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第12話
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待ち受ける側の気持ちとはこういうものなのかと、鞘に収まった剣の柄を握っている手にじんわり汗が滲んだ。
もう一度、柄を掴み直し、前方にあるドアを睨みつける。
もうすぐ勇者御一行が来る頃合いだ。もしや魔王もこちらに向かってくるかと思ったが、彼の気配は感じられなかった。
魔王城で私たち勇者パーティーを待ち構えていた魔王の心情とはこのように切迫した面持ちだったのかもしれない。
しかし、魔王は使命により勇者を待ち構えていたが、それは私のちっぽけな悩みとは比べようのない重圧だったに違いない。
私のような答えが出せないまま、まるで駄々をこねているだけの女とは違うのだろう。
しかし私は再考するも、結局、彼の答えを聞かずにはいられない。
そうでなくては、答えは出せない。
私は貴方が言うならば、そこに自分の意思を挟もうとは微塵も思っていなかったのだから。
ドアの奥から地響きのような、けたたましい音が聞こえるたびに戦いの壮絶さが伺える。しかし、私は微動だにせず彼らを待つ。
王の護衛騎士団では勇者一行を抑えることは叶わない。
そんな軟な勇者なら、今頃ダンジョンやら、村で魔物のエサになっていたことだろう。
そう昔の思い出にふけっていると、聞こえてきた。
彼らの足音がこちらに近づいてくる。
この部屋は王の間の奥の隠し通路に位置する。
ここから逃げることに成功していれば、今頃、王は市街地に出て、そこから国の外に逃げ果(おお)せていることだろう。
この部屋はもともと前王が異教の礼拝をおこなうために作った場であり、そこを緊急用の隠し通路として活用する際に、とくに壊す必要性もないのでこうして残していたのだ。
地下に位置するのに、天井まで三メートルほどの高さがあり、縦横にも無駄に広い空間が広がっている。
私はその中央で、彼らを待っていた。
ドアの前で足音が止まる。彼らが私の気配に気が付いたのだろう。そうして静かにドアが開かれた。
勇者一行は何食わぬ顔で部屋に入ってきた。
そうして、彼は私を視認すると、苦い顔をする。
フィーネとマルクスに至っては顔を下に背けた。
私の殺気が彼等を萎縮させたのだ。
静寂に彼らの音が加われば、私は今までの思案していた面映ゆい気持ちが露呈しないよう己を律して、彼らを睨みつけた。
そうして、私は彼の目を見ると、静かに腰の剣を抜いた。
彼らは激しい戦いを潜り抜けてきたのか、服は血にまみれでいたが、それは返り血なのだろう。
彼らは誰一人、怪我をしていないのか、皆、表情は落ち着いていた。
そうして彼等は私と一定の距離を保つと、勇者が口を開いた。
「本当に。……本当にやる気か?シエラ。こちらには三人もいるんだぞ?」
勇者はそう、私に声をかける。
私はゆっくり彼らの顔を一人ずつ見ていくと、己の剣で空を切った。その瞬間、彼らの最後尾にいるマルクスが倒れる。
彼等は声も発さず倒れたマルクスを見て、体が硬直する。何をしたのか全く分からないと不可解な顔でこちらに驚愕した視線を送る。
「二人になったな」
そう私は言葉を吐く。
別に命まで刈り取った訳ではない。剣劇を飛ばして、彼を失神させたに過ぎない。
マルクスは泡を吹いて昏倒しており、フィーネは心配そうに彼を見て、そして私の方をもう一度確認する。
私と目が合うと、フィーネは一瞬身震いし、こちらにペコリと頭を下げたので、私も下げ返す。
その瞬間、フィーネは倒れたマルクスを背負うと、「では、あっしはこれで」と言いつつ、くるっと体を反転し出ていこうとした。
「おいおい。待て待て。お前、逃げるのか?彼氏がやられてんだぞ?それに俺一人では心許ないだろ?魔法で援護してよ」
勇者はフィーネの肩を掴み、止めるもフィーネは止まらない。
「いやいやいや。あんなん聞いてないし。命が幾つあっても足りないよ。シエラちゃんを仲間に出来なかった勇者の作戦負けだよ。………その責任は勇者が取ってね。私はまだ死にたくないんだー!!!」
そう言い残すとフィーネとマルクスはドアから出ていった。
もう一度、柄を掴み直し、前方にあるドアを睨みつける。
もうすぐ勇者御一行が来る頃合いだ。もしや魔王もこちらに向かってくるかと思ったが、彼の気配は感じられなかった。
魔王城で私たち勇者パーティーを待ち構えていた魔王の心情とはこのように切迫した面持ちだったのかもしれない。
しかし、魔王は使命により勇者を待ち構えていたが、それは私のちっぽけな悩みとは比べようのない重圧だったに違いない。
私のような答えが出せないまま、まるで駄々をこねているだけの女とは違うのだろう。
しかし私は再考するも、結局、彼の答えを聞かずにはいられない。
そうでなくては、答えは出せない。
私は貴方が言うならば、そこに自分の意思を挟もうとは微塵も思っていなかったのだから。
ドアの奥から地響きのような、けたたましい音が聞こえるたびに戦いの壮絶さが伺える。しかし、私は微動だにせず彼らを待つ。
王の護衛騎士団では勇者一行を抑えることは叶わない。
そんな軟な勇者なら、今頃ダンジョンやら、村で魔物のエサになっていたことだろう。
そう昔の思い出にふけっていると、聞こえてきた。
彼らの足音がこちらに近づいてくる。
この部屋は王の間の奥の隠し通路に位置する。
ここから逃げることに成功していれば、今頃、王は市街地に出て、そこから国の外に逃げ果(おお)せていることだろう。
この部屋はもともと前王が異教の礼拝をおこなうために作った場であり、そこを緊急用の隠し通路として活用する際に、とくに壊す必要性もないのでこうして残していたのだ。
地下に位置するのに、天井まで三メートルほどの高さがあり、縦横にも無駄に広い空間が広がっている。
私はその中央で、彼らを待っていた。
ドアの前で足音が止まる。彼らが私の気配に気が付いたのだろう。そうして静かにドアが開かれた。
勇者一行は何食わぬ顔で部屋に入ってきた。
そうして、彼は私を視認すると、苦い顔をする。
フィーネとマルクスに至っては顔を下に背けた。
私の殺気が彼等を萎縮させたのだ。
静寂に彼らの音が加われば、私は今までの思案していた面映ゆい気持ちが露呈しないよう己を律して、彼らを睨みつけた。
そうして、私は彼の目を見ると、静かに腰の剣を抜いた。
彼らは激しい戦いを潜り抜けてきたのか、服は血にまみれでいたが、それは返り血なのだろう。
彼らは誰一人、怪我をしていないのか、皆、表情は落ち着いていた。
そうして彼等は私と一定の距離を保つと、勇者が口を開いた。
「本当に。……本当にやる気か?シエラ。こちらには三人もいるんだぞ?」
勇者はそう、私に声をかける。
私はゆっくり彼らの顔を一人ずつ見ていくと、己の剣で空を切った。その瞬間、彼らの最後尾にいるマルクスが倒れる。
彼等は声も発さず倒れたマルクスを見て、体が硬直する。何をしたのか全く分からないと不可解な顔でこちらに驚愕した視線を送る。
「二人になったな」
そう私は言葉を吐く。
別に命まで刈り取った訳ではない。剣劇を飛ばして、彼を失神させたに過ぎない。
マルクスは泡を吹いて昏倒しており、フィーネは心配そうに彼を見て、そして私の方をもう一度確認する。
私と目が合うと、フィーネは一瞬身震いし、こちらにペコリと頭を下げたので、私も下げ返す。
その瞬間、フィーネは倒れたマルクスを背負うと、「では、あっしはこれで」と言いつつ、くるっと体を反転し出ていこうとした。
「おいおい。待て待て。お前、逃げるのか?彼氏がやられてんだぞ?それに俺一人では心許ないだろ?魔法で援護してよ」
勇者はフィーネの肩を掴み、止めるもフィーネは止まらない。
「いやいやいや。あんなん聞いてないし。命が幾つあっても足りないよ。シエラちゃんを仲間に出来なかった勇者の作戦負けだよ。………その責任は勇者が取ってね。私はまだ死にたくないんだー!!!」
そう言い残すとフィーネとマルクスはドアから出ていった。
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