18 / 64
1−3−03 何やら言い争ってるみたいだ
しおりを挟む
よし、この辺りなら人も多いし、簡単には見つからないよな。
ワイバーン戦を終えてから逃げ帰ると、タグで連絡が行ったのか、冒険者がエルヴンヘッドの南側の入り口付近に集まって来ていた。
どうにか振り切ることはできたが、お世話になっている宿の近くでも同様に冒険者が複数見回りをしていて、宿に戻るのはかなり無理があった。
ギルドの付近はもっと見つかる可能性が高くなるから、と考えているうちにエルヴンヘッドの北側に来ていた。
そうだ。
カマさん達にギルドに行けないって、連絡入れとかないとな。
約束の直前で、実に申し訳ないが。
「もしもし、カマさん?」
『あら、コハク。ワイバーンの討伐は終わったの? 怪我はなかった?』
「ああ、ピンピンしてるぞ。それで、ちょっと問題が発生してだな。悪いんだけど、ギルドに行けなくなったから、依頼選びの方は任せていいか?」
『そうなの? うん、依頼の方はわかったわ。ゴランと話し合って依頼選んじゃうわね。それにしても大丈夫なの? 出来ることなら手伝うけど』
カマさん本当に面倒見良いよな。
女性だったら惚れてるところだぜ。
「いや、そこまでじゃないから大丈夫。依頼自体は今日から行けると思うから、決まったら連絡頼む」
『なにか急な用事ってところかしら。わかった、また後でね』
「ああ、また後でな」
よし、これでカマさんへの連絡はオッケーだな。
さてさてうーむ、宿は新しいところ探すとして、これからどうするかな……。
それにしても、南側と比べて人の多いこと。
市場ほどじゃないが、結構な数のエルフがいるみたいだ。
しかも肌の黒いエルフが多い、もしかしてダークエルフか?
あとは、シンボルのような物が書かれた鎧を着ていて、武器を腰に付けたエルフがちらほらといるな。
肌の色はバラバラだけど、同じシンボルの鎧を付けているし、兵士か何かか?
お、研究者みたいな白衣を着ているエルフも発見。
やっぱり南側から遠目で見ただけじゃ、分からなかった事が多いな。
住居が密集してるのは遠くからでも良く見えたけど、実際に歩いてみると、大きな施設のような建物もあるのがわかったし。
その右手に見える実際の施設だが……。
他の建物と違って、塀が立てられている。
真っ直ぐ進んでいくと、塀のない入り口のような所が見えてきたが、見張りが付いてるみたいだし、何かの重要な建物か?
って、なんか声が聞こえてくるな。
「考え直してくれ!」
「反対しているのはあんただけだ。他は問題ないとの見解を示している。それなのにあんたの意見を通せと?」
なにやら言い争ってる?
「いくらなんでも性急すぎるんだ! もっときちんと調整しないと!」
「そのためのテストだろ?」
「それ自体が危険だと言っている!」
「しつこいぞ! もうあんたは必要ない。さっさと出ていけ!」
「ぐあっ、ちょっと……!」
バタンッ。
大きく扉が閉まる音がしたから入り口から覗いてみると、ダークエルフの研究者が尻もちを付いていた。
「あれはいいんですか?」
入り口の見張りの人に声をかけてみた。
「何だあんたは?」
「いや、ただの冒険者なんですが。何か聞こえてきたもので」
試しに、首にかけてある冒険者タグを取り出して、見せてみる。
確か、白い方は特別な施設に入れたりするって言ってたし、証明書代わりになるみたいだが、どうなるか。
すると、見張りの人が敬礼をしてきた。
「精霊操者様でしたか、失礼しました! それにしても白……無属性とは珍しいですね」
お、行けたみたいだな。
それにしても無属性って、もしかしてレアなのか?
と言っても本当に精霊操者なのか、いまいち実感がないが。
精霊とやらもいないみたいだし……。
そもそも、目に見えるかどうかも怪しいが。
「そうなんですか? 元々特別な所に済んでいたもので、その辺りは疎いんですが」
「では、私の知っていることでよければですが。基本的に、契約が可能な精霊は、地域によって属性がほぼ固定されています。ですが、無属性に至っては契約地域がバラバラで、巡り合わせでのみ契約が可能と言われていますね」
へーそうなんだな。
「教えてくれてありがとうございます。それで話を戻しますが、あの人は放っておいていいのですか?」
尻もちをついた研究者は、未だに地面に座ったまま俯いているが。
それを聞いた、見張りの人が呆れた様子で目の前にいる俺に手招きをする。
耳を貸せってことか。
近づいてみると、顔を近づけてボソボソと話し出す。
「どうも最近、ドワーフの国の方で既存の兵器が改良された、との情報が流れてきて、エルフ側も対抗しようということになり、新兵器を開発しているようです。その事で揉めているようです」
「新兵器云々って話して平気なんですか?」
機密とか大丈夫なのだろうか。
「牽制の意味で兵器があると、あちらに知られる分には問題はないですね。なによりも、ヒューマ域は友好を結んでいますし、身分の証明できる精霊操者様でしたら、ある程度の情報開示は許されています」
ほう、予想以上にこのタグは使えそうだな。
「エルフ側は例の病もありますし、先程聞こえてきた会話で分かるとお思いですが、少し焦りがあるのは確かかもしれませんね」
「なるほど、ありがとうございました」
「いえ! なにか御用がありましたら、いつでもお越しください」
「その時はよろしくお願いします。ではこれで失礼します」
そうして、施設の前を後にする。
エルフとドワーフは、こっちの世界でもやっぱり仲が良くないのか。
さてと、気を取り直して宿を探さないとな。
ワイバーン戦を終えてから逃げ帰ると、タグで連絡が行ったのか、冒険者がエルヴンヘッドの南側の入り口付近に集まって来ていた。
どうにか振り切ることはできたが、お世話になっている宿の近くでも同様に冒険者が複数見回りをしていて、宿に戻るのはかなり無理があった。
ギルドの付近はもっと見つかる可能性が高くなるから、と考えているうちにエルヴンヘッドの北側に来ていた。
そうだ。
カマさん達にギルドに行けないって、連絡入れとかないとな。
約束の直前で、実に申し訳ないが。
「もしもし、カマさん?」
『あら、コハク。ワイバーンの討伐は終わったの? 怪我はなかった?』
「ああ、ピンピンしてるぞ。それで、ちょっと問題が発生してだな。悪いんだけど、ギルドに行けなくなったから、依頼選びの方は任せていいか?」
『そうなの? うん、依頼の方はわかったわ。ゴランと話し合って依頼選んじゃうわね。それにしても大丈夫なの? 出来ることなら手伝うけど』
カマさん本当に面倒見良いよな。
女性だったら惚れてるところだぜ。
「いや、そこまでじゃないから大丈夫。依頼自体は今日から行けると思うから、決まったら連絡頼む」
『なにか急な用事ってところかしら。わかった、また後でね』
「ああ、また後でな」
よし、これでカマさんへの連絡はオッケーだな。
さてさてうーむ、宿は新しいところ探すとして、これからどうするかな……。
それにしても、南側と比べて人の多いこと。
市場ほどじゃないが、結構な数のエルフがいるみたいだ。
しかも肌の黒いエルフが多い、もしかしてダークエルフか?
あとは、シンボルのような物が書かれた鎧を着ていて、武器を腰に付けたエルフがちらほらといるな。
肌の色はバラバラだけど、同じシンボルの鎧を付けているし、兵士か何かか?
お、研究者みたいな白衣を着ているエルフも発見。
やっぱり南側から遠目で見ただけじゃ、分からなかった事が多いな。
住居が密集してるのは遠くからでも良く見えたけど、実際に歩いてみると、大きな施設のような建物もあるのがわかったし。
その右手に見える実際の施設だが……。
他の建物と違って、塀が立てられている。
真っ直ぐ進んでいくと、塀のない入り口のような所が見えてきたが、見張りが付いてるみたいだし、何かの重要な建物か?
って、なんか声が聞こえてくるな。
「考え直してくれ!」
「反対しているのはあんただけだ。他は問題ないとの見解を示している。それなのにあんたの意見を通せと?」
なにやら言い争ってる?
「いくらなんでも性急すぎるんだ! もっときちんと調整しないと!」
「そのためのテストだろ?」
「それ自体が危険だと言っている!」
「しつこいぞ! もうあんたは必要ない。さっさと出ていけ!」
「ぐあっ、ちょっと……!」
バタンッ。
大きく扉が閉まる音がしたから入り口から覗いてみると、ダークエルフの研究者が尻もちを付いていた。
「あれはいいんですか?」
入り口の見張りの人に声をかけてみた。
「何だあんたは?」
「いや、ただの冒険者なんですが。何か聞こえてきたもので」
試しに、首にかけてある冒険者タグを取り出して、見せてみる。
確か、白い方は特別な施設に入れたりするって言ってたし、証明書代わりになるみたいだが、どうなるか。
すると、見張りの人が敬礼をしてきた。
「精霊操者様でしたか、失礼しました! それにしても白……無属性とは珍しいですね」
お、行けたみたいだな。
それにしても無属性って、もしかしてレアなのか?
と言っても本当に精霊操者なのか、いまいち実感がないが。
精霊とやらもいないみたいだし……。
そもそも、目に見えるかどうかも怪しいが。
「そうなんですか? 元々特別な所に済んでいたもので、その辺りは疎いんですが」
「では、私の知っていることでよければですが。基本的に、契約が可能な精霊は、地域によって属性がほぼ固定されています。ですが、無属性に至っては契約地域がバラバラで、巡り合わせでのみ契約が可能と言われていますね」
へーそうなんだな。
「教えてくれてありがとうございます。それで話を戻しますが、あの人は放っておいていいのですか?」
尻もちをついた研究者は、未だに地面に座ったまま俯いているが。
それを聞いた、見張りの人が呆れた様子で目の前にいる俺に手招きをする。
耳を貸せってことか。
近づいてみると、顔を近づけてボソボソと話し出す。
「どうも最近、ドワーフの国の方で既存の兵器が改良された、との情報が流れてきて、エルフ側も対抗しようということになり、新兵器を開発しているようです。その事で揉めているようです」
「新兵器云々って話して平気なんですか?」
機密とか大丈夫なのだろうか。
「牽制の意味で兵器があると、あちらに知られる分には問題はないですね。なによりも、ヒューマ域は友好を結んでいますし、身分の証明できる精霊操者様でしたら、ある程度の情報開示は許されています」
ほう、予想以上にこのタグは使えそうだな。
「エルフ側は例の病もありますし、先程聞こえてきた会話で分かるとお思いですが、少し焦りがあるのは確かかもしれませんね」
「なるほど、ありがとうございました」
「いえ! なにか御用がありましたら、いつでもお越しください」
「その時はよろしくお願いします。ではこれで失礼します」
そうして、施設の前を後にする。
エルフとドワーフは、こっちの世界でもやっぱり仲が良くないのか。
さてと、気を取り直して宿を探さないとな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
37
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる