さな石で煌めかせているだけだ。もう少し工夫が欲しい。
黙って見定め、そっと息を吐く。どれもが男性から贈られたらしいが、このようすでは、ディアナは軽く見られている。パリュールは特別に注文して、時間をかけて作らせるものだ。一週間やそこらで手に入るなら、出来合いの品を寄せ合わせたに過ぎない。ブローチも値崩れしたものだろうし、最後のは論外だ。でも、そんな考察はおくびにも出さず、コルネリアは微笑んだ。
「そうですね、それはようございました」
にっこりと流されたのが気に食わなかったのか、ディアナは他にもあるのだと、侍女に命じて取ってこさせる。どうやら、宝石のついた贈り物だけ見せてよこしたらしい。花束についていたという手紙やら何やらのなかに、ひとつだけ、目に止まるものがあった。
「ああ、それ? そんなもの贈ってよこすなんて、ふざけてるわよね。でも、あんたにはお似合いね。どうせ捨てるつもりだし、欲しけりゃどうぞ?」
めざとくコルネリアの視線に気づいて、ディアナが笑う。コルネリアは言い返すことばも忘れて、小箱のなかから、贈り物を手に取った。
翌朝目が覚めたときには、コルネリアはすっかりと女中としての日常に戻っていた。叔母やディアナの部屋の掃除をして、手分けして敷布を洗い、台所の手伝いに入る。屋敷で使う水は、井戸から汲み上げている。王都の水路とは無縁だ。
日が経つと、あの出会いが夢だったような気になる。けれど、屋根裏部屋で書名が目に入るたびに面影を思い出す。ほんの少しの時間を共に過ごしただけなのに、執着しすぎだと、自分でも思う。それなのに、忘れられない。
建国記念日から一週間経ったころ、不意にディアナから呼び出された。いつもの八つ当たりかと、身構えたコルネリアに、彼女は得意げな顔でいくつかの小箱を示して見せた。
「あんたもやっぱり、あたしが妬ましかっただけなのね! ほら、見なさいよ。みんな、あたしに夢中なのよ!」
揃いの真珠の首飾りと耳飾り、花を象ったブローチ、派手な意匠の首飾り。どれもそこまで値が張るものではない。揃いの装飾品はパリュールにしては点数が少ない。ブローチの中央の黄水晶は、さいきん鉱山が増えて安価になってきたと聞く。派手な品は、小さな石で煌めかせているだけだ。もう少し工夫が欲しい。
黙って見定め、そっと息を吐く。どれもが男性から贈られたらしいが、このようすでは、ディアナは軽く見られている。パリュールは特別に注文して、時間をかけて作らせるものだ。一週間やそこらで手に入るなら、出来合いの品を寄せ合わせたに過ぎない。ブローチも値崩れしたものだろうし、最後のは論外だ。でも、そんな考察はおくびにも出さず、コルネリアは微笑んだ。
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「ああ、それ? そんなもの贈ってよこすなんて、ふざけてるわよね。でも、あんたにはお似合いね。どうせ捨てるつもりだし、欲しけりゃどうぞ?」
めざとくコルネリアの視線に気づいて、ディアナが笑う。コルネリアは言い返すことばも忘れて、小箱のなかから、贈り物を手に取った。
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