弱気な剣聖と強気な勇者

プーヤン

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第13話

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彼らが出ていき、またしても静寂が訪れると、勇者は自分の腰にある剣の柄に手を置いた。

そうして、冷めた表情のまま、こちらを一慶すると重い口を開く。

「もう止められない。色々な根回しを行い、この国の民衆にも約束している。ここで王を取り逃がすことは出来ない。それでは彼らも納得するまい」

それは私を説得する材料にはなりはしないが、彼の戦う理由でもあるのだろう。真意は定かではないが。

「そうだろうな。だが、お前に私が倒せるか?」

私は挑発し、剣を抜き、石床に突き立てた。その音が彼の耳に入る時、彼は眉を顰め、こちらを睨みつける。

「どうだかな。やってみるしかないな」

私は初めからフィーネ、勇者を相手取って戦う予定であったため、彼一人になった場合、戦況は有利になる。
しかし、また別の精神面ではフィーネがいた方が心に余裕が出来たに違いない。

勇者は剣を天井に向け、掲げて、自らの頭上に三本の光の剣を出現させる。
透けていながら光を放つ三本の剣は彼の上に顕現し、そうして彼の頭上に留まった。

それは勇者の魔法「光剣一色」であり、この光の剣は自動的に彼のテリトリーに侵入した敵を排除する。
つまり私はもう敵だと認定されたということだ。

その事実が少しばかり気になったが、戦闘態勢に入っていたため、感情を律し、前を向いて勇者を撃退すべく剣を彼に向けた。

「さて、はじめるか」

彼もまた、静かにこちらに剣を向けた。

 

 

 

私は一気に彼の間合いに入ると、光の剣を弾き飛ばした。

「は?……なんだ?ほとんど反則級の強さだな」

私は彼の焦った末に漏れた言葉を無視し、腰に合った鞘を引き抜き、彼の腹部に向けて叩きつける。
その瞬間、彼の体は後方に吹っ飛び、彼は苦悶の表情で受け身を取る。

思えば、彼が戦う理由は明確である。王の失脚である。しかし、私が戦う理由はなんだろう?

ほとんど八つ当たりのようなものだ。
これでは開き直ることさえ出来まい。それでは何を欲してこの戦いに挑むのか?私は疑念を払拭すべくスーッと息を吐いた。

彼は体制を立て直すと、エルフの剣で空を袈裟斬りする。
その瞬間、こちらに剣撃が飛来するも、私はそれを剣で軽く弾き飛ばし、彼を見る。

「やっぱ強いな。チートだよ。こんなもん」

彼は苦笑いしながらも、その次には手から特大魔法である「紅蓮の炎」を放出してきたが、それも私は一振りで消し去る。

どれもこれも見てきた魔法に剣技だ。対応しようと思えば、可能である。
しかし、彼はまだ奥の手を隠し持っている。
それは勇者の剣技である。

研ぎ澄まされた彼の剣技がさく裂すれば、私もただでは済むまい。
しかし、彼の攻撃は先ほどからちょこざいな魔法や、剣撃を飛ばすに尽きた。

「勇者。何故、アレを使わない?このままだと戦いは平行線だぞ?」

私は不思議に思い、彼に問いかける。

彼はまたしても手から火の玉やら、かまいたちなどを出して攻撃してくる。
そういった攻撃をあしらうのも面倒になり、私は勇者に肉薄する。

そうして、彼に斬りかかった。鈍い音を立てて私の剣は彼の剣に受け止められる。

「シエラこそ。どうした?最大出力で斬りかかってこいよ」

彼は私をそのまま、力任せに後方へと押し返す。

「勇者。お前負けるぞ?」

私は剣を強く握り、この戦いの結末を想像する。
私が本気で斬りかかれば、彼は無事では済まない。どちらかが死ぬかもしれない。
しかしながら、この戦いの幕引きが分からないのだ。

ここまで引きずってきて、この気持ちの処理の仕方も忘れてしまった。至極簡単なことのはずなのに。

「シエラ。分かっているのか?俺が本気で戦うということは文字通り死合うことになるんだぞ?」

彼は剣を突き立て、私の目を睨みつける。

「………分かっている。しかし、お前もこのまま闘いを続けていても意味はないぞ?王はもう逃げ果せているやもしれぬ」

「そうかもな。でも俺は本気でお前に斬りかかることはしないさ」

「ならば、何しにここに来た?私はもうどうにでもなればいいと思って昨夜、答えを出したんだぞ?」

勇者は剣を放り投げると、こちらに居直る。
そうして、「シエラ。お前はじゃあどうしたいんだ?」と問う。それはもう無抵抗になったわけで、ここで斬りかかれば私は彼の計画を止めることが出来るということだ。
彼さえ倒せば、後は魔王とその部下、フィーネ達だけだ。
ラングも私の敵ではない。

しかしながら、止めたからと言って、私の中に渦巻く問題は何も解決しない。

「どうしたいか?だと………勇者はどうするつもりだ?」

「何が?」

「王を失脚させて、新たな王にでもなるつもりか?」

彼はその言葉を聞いた瞬間、苦笑する。

「いや、俺はそういう王とかには向かないだろう。人を使うことには慣れていても、王の器ではない。新たな王はこちらで擁立するつもりだし、その算段もついている。」

「ならどうするつもりだ?新王のもとで護衛兵でもするのか?」

「いや、この国からは出ていく。そうして、新たに何かを探すさ。お前はどうするシエラ。お前はこの後、どうするんだ?まだこの国で働き続けるのか?」

彼の問いに私は何も言えない。彼のその言葉は別れのように聞こえたからだ。

戦う意思を固めたと宣っても、結局、尽きるところは寂しさだ。

彼がずっと離れていくのを指をくわえて見ている。そうでありながら、我儘に彼に近づくことを拒否する。

今までもこういう生き方をしてきたのだ。急に素直になどなれない。誰かに助けを求めたこともない。

私はおおよそ人間らしい生活を送ってこなかったのだから。

 

 

 
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