26 / 161
わたしのつなぎたい手
【第23話:雷神の継承】
しおりを挟む
《ペルクール》(Perkur)
名詞(固有名詞)
東方古代神話において雷霆を司る神。
「稲妻を裂く者」「裁く者」とも称され、戦場における加護を授けるとされる。
特定の血統に顕れる“雷の徴”は、この神の恩寵の証であり、強大な加護と戦闘能力をもたらすという。
古より、伝説的戦士の右手にその力が宿ったとされる。
ーーーーー
シルフェリアから戻る3人が、夜霧に騎乗し風より速く駆け抜ける。
本気の走りと違い、騎乗されている夜霧の歩幅は控えめだ。丁寧に走っているように見える。
これが本来の獣の走り方なら、どれほどの速度がでることか。
「あそこで休憩しよう」
行きには通らなかった川沿いの道で、少し広場になっている小さな滝をみつけアイギスが止めた。
徐々に速度を落とし停まると、ちょっとほっとしたアミュアがアイギスに抱き上げられ降ろされる。
ユアも降りてアイギスの降ろしていた荷物を探る。
そろそろお昼なので、食事の準備だ。
「ここいらには、白い『ピアシングヘェア』がでる。強敵だが、肉が旨い。」
初耳のアミュアはふむふむと頷く。ユアは村でよく狩に伴われた記憶がある。
「あ~あれおいしいよね!じゃあフリットにする準備しておくね、そこいらで野草も摘んでおくよ」
よだれをたらしそうな力の抜けた顔のユアが続けた。
「アミュアは一緒に来るか?」
狩に使う手投げの槍を準備しつつ、誘うアイギス。
アミュアが料理は手伝えないと知っていた。
「おともします」
両手を胸の前にしっかり握り意識表明のアミュア。
ちょっと楽しみなのかふわっと笑う。
「白いうさぎですか、かわいいんですねきっと」
あーといった顔で目を合わせたアイギスとユア。
そっと目をそらした。
「くすん…うさぎコワイ…」
案の定しょんぼりしてるアミュアをそっとなでなでするユア。
アイギスが抱え降ろしたウサギと言うには大きすぎる大型犬のような体躯。
すでに血抜きされ、首はなかった。
『ピアシングヘェア』それも白い上位種は特に大型で凶暴だ。
額の角は素材になるが、ねじ曲がった白い螺旋は悪意の塊だ。恐ろしいほどの速度で突進し、うっかり近づいた旅人を串刺しにする。赤い瞳には濃厚な殺意が宿るという。
ほほえましいアミュアに意図せず口元が緩むアイギスであった。
思ったよりも肉が獲れたので、食べきれない部分は夜霧にもおすそ分けして綺麗になくなった。
お腹いっぱいになり眠くなったアミュアは、横すわりのユアの膝枕でむにゃむにゃしていた。
焚火をはさみ反対側に座るアイギスの横には丸まった夜霧もいる。
アミュアを見てゆるんでいた表情を引き締め、ユアに告げる。
「ユアに話しておくことがもう一つある。」
真剣なアイギスの表情を見て、ユアも少し姿勢を正す。
「父上のことだ。」
少し寂しそうな瞳の色からアイギスの父への敬意を受け取り、ぐっとおなかに力が入る。
「ラドヴィス様は特殊な力をお持ちだった。」
アイギスの言葉には若干の東方異国のなまりがある。
こちらの言葉を発音するのは少し苦手なのだ。
「右手に宿る聖なる雷で邪悪を撃つ。影獣を退ける強い力だ。」
短い言葉の連なりだが、丁寧に伝えようとする誠意がうかがえて、ユアも真剣に辛抱強く聞いた。
もともとシルヴァ傭兵団は南西辺境のとある神殿にて発足された騎士団であった。
奇跡の力は発足前から団長の右手に宿っていて、その力をあてにした神殿のテコ入れであった。
新興のラドヴィスたちを面白くなく思い、追い出そうとする勢力も神殿には居た。
一時は穏便に去ろうと、シルヴァ傭兵団として独立した彼らだった。
だが一部神殿の敵対派閥が伝説の悪意ある影を招き入れ、ラドヴィスを打とうとした。
影獣たちの王は人の形をしていて、人語を解し悪魔の獣と恐れられていた。
長い戦いの果て王を討ち果たしたラドヴィスは、自らも致命傷を負った。
その命の最後にラドヴィスが愛おしそうに添えた手から、エルナのお腹に祝福のような光が移った。
その後のエルナには変化がなく、おそらくその力はユアに継承されたのではと、秘密を知るエルナとアイギスは考えていた。
すべて話し終えたアイギスがユアに問う。
「そういった力に覚えはないか?」
短く問うアイギスに真剣な目で答えるユア。
かつての村で戦った熊の獣を思い出していた。
「一度だけ…村に初めて行ったときにでた影の獣に使ったのだと思う。」
すこし自信がないのはすぐに気を失い、記憶が曖昧なため実感がないのだ。
カーニャからも説明は受けたので、今では自分の行ったことと認識している。
「雷かどうか判らないけど、すごい光が出たのは覚えている」
じっと見つめたアイギスが告げる。
「できるなら今後は簡単に使わないことだ。ラドヴィス様は命を削る技ともおっしゃっていた。」
一度瞬きして続けるアイギス。
「使えば身を削る。だが――あの方は、己の命が尽きるまで戦った。」
目を伏せると、わずかに眉が揺れるアイギス。
「数回で影響はないとは思うが慎重にな。神の御力はみだりに振りかざしていいものではない。」
少しだけ力を抜いたユアは、そっとアミュアの髪をなでながら答える。
「アミュアが怪我をして、かっとなったあたしの右手から金色の力がでてきたの」
アミュアのおでこに降りてきている銀糸の人房を、やさしく耳にかけ、続ける。
「たぶん普通には使おうとしてもできないと思う。心配してくれてありがとうにいさん」
視線をもどしたユアは、かつて村で後ろをついて回った頃のようにアイギスを呼んだ。
ふと思い立って懐から封筒をだすユア。
大事そうに開いてアイギスに渡す。
「おかあさんからの手紙。村で起きたことを端的に書いてあった。」
受け取りゆっくり読み下すアイギス。
末尾の方の私信のような部分には触れず、内容を覚えこれも壊れ物を扱うかのように丁寧にユアに返す。
「ありがとうエルナ様ののこしてくれた情報、無駄にはしない。」
ふと思いついて、ユアに尋ねた。
「ユアは団の暗号を習っているか?」
はてなはてなのユアをみて、アイギス。
「いずれ機会があれば教えるが、その手紙にはいくつか暗号が織り込まれている。」
はっとするユア。
「名前と方位。おそらく街の名前だ。」
それ以上は語らないアイギスとユアの視線が鋭くなっていく。
「そこに敵がいるのね。どこなの?」
言葉少なに尋ねるユア。
「ミルディス公国の公都エルガドールだ」
しんっと空気が緊張を帯びる。
今日も晴れた秋空に静かに高い雲が流れていた。
名詞(固有名詞)
東方古代神話において雷霆を司る神。
「稲妻を裂く者」「裁く者」とも称され、戦場における加護を授けるとされる。
特定の血統に顕れる“雷の徴”は、この神の恩寵の証であり、強大な加護と戦闘能力をもたらすという。
古より、伝説的戦士の右手にその力が宿ったとされる。
ーーーーー
シルフェリアから戻る3人が、夜霧に騎乗し風より速く駆け抜ける。
本気の走りと違い、騎乗されている夜霧の歩幅は控えめだ。丁寧に走っているように見える。
これが本来の獣の走り方なら、どれほどの速度がでることか。
「あそこで休憩しよう」
行きには通らなかった川沿いの道で、少し広場になっている小さな滝をみつけアイギスが止めた。
徐々に速度を落とし停まると、ちょっとほっとしたアミュアがアイギスに抱き上げられ降ろされる。
ユアも降りてアイギスの降ろしていた荷物を探る。
そろそろお昼なので、食事の準備だ。
「ここいらには、白い『ピアシングヘェア』がでる。強敵だが、肉が旨い。」
初耳のアミュアはふむふむと頷く。ユアは村でよく狩に伴われた記憶がある。
「あ~あれおいしいよね!じゃあフリットにする準備しておくね、そこいらで野草も摘んでおくよ」
よだれをたらしそうな力の抜けた顔のユアが続けた。
「アミュアは一緒に来るか?」
狩に使う手投げの槍を準備しつつ、誘うアイギス。
アミュアが料理は手伝えないと知っていた。
「おともします」
両手を胸の前にしっかり握り意識表明のアミュア。
ちょっと楽しみなのかふわっと笑う。
「白いうさぎですか、かわいいんですねきっと」
あーといった顔で目を合わせたアイギスとユア。
そっと目をそらした。
「くすん…うさぎコワイ…」
案の定しょんぼりしてるアミュアをそっとなでなでするユア。
アイギスが抱え降ろしたウサギと言うには大きすぎる大型犬のような体躯。
すでに血抜きされ、首はなかった。
『ピアシングヘェア』それも白い上位種は特に大型で凶暴だ。
額の角は素材になるが、ねじ曲がった白い螺旋は悪意の塊だ。恐ろしいほどの速度で突進し、うっかり近づいた旅人を串刺しにする。赤い瞳には濃厚な殺意が宿るという。
ほほえましいアミュアに意図せず口元が緩むアイギスであった。
思ったよりも肉が獲れたので、食べきれない部分は夜霧にもおすそ分けして綺麗になくなった。
お腹いっぱいになり眠くなったアミュアは、横すわりのユアの膝枕でむにゃむにゃしていた。
焚火をはさみ反対側に座るアイギスの横には丸まった夜霧もいる。
アミュアを見てゆるんでいた表情を引き締め、ユアに告げる。
「ユアに話しておくことがもう一つある。」
真剣なアイギスの表情を見て、ユアも少し姿勢を正す。
「父上のことだ。」
少し寂しそうな瞳の色からアイギスの父への敬意を受け取り、ぐっとおなかに力が入る。
「ラドヴィス様は特殊な力をお持ちだった。」
アイギスの言葉には若干の東方異国のなまりがある。
こちらの言葉を発音するのは少し苦手なのだ。
「右手に宿る聖なる雷で邪悪を撃つ。影獣を退ける強い力だ。」
短い言葉の連なりだが、丁寧に伝えようとする誠意がうかがえて、ユアも真剣に辛抱強く聞いた。
もともとシルヴァ傭兵団は南西辺境のとある神殿にて発足された騎士団であった。
奇跡の力は発足前から団長の右手に宿っていて、その力をあてにした神殿のテコ入れであった。
新興のラドヴィスたちを面白くなく思い、追い出そうとする勢力も神殿には居た。
一時は穏便に去ろうと、シルヴァ傭兵団として独立した彼らだった。
だが一部神殿の敵対派閥が伝説の悪意ある影を招き入れ、ラドヴィスを打とうとした。
影獣たちの王は人の形をしていて、人語を解し悪魔の獣と恐れられていた。
長い戦いの果て王を討ち果たしたラドヴィスは、自らも致命傷を負った。
その命の最後にラドヴィスが愛おしそうに添えた手から、エルナのお腹に祝福のような光が移った。
その後のエルナには変化がなく、おそらくその力はユアに継承されたのではと、秘密を知るエルナとアイギスは考えていた。
すべて話し終えたアイギスがユアに問う。
「そういった力に覚えはないか?」
短く問うアイギスに真剣な目で答えるユア。
かつての村で戦った熊の獣を思い出していた。
「一度だけ…村に初めて行ったときにでた影の獣に使ったのだと思う。」
すこし自信がないのはすぐに気を失い、記憶が曖昧なため実感がないのだ。
カーニャからも説明は受けたので、今では自分の行ったことと認識している。
「雷かどうか判らないけど、すごい光が出たのは覚えている」
じっと見つめたアイギスが告げる。
「できるなら今後は簡単に使わないことだ。ラドヴィス様は命を削る技ともおっしゃっていた。」
一度瞬きして続けるアイギス。
「使えば身を削る。だが――あの方は、己の命が尽きるまで戦った。」
目を伏せると、わずかに眉が揺れるアイギス。
「数回で影響はないとは思うが慎重にな。神の御力はみだりに振りかざしていいものではない。」
少しだけ力を抜いたユアは、そっとアミュアの髪をなでながら答える。
「アミュアが怪我をして、かっとなったあたしの右手から金色の力がでてきたの」
アミュアのおでこに降りてきている銀糸の人房を、やさしく耳にかけ、続ける。
「たぶん普通には使おうとしてもできないと思う。心配してくれてありがとうにいさん」
視線をもどしたユアは、かつて村で後ろをついて回った頃のようにアイギスを呼んだ。
ふと思い立って懐から封筒をだすユア。
大事そうに開いてアイギスに渡す。
「おかあさんからの手紙。村で起きたことを端的に書いてあった。」
受け取りゆっくり読み下すアイギス。
末尾の方の私信のような部分には触れず、内容を覚えこれも壊れ物を扱うかのように丁寧にユアに返す。
「ありがとうエルナ様ののこしてくれた情報、無駄にはしない。」
ふと思いついて、ユアに尋ねた。
「ユアは団の暗号を習っているか?」
はてなはてなのユアをみて、アイギス。
「いずれ機会があれば教えるが、その手紙にはいくつか暗号が織り込まれている。」
はっとするユア。
「名前と方位。おそらく街の名前だ。」
それ以上は語らないアイギスとユアの視線が鋭くなっていく。
「そこに敵がいるのね。どこなの?」
言葉少なに尋ねるユア。
「ミルディス公国の公都エルガドールだ」
しんっと空気が緊張を帯びる。
今日も晴れた秋空に静かに高い雲が流れていた。
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
これでもう、『恥ずかしくない』だろう?
月白ヤトヒコ
恋愛
俺には、婚約者がいた。
俺の家は傍系ではあるが、王族の流れを汲むもの。相手は、現王室の決めた家の娘だそうだ。一人娘だというのに、俺の家に嫁入りするという。
婚約者は一人娘なのに後継に選ばれない不出来な娘なのだと解釈した。そして、そんな不出来な娘を俺の婚約者にした王室に腹が立った。
顔を見る度に、なぜこんな女が俺の婚約者なんだ……と思いつつ、一応婚約者なのだからとそれなりの対応をしてやっていた。
学園に入学して、俺はそこで彼女と出逢った。つい最近、貴族に引き取られたばかりの元平民の令嬢。
婚約者とは全然違う無邪気な笑顔。気安い態度、優しい言葉。そんな彼女に好意を抱いたのは、俺だけではなかったようで……今は友人だが、いずれ俺の側近になる予定の二人も彼女に好意を抱いているらしい。そして、婚約者の義弟も。
ある日、婚約者が彼女に絡んで来たので少し言い合いになった。
「こんな女が、義理とは言え姉だなんて僕は恥ずかしいですよっ! いい加減にしてくださいっ!!」
婚約者の義弟の言葉に同意した。
「全くだ。こんな女が婚約者だなんて、わたしも恥ずかしい。できるものなら、今すぐに婚約破棄してやりたい程に忌々しい」
それが、こんなことになるとは思わなかったんだ。俺達が、周囲からどう思われていたか……
それを思い知らされたとき、絶望した。
【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】と、
【なにを言う。『恥ずかしい』のだろう?】の続編。元婚約者視点の話。
一応前の話を読んでなくても大丈夫……に、したつもりです。
設定はふわっと。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる