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序章
pain is love②
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前世では日常で何か物が無くなった時、その魔物が隠したと言われた。
逆立てた色鮮やかな髪が特徴の悪戯好きの小人の妖精。
アニメで見たことがあったけど、実物? は随分と違った。
―― トロル、またの名を《 Bjergfolk 》
丘陵地などの地下に集団で潜んで暮らす醜悪な魔物
出会った人間には破壊と恐怖をもたらすが、
気まぐれに富や幸運をもたらすこともあるという
20体以上いるそれは、隙間なく俺たちを取囲み
ジリジリとその間合いをつめて来ていた。
その皮膚は硬く、岩石のように変質している。
座学によると、通常の武器は通じなかったはず。
仮に傷つけられたとしても、再生能力が高く致命傷にはならない。
毛むくじゃらで悪臭を放ち、知能は低いが凶暴で怪力
山で遭遇してしまったら、ほとんどの人間は肉の塊になる。
「一人でこんな数、相手にしたことねぇ…、なぁ! 一気に周囲の敵なぎ倒せるような攻撃、何がある」
俺はトロルを目で牽制しながらゴンドゥルに聞いた。
返事がない。は?! なんで?!
「おいっ! ヤバいだろっっ?! ゴン――っ」
すっ……と、隣にいたゴンドゥルが俺の前に立ちふさがった。
は?! 何やってんだよっっトロルに背なんか向けてっヤバぃってっ……
『汝は、これから戦いの度にそうやって我に聞くのか?』
綺麗な顔がすげーーぇ冷たい目で俺を見ていた。いや、たぶん、見下してる。
(こーゆーのに俺は敏感なのだ)
圧倒的な威圧感、俺だけじゃなく、取り囲んでいるトロル達もビビって様子を見てる。
『やり方は既に教えた。自ら創造出来ぬ者には如何なる力も使えぬ。……そうだな、最期に一つだけ教えてやろう。彼らは集団で戦うことに慣れている。先手を取らせたら、既に勝敗はついている。屍となれ』
「?!!!」
ゴンドゥルの声がそう響き終わる前に、周囲のトロルが何体か一斉に飛びかかってきた!!
胴体だけデカいバランス悪そうな身体してる癖に機敏かよっ!!
避けられないっっつ!!
ゴンドゥルの魔力を使う間もなく、トロルに押し潰されて捕まった自分が見えて、俺は思わず身体を丸めた。
その時、
《Hljóða!!!!》 (ゴイィィィンッッッ)
轟音に空気が大きく震動し、何体かのトロルが俺の背後へと消えるっっ
前方から飛びかかってきたトロルと、正面側を取り囲んでいたトロルの何体かが、俺を越して吹き飛ばされていた。
突破できるっっ!!?
俺はトロル包囲網に出来た隙間へと走った。両脇から次々と押し寄せるトロルに、なぎ払う剣が追いつかないっっ
ダメかっっ?!!
カキィィンッッ!!!!
隙間をすり抜けて飛び込んできた影が、俺をトロルから守るように剣をふるった。
全身黒の甲冑の剣士。膝くらいまである黒いマントが翻る。
鮮やかな剣筋を描く剣身までもが、柄の部分と同じく黒だ。
THE BLACK ジトレフ!!!!!!
俺とジトレフは包囲網に開いた隙間からの突破に成功する。
追い迫るトロルを剣でかわしながら退くと、間合いをとってトロル軍団に対峙した。
「怪我はないか!? アセウス殿は??」
イケボの重低音が響く。
「無傷だっ! 間一髪だったぜっっ!!」
悔しいから礼は言わないっ。
さっきのあれもジトレフの魔法攻撃だろう。
もはや声ではなくて音で誰か分からなかったけど。
トロルを複数体吹っ飛ばしやがった。
そして、駆けつけた時から今も、俺を庇うように位置取りしてやがる。
……カッコいいじゃねぇかよっくそっっ!
「アセウス殿は??!! また狙われているのではないのか!!?」
ビリビリッと身体が震えたかと思った。
叫ぶと重低音がより強くなる。サブウーファーでも積んでんのかよっっ
てゆーか、こいつ、こんな熱いやつなのか?……
「大丈夫だょ、アセウスは安全な――」
ところにいる、最強のゴンドゥルの中に――と言いかけて少し不安が生まれた。
召喚終了のルールはまだ聞いていない。
さすがに、俺を見限って、ゴンドゥルから戻ってないよな……
心配になってゴンドゥルがいたトロルの方に向けた視界が、
愛と正義の美少女戦士で遮られた。
漆黒の空からジトレフの目の前にふわりと降りてきたゴンドゥルは
ジトレフの喉元に手袋をはめた白い手を当て、耳の辺りの兜に顔を寄せた。
『そなたも形代を案じてくれるのか?』
「なっっ……!!!!」
『……これはこれは、懐かしい……』
ゴンドゥルは嬉しそうに微笑むと、そのまま目を閉じた。
おいっっなに抱き合ってるみたいに密着してるんだよぉっっ!!
ちょっと待てっ! この流れってっ! 俺を見捨ててジトレフに乗り換えるんじゃっっ
目を開けたゴンドゥルと、ジトレフの背中越しに目が合う。
ダメダメダメダメダメダメっ!! 他のやつもダメだけど、ジトレフはもっとダメだっっ!!
俺の心の叫びが聞こえるのか、ゴンドゥルはまたあの冷たい見下したような目をして
さぁなんのことぉ~? 分かんな~い、といった風に首を傾げた。
密着しているせいで、ジトレフの兜に側頭部を擦り寄せる形になっている。
トロルも二人のイチャイチャぶりに堪えかねたのか、次々と襲いかかってきた。
(グッッジョーブッッ! じゃねぇっわっっ! 俺ぇっっ)
こんな状況でもジトレフは、ゴンドゥルはもちろん、俺を庇いながら、トロルを押し戻している。
ゴンドゥルはトロルをかわしながらも、ジトレフの傍にまとわりついて離れない。
なんだよこれっっ美少女戦士と変態仮面かよぉっっ
完全に乗り換えられるっっ
そしたら俺、また意味ないやつになっちゃうじゃんかっっ
「転生したら最強戦乙女と契約してチート無双のはずがイケメンに乗り換えられ死ねとポイ捨てされました」
てどんな駄作だよ!え?NTRの流行りにのって人気でそう?! ふざけんな!
俺だって使えるんだってとこ見せないとっ
でも、どうやって攻撃したらいいのか、わかんねーっっ
ソウゾウ出来ぬ者がどーとか言ってたな、ソウゾウ? 創造すれば良いのか?
あ゛ーーーーっっ俺美術成績悪かったんだよっっ! 無理っ!!
ソウゾウ! ソウゾウ! ソウゾウっっ!! ん?……想像なら出来るかも……っっ
俺は自分の剣を地面に思いっきり突き刺すと、
前世で見たアニメのワンシーンを想像しながら声を張った。
「ライトニング・フォールッッッ!!!!」
逆立てた色鮮やかな髪が特徴の悪戯好きの小人の妖精。
アニメで見たことがあったけど、実物? は随分と違った。
―― トロル、またの名を《 Bjergfolk 》
丘陵地などの地下に集団で潜んで暮らす醜悪な魔物
出会った人間には破壊と恐怖をもたらすが、
気まぐれに富や幸運をもたらすこともあるという
20体以上いるそれは、隙間なく俺たちを取囲み
ジリジリとその間合いをつめて来ていた。
その皮膚は硬く、岩石のように変質している。
座学によると、通常の武器は通じなかったはず。
仮に傷つけられたとしても、再生能力が高く致命傷にはならない。
毛むくじゃらで悪臭を放ち、知能は低いが凶暴で怪力
山で遭遇してしまったら、ほとんどの人間は肉の塊になる。
「一人でこんな数、相手にしたことねぇ…、なぁ! 一気に周囲の敵なぎ倒せるような攻撃、何がある」
俺はトロルを目で牽制しながらゴンドゥルに聞いた。
返事がない。は?! なんで?!
「おいっ! ヤバいだろっっ?! ゴン――っ」
すっ……と、隣にいたゴンドゥルが俺の前に立ちふさがった。
は?! 何やってんだよっっトロルに背なんか向けてっヤバぃってっ……
『汝は、これから戦いの度にそうやって我に聞くのか?』
綺麗な顔がすげーーぇ冷たい目で俺を見ていた。いや、たぶん、見下してる。
(こーゆーのに俺は敏感なのだ)
圧倒的な威圧感、俺だけじゃなく、取り囲んでいるトロル達もビビって様子を見てる。
『やり方は既に教えた。自ら創造出来ぬ者には如何なる力も使えぬ。……そうだな、最期に一つだけ教えてやろう。彼らは集団で戦うことに慣れている。先手を取らせたら、既に勝敗はついている。屍となれ』
「?!!!」
ゴンドゥルの声がそう響き終わる前に、周囲のトロルが何体か一斉に飛びかかってきた!!
胴体だけデカいバランス悪そうな身体してる癖に機敏かよっ!!
避けられないっっつ!!
ゴンドゥルの魔力を使う間もなく、トロルに押し潰されて捕まった自分が見えて、俺は思わず身体を丸めた。
その時、
《Hljóða!!!!》 (ゴイィィィンッッッ)
轟音に空気が大きく震動し、何体かのトロルが俺の背後へと消えるっっ
前方から飛びかかってきたトロルと、正面側を取り囲んでいたトロルの何体かが、俺を越して吹き飛ばされていた。
突破できるっっ!!?
俺はトロル包囲網に出来た隙間へと走った。両脇から次々と押し寄せるトロルに、なぎ払う剣が追いつかないっっ
ダメかっっ?!!
カキィィンッッ!!!!
隙間をすり抜けて飛び込んできた影が、俺をトロルから守るように剣をふるった。
全身黒の甲冑の剣士。膝くらいまである黒いマントが翻る。
鮮やかな剣筋を描く剣身までもが、柄の部分と同じく黒だ。
THE BLACK ジトレフ!!!!!!
俺とジトレフは包囲網に開いた隙間からの突破に成功する。
追い迫るトロルを剣でかわしながら退くと、間合いをとってトロル軍団に対峙した。
「怪我はないか!? アセウス殿は??」
イケボの重低音が響く。
「無傷だっ! 間一髪だったぜっっ!!」
悔しいから礼は言わないっ。
さっきのあれもジトレフの魔法攻撃だろう。
もはや声ではなくて音で誰か分からなかったけど。
トロルを複数体吹っ飛ばしやがった。
そして、駆けつけた時から今も、俺を庇うように位置取りしてやがる。
……カッコいいじゃねぇかよっくそっっ!
「アセウス殿は??!! また狙われているのではないのか!!?」
ビリビリッと身体が震えたかと思った。
叫ぶと重低音がより強くなる。サブウーファーでも積んでんのかよっっ
てゆーか、こいつ、こんな熱いやつなのか?……
「大丈夫だょ、アセウスは安全な――」
ところにいる、最強のゴンドゥルの中に――と言いかけて少し不安が生まれた。
召喚終了のルールはまだ聞いていない。
さすがに、俺を見限って、ゴンドゥルから戻ってないよな……
心配になってゴンドゥルがいたトロルの方に向けた視界が、
愛と正義の美少女戦士で遮られた。
漆黒の空からジトレフの目の前にふわりと降りてきたゴンドゥルは
ジトレフの喉元に手袋をはめた白い手を当て、耳の辺りの兜に顔を寄せた。
『そなたも形代を案じてくれるのか?』
「なっっ……!!!!」
『……これはこれは、懐かしい……』
ゴンドゥルは嬉しそうに微笑むと、そのまま目を閉じた。
おいっっなに抱き合ってるみたいに密着してるんだよぉっっ!!
ちょっと待てっ! この流れってっ! 俺を見捨ててジトレフに乗り換えるんじゃっっ
目を開けたゴンドゥルと、ジトレフの背中越しに目が合う。
ダメダメダメダメダメダメっ!! 他のやつもダメだけど、ジトレフはもっとダメだっっ!!
俺の心の叫びが聞こえるのか、ゴンドゥルはまたあの冷たい見下したような目をして
さぁなんのことぉ~? 分かんな~い、といった風に首を傾げた。
密着しているせいで、ジトレフの兜に側頭部を擦り寄せる形になっている。
トロルも二人のイチャイチャぶりに堪えかねたのか、次々と襲いかかってきた。
(グッッジョーブッッ! じゃねぇっわっっ! 俺ぇっっ)
こんな状況でもジトレフは、ゴンドゥルはもちろん、俺を庇いながら、トロルを押し戻している。
ゴンドゥルはトロルをかわしながらも、ジトレフの傍にまとわりついて離れない。
なんだよこれっっ美少女戦士と変態仮面かよぉっっ
完全に乗り換えられるっっ
そしたら俺、また意味ないやつになっちゃうじゃんかっっ
「転生したら最強戦乙女と契約してチート無双のはずがイケメンに乗り換えられ死ねとポイ捨てされました」
てどんな駄作だよ!え?NTRの流行りにのって人気でそう?! ふざけんな!
俺だって使えるんだってとこ見せないとっ
でも、どうやって攻撃したらいいのか、わかんねーっっ
ソウゾウ出来ぬ者がどーとか言ってたな、ソウゾウ? 創造すれば良いのか?
あ゛ーーーーっっ俺美術成績悪かったんだよっっ! 無理っ!!
ソウゾウ! ソウゾウ! ソウゾウっっ!! ん?……想像なら出来るかも……っっ
俺は自分の剣を地面に思いっきり突き刺すと、
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