わたしのねがう形

Dizzy

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わたしがわたしになるまで

【第22話:すっかりのんびりな二人】

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 昨日の魔法学校での騒ぎも収まり、ミーナは学校の推薦状までもらい4人でホテルにもどったのだった。
ホテルのレストランで食事し、部屋に付属のお風呂もわいわい使った。
 翌日はカーニャが行きたいところがあるのでと別行動し、ユアも体がなまるからとハンターオフィスへ向かった。
残った二人で街を見て歩くことに。
「外壁のそとはあまり治安がよくないのよ。できれば出ないでね」
とカーニャはミーナとアミュアに言い、少しおめかしして出かけて行った。
「ねえさま‥もしかして昔の恋人にでも会いに行ったのかしら!?」
とは最近恋愛小説をよく読んでいるミーナ。
「大人のじじょーです」
とは分かっているのか不明なアミュア。
 残念ながら今日は一転曇り空が厚く広がりしっとりと暑い。
雨も警戒して、傘をもち外に出た。
ゆるやかな下り坂を二人で手をつなぎ歩いていく。
昨日見れなかったお店も冷やかしつつ、ゆっくり外壁近くまで来たのだった。
外壁内は基本的に市民でも裕福な世帯向けだ。
隅々まで心配りされた街で、治安もとてもよい。
公共の警備隊が警らもしている。
「ミーナの魔力はすごかったです。あれなら勉強したらすぐ魔法を使えそうでした」
 ニコニコとアミュアが褒めると、少し照れながらミーナが返す。
「魔法学校はあこがれだったの。ねえさまから色々聞いててね」
と尽きぬ会話を楽しみながら進んでいたのだ。
今日の二人も昨日とは少し違うが、小奇麗で涼し気な格好で出てきていた。
途中で仕入れた小物が紙袋に入って二人の片手をふさいでいる。
もちろん残りの手はつないでいるのだ。
はたから見たら少し裕福な姉妹と映るだろう。
アミュアの長い銀髪も、ミーナの帽子から漏れ落ちる金髪も豪華だ。
「ここいらには食事できるお店ないですね」
きょろきょろ周りを見渡しアミュア。
「戻って探そうか?進んでみる?あっちにお店いっぱいあるけど」
と外壁の外側を指さすミーナ。
 たしかに外壁の向こうも商店街になっており、食べれそうなお店も多い。
外壁の向こうは店舗が小さくなり、密度をあげているのだ。
「たしかハンターオフィスも近くに有ったので、食べたらユアを探しに行きましょう」
そういって壁の向こうの店舗を物色しだす二人。
壁を越えた所で二人の前に女性が現れる。
エプロンを付けた若い女性で、クリーム色のふわりとした髪をしていた。
「こんにちわ、観光の方ですか?よかったらお店紹介させてくれませんか?」
頭にはホワイトプリムが上品に乗っている。
身なりから警戒しないミーナが訊ねる。
「これからお食事と思っていましたの。いいお店がございますか?」
年齢のわりにしっかりした受け答えは、教育のたまものであろう。
にこり笑う女性が答えた。
「それでしたら丁度私共のお店があります。隠れ家的落ち着いたお店で、パスタがお勧めですよ」
慣れた調子でさらりと誘った。
「さあこちらですお嬢様にお姉さま」
そういって左手の路地に誘った。
お嬢様とお姉さまが気にいったのか、ニコニコでついていく二人。
路地は少しせまくなるが、よく掃除され小奇麗だった。
店舗も多く、小物を置いたり食事の店も多い。
ゆっくり軽い説明を入れながら案内する女性にすっかり警戒心を解いて従うのだった。
さらに少し進み、大通りが見えない曲がり角の奥に店はあった。
おしゃれな蔦がらみの窓が、レンガ色の木のドアに添えられている。
看板にはお酒の瓶も描かれ、夜はお酒のお店になるようだ。
ミーナは雑誌でみたおしゃれなお店に似てると、アミュアに説明しながら入店したのだった。
まだ時間が早いのか、薄暗い店内は他に客の姿はなかった。
「こちらをどうぞ」
と窓際のテーブルを案内され座ったのだった。

ちょっと量は少なかったが、宣言通りおいしいパスタであった。
二人は違う種類をたのみ、シェアしながら食べ終わった。
「こちらサービスです、どうぞごゆっくり」
と差し出されたのは果実水。
氷は入っていなかったが、ぬるくはなく爽やかにレモンが香った。
残念ながら持たなかったようで、外は雨が降り出す。
割と強めに降る雨を窓越しに見ていたアミュアが、ミーナの様子に気付く。
「おや、ミーナどうしましたか?」
ミーナが目をこすり眠そうにした。
「ちょっと‥‥食べすぎちゃったかな」
そう言って立ち上がろうとして、ガタンとテーブルに伏した。
一瞬で異常に気付いたアミュアが魔力感知の魔法を放つ。
薄暗い中アミュアの目が銀色の光を滲ませる。
(食べたものにも、周辺にも魔力はない。くすりかな)
いつもの流れで自然と腰のロッドを抜こうとして、持ってきていないことを思い出すアミュア。
すっと立ち上がった所で、奥から3人の男が現れた。
「どうして一人起きてる?飲まなかったのか?」
「いえ、飲んだのは確認したのですが。」
一番大きなひげ面が、隣の細い男に聞いた。
「へへへ、すげえ上玉だな。サルビアはいい仕事してくれる」
最後の身長が低い男が下卑た声を出した。
(これはまずいので、応援をよびましょう)
思考と同時にアミュアから銀色の魔力があふれ出し、椅子とテーブルが押しのけられる。
全然本気ではないのだが、3人は驚き腰の武器を抜いた。
「魔法使いか?!まずい黙らせろ、殺すなよ!」
大きな髭が言った頃には、アミュアの魔法探知が全力発動。
ハンターオフィスまで余裕で届きそうなパワーであった。
(うんユアはあそこか。これでユアも気づくはず)
そう思って窓の外を見ていると、小男と細いのがアミュアに向かいつっこんでくる。
アミュアから見るとお粗末なのだが、ミーナを守りたいので防御を選択。
無詠唱の防御結界が発動し、男たちをはじいた。
白く輝くそれは半球状にミーナとアミュアを囲むのだった。
(あ、これうごかせないや)
ユアの指導もあり、必要な事以外は戦闘中口に出さないアミュア。
(いろいろ壊したら怒られそうだし、ユアを待とう)
そう思いミーナを抱き上げて確認。
呼吸に苦しそうな所はない。
睡眠薬であろう。
結界の外ではアミュアの気遣いを無駄にして、がちゃんがちゃんと色々壊しながら、結界を破壊しようとする3人が見えた。
(ところで、どうしてわたしは薬がきかなかったのだろう)
そんな事をのんびり考えているアミュアであった。
アミュアの結界を抜くには上級魔法が必要である。
3人では何をしても無理であろう。

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