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わたしがわたしになるまで
【第45話:あらたなる出会い】
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「ユア!確保!」
アミュアが叫ぶ。
ノアが覚えのある銀色の気配。
「ガッテン!」
黒い獣からユアが飛び出して後ろに回り込もうとする。
凄まじい速度でノアの背中に迫る。
回転して正対しようとするのだが、近づいて螺旋の様にノアに巻き付く進路を取るユアを追いきれない。
「なにするの!」
ノアが叫んだ時には、左手を取られ後ろに回り込まれていた。
「はい、いっちょ上がり。大人しくしてね黒アミュちゃん」
ユアは優しくふんわり笑ってノアを拘束した。
左手をひねり上げ後ろに回ったが、ノアが痛くないように加減されていた。
黒い獣から同時に飛び出していたアミュアも、遂にノアの前まで来た。
「これでもくらえ!」
アミュアの右拳は後ろに引かれ上体が限界までねじり上げられ、踏み込みと同時に身体強化をまとい体重の乗った右ストレートとなりノアの顔面に迫った。
これは痛そう、と思ったノアが目を閉じ顔をしかめると。
パン!
と音だけが鳴り、痛みは来なかった。
「ちょっとアミュア。それ可愛そうだから!どうして殴るの?」
アミュアの右拳は、ユアの左手に受け止められプルプルしている。
ノアの顔にわずかという所で止められていた。
「いえ、意識を刈り取っておこうかと思いました」
無表情にアミュアが言う。
「いや、その力で殴ったら命も刈り取っちゃうよ!?」
アミュアは実はソリスから指導を受け、魔力切れでも生き延びれるようにと、体術も習っていたのだ。
そこに最近使えるようになり、ユアに指導を受けたラウマの身体強化が乗ると、そこいらの前衛ハンターを超える攻撃力を誇るのだった。
ノアは事情が分からず目を白黒して2人を交互に見ていた。
「ちっ、仕方ありません。今は勘弁してあげます。命拾いしましたねノア」
「今舌打ちしたよね!?ほら!?命かかってたよね!?」
ユアは思いがけないアミュアの攻撃性にちょっとびっくりしたのだった。
「なんかイライラするのです、その黒いのを見ると」
と、結構酷いことを言われるノアであった。
ノアの拘束を解き、シルヴァ傭兵団流の拘束術でロープをかけるユア。
無駄なく身動き取れないよう縛り上げた。
「ごめんね暴れられると困るから。痛くないかな?」
とユアはノアにも優しいのだが、容赦は無く拘束し縄をマントで隠した。
連れて歩いても不審じゃないよう配慮しているのだ。
「まあ‥一旦そこで宿を取ろうか?どうせ泊まるところだったし」
ユアの言葉に従い、ロープで上半身が動けないノアを夜霧に乗せ歩いていくのだった。
以前に泊まった部屋とは別の3人部屋を取り、入室するユア達。
「3人部屋ってほど大きくないね。ベッド狭そう‥‥」
とユアはテンション低め。
拘束しているノアは一番奥のベッドに座らせた。
「ノアちゃんだよね?アミュアに聞いてたよ。暴れないならロープ解くけどどうする?」
ここまで大人しく付いてきたノアは、じっとユアを見る。
「暴れないし、逃げないからほどいて欲しい。」
静かにユアに告げる。
アミュアを見ないのは、ノアもなんだかアミュアが嫌いだからだった。
以前の夜に喧嘩別れして、そのままの感情なのだった。
アミュアもノアもツンとして、視線を合わせない。
「ユアみてください、テラスは前よりひろいです」
外を見に行ったアミュアが呼ぶ。
すっと立ち上がり、何でもないようにノアの手を取る。
「行ってみよ。ノアちゃんも来て」
そう言ってノアの手を引きながらテラスに出るユア。
「あたしはユア。あなたをノアって呼ぶね。あたしのこともユアって呼んでね」
にっこり言うユアは、ぽかぽかして温かく思った通り果物のような甘酸っぱい匂いを感じたノアも笑顔になる。
「うんわかった」
なんだか最初の頃のアミュアみたいだなと、ユアはこっそり思うのだった。
2人は同じ様な体格だが、先ほどの体術を見た後では抵抗する気もしないノアであった。
テラスは部屋と同じくらい広く、外用テーブルセットが一組あり3人で座れるようになっていた。
アミュアは既に座っており、ユアも隣に座った。
ノアの手を離さないので、引かれて最後の椅子に掛けた。
「どうして手をつないでるの?」
ちょっとだけぷくっとしてアミュア。
やきもちである。
「じゃ、アミュアもつなごう!」
と、何でもないようにアミュアの右手を左手で取りユア。
その瞬間光が円となり3人を包んだ。
気せずしてラウマの望み通り、円環の奇跡を始めてしまったユアであった。
3人の外側にも大きな光の輪ができ、辺りをまぶしいほどの金色が包み込んだ。
瞬間アミュアとノアはあの暗黒空間とも言える紫の大地に再び立っていた。
「ユア?どこいったの!?」
ユアが見当たらないので、あわててアミュアが呼びかけた。
ノアも状況が分からずキョロキョロしていた。
『ここは特別な空間。時間と世界から切り離されています』
そのアミュアともノアとも少しだけ違う声は、アミュアもよく知るラウマの声だった。
ノアはやっぱり理解を超えていてぽかんと上から降りてくるラウマを見つめていた。
そうして遂に同じ顔の3人が揃ったのであった。
アミュアが叫ぶ。
ノアが覚えのある銀色の気配。
「ガッテン!」
黒い獣からユアが飛び出して後ろに回り込もうとする。
凄まじい速度でノアの背中に迫る。
回転して正対しようとするのだが、近づいて螺旋の様にノアに巻き付く進路を取るユアを追いきれない。
「なにするの!」
ノアが叫んだ時には、左手を取られ後ろに回り込まれていた。
「はい、いっちょ上がり。大人しくしてね黒アミュちゃん」
ユアは優しくふんわり笑ってノアを拘束した。
左手をひねり上げ後ろに回ったが、ノアが痛くないように加減されていた。
黒い獣から同時に飛び出していたアミュアも、遂にノアの前まで来た。
「これでもくらえ!」
アミュアの右拳は後ろに引かれ上体が限界までねじり上げられ、踏み込みと同時に身体強化をまとい体重の乗った右ストレートとなりノアの顔面に迫った。
これは痛そう、と思ったノアが目を閉じ顔をしかめると。
パン!
と音だけが鳴り、痛みは来なかった。
「ちょっとアミュア。それ可愛そうだから!どうして殴るの?」
アミュアの右拳は、ユアの左手に受け止められプルプルしている。
ノアの顔にわずかという所で止められていた。
「いえ、意識を刈り取っておこうかと思いました」
無表情にアミュアが言う。
「いや、その力で殴ったら命も刈り取っちゃうよ!?」
アミュアは実はソリスから指導を受け、魔力切れでも生き延びれるようにと、体術も習っていたのだ。
そこに最近使えるようになり、ユアに指導を受けたラウマの身体強化が乗ると、そこいらの前衛ハンターを超える攻撃力を誇るのだった。
ノアは事情が分からず目を白黒して2人を交互に見ていた。
「ちっ、仕方ありません。今は勘弁してあげます。命拾いしましたねノア」
「今舌打ちしたよね!?ほら!?命かかってたよね!?」
ユアは思いがけないアミュアの攻撃性にちょっとびっくりしたのだった。
「なんかイライラするのです、その黒いのを見ると」
と、結構酷いことを言われるノアであった。
ノアの拘束を解き、シルヴァ傭兵団流の拘束術でロープをかけるユア。
無駄なく身動き取れないよう縛り上げた。
「ごめんね暴れられると困るから。痛くないかな?」
とユアはノアにも優しいのだが、容赦は無く拘束し縄をマントで隠した。
連れて歩いても不審じゃないよう配慮しているのだ。
「まあ‥一旦そこで宿を取ろうか?どうせ泊まるところだったし」
ユアの言葉に従い、ロープで上半身が動けないノアを夜霧に乗せ歩いていくのだった。
以前に泊まった部屋とは別の3人部屋を取り、入室するユア達。
「3人部屋ってほど大きくないね。ベッド狭そう‥‥」
とユアはテンション低め。
拘束しているノアは一番奥のベッドに座らせた。
「ノアちゃんだよね?アミュアに聞いてたよ。暴れないならロープ解くけどどうする?」
ここまで大人しく付いてきたノアは、じっとユアを見る。
「暴れないし、逃げないからほどいて欲しい。」
静かにユアに告げる。
アミュアを見ないのは、ノアもなんだかアミュアが嫌いだからだった。
以前の夜に喧嘩別れして、そのままの感情なのだった。
アミュアもノアもツンとして、視線を合わせない。
「ユアみてください、テラスは前よりひろいです」
外を見に行ったアミュアが呼ぶ。
すっと立ち上がり、何でもないようにノアの手を取る。
「行ってみよ。ノアちゃんも来て」
そう言ってノアの手を引きながらテラスに出るユア。
「あたしはユア。あなたをノアって呼ぶね。あたしのこともユアって呼んでね」
にっこり言うユアは、ぽかぽかして温かく思った通り果物のような甘酸っぱい匂いを感じたノアも笑顔になる。
「うんわかった」
なんだか最初の頃のアミュアみたいだなと、ユアはこっそり思うのだった。
2人は同じ様な体格だが、先ほどの体術を見た後では抵抗する気もしないノアであった。
テラスは部屋と同じくらい広く、外用テーブルセットが一組あり3人で座れるようになっていた。
アミュアは既に座っており、ユアも隣に座った。
ノアの手を離さないので、引かれて最後の椅子に掛けた。
「どうして手をつないでるの?」
ちょっとだけぷくっとしてアミュア。
やきもちである。
「じゃ、アミュアもつなごう!」
と、何でもないようにアミュアの右手を左手で取りユア。
その瞬間光が円となり3人を包んだ。
気せずしてラウマの望み通り、円環の奇跡を始めてしまったユアであった。
3人の外側にも大きな光の輪ができ、辺りをまぶしいほどの金色が包み込んだ。
瞬間アミュアとノアはあの暗黒空間とも言える紫の大地に再び立っていた。
「ユア?どこいったの!?」
ユアが見当たらないので、あわててアミュアが呼びかけた。
ノアも状況が分からずキョロキョロしていた。
『ここは特別な空間。時間と世界から切り離されています』
そのアミュアともノアとも少しだけ違う声は、アミュアもよく知るラウマの声だった。
ノアはやっぱり理解を超えていてぽかんと上から降りてくるラウマを見つめていた。
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