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1−4−04 すれ違う
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途中で、ゴランが空いている席を探すとのことで、他の3人で受付へ行って依頼は達成となった。
「で、では、報告も済みましたので、私はここで失礼します。また機会がありましたら依頼の方よろしくお願いします」
アスティンさんは会釈をして、冒険者たちが空けた空間を通って、ギルドの外へと出ていく。
これで受付に残ったのはカマさんと俺の2人になった。
見送っている間に報酬が用意できたみたいで、お姉さんが受付の奥から戻ってくる。
「依頼お疲れ様でした。こちらが報酬の12シルとフォレストベアーの追加報酬3シルになります」
「はい、確かに」
カマさんが代表として報酬を受け取る。
「次に、コハク様の緊急討伐依頼報酬として基本報酬8シルに、活躍報酬を加えまして計20シルになります」
おお、一気に金が入ったな。
というか、大勢の冒険者に追われてたせいで完全に忘れてたぞ!
「また、昇級条件を満たしたため、今回銅1級への昇級となりました。こちらが新しいタグとなります」
報告時に提出したタグが、銅1色のものに変わって返ってくる。
カマさんと、預かっていたゴランの分のタグを返してもらったところで、背後で大人しく待っていた冒険者達が声をかけてきた。
「待ってたぞ、新入り魔王」
完全にデジャブである。
再び俺達、というより俺を冒険者達が囲んでいる。
受付のお姉さんも、思い出したかのように手を叩いて、『この精霊器を所持している方を探しています』という、白い端末の絵が載った用紙を見せてきた。
「そうでした! この精霊器の持ち主はコハクさんだったのですね!」
そうですね。お姉さんが最初に教えてくれていれば、冒険者に追われるような目に合わずに済みましたが。
「そうですね。お姉さんが最初に教えてくれていれば、冒険者に追われるような目に合わずに済みましたが」
おっと、心の声と言動が一致してしまった。
その一言を聞いてなのか、お姉さんが焦りだした。
「えっと、その。すぐに思い出して、言おうとしたんですよ? でも、間に合わなかったみたいで……」
「こうなったと」
振り向くと、やっぱり冒険者に囲まれている。
もう囲まなくても逃げないから……。
そんな冒険者に向かって、カマさんは立ち上がると、すぐに手で制した。
「もうコハクちゃんに事情を話して、了承済みだからこの件は終わりよ。このあと、治療院にいるリースちゃんの所にちゃんと連れて行くんだから、ほら散った散った!」
「なんだ終わりか」
「新入り魔王は命拾いしたな!」
「もう悪さするんじゃねーぞ!」
いや、してないから!
俺が悪いみたいな言い方やめよう?
そんな感じで野次を飛ばしつつ、冒険者は散っていった。
「次はちゃんと頼みますよ?」
「……はい。気をつけます」
これでようやく追われずに済むし、フードもお役御免だな!
報告も終わったところで、テーブルで待っているゴランと合流して、報酬を分けることに。
「お待たせゴラン」
「どうなった?」
「白い精霊器探しはおしまいで、コハクちゃんが銅1級になったわよ。それで報酬はこっちね」
今回の護衛依頼の報酬15シルをテーブルに置く。
「ふむ、なら俺とカマルで4シルずつ、コハクは4シルとフォレストベアー分で合わせて13シルか」
「そうなるわね」
「いや、そこは山分けでいいだろ」
こういうのは最初は良いけど、後でトラブルになるかもだし、キッチリ分けないとな。
その言葉に2人がこちらを向いてくる。
「倒したのはほとんどコハクの手柄だろ?」
「そうね、それで無理させちゃったのよね」
「だが、結局それで倒れて世話かけたしな。緊急依頼の報酬も貰ったから気にしないでくれ」
おかげで懐はホクホクである。
これでしばらくは、寝泊まりと食事には困らずに済むわけだな。
だから山分けでいいんだが……。
「だがな」
「ええ」
それでも2人は納得行かない様子だ。
じゃあこれならどうだ?
「2人には最初から色々とお世話になってるし、これからもよろしくって意味でも基本的に山分けでやって行きたいんだが。ダメか?」
「……わかったわ。もう! そんなこと言われたら断れないじゃない」
「ああ、いただくとしよう」
どうにか受け取ってもらえるようだ。
そうだ、あとはあれもだな。
袋から銅貨を取り出して、カマさんに差し出す。
「カマさんこれ。遅れたけど宿屋の初日に肩代わりしてもらった分。ありがとな!」
「ええ、確かに。さてと、それじゃあリースちゃんに会いに行きましょうか」
カマさんから聞いた話だと、その子は治癒師っていう、ヒーラーみたいな事も出来るとかで、治療院の手伝いをしてるって言ってたよな。
「その子は大体、治療院にいるって話だっけ?」
「多分そのはずだな」
だけどその後、治療院に向かったけどリースと言う子は不在。
そこで治療を行っている、院長のような治癒師の人からの伝言で、『風邪をひいてしまって会えないので、後日こちらから会いに行きます。泊まっている宿だけ教えてください』とのこと。
なんかもう、会えない呪いでもかかってるんじゃないか、と言うぐらいのすれ違いぶりである。
騒ぎも収まって、元の泊まっていた宿で大丈夫そうだから、そこの場所を教えて治療院を後にした。
それにしても、伝言とはどういうことだ?
待ち合わせたわけでもないのに、まるで来るのが分かっていたみたいじゃないか……。
「で、では、報告も済みましたので、私はここで失礼します。また機会がありましたら依頼の方よろしくお願いします」
アスティンさんは会釈をして、冒険者たちが空けた空間を通って、ギルドの外へと出ていく。
これで受付に残ったのはカマさんと俺の2人になった。
見送っている間に報酬が用意できたみたいで、お姉さんが受付の奥から戻ってくる。
「依頼お疲れ様でした。こちらが報酬の12シルとフォレストベアーの追加報酬3シルになります」
「はい、確かに」
カマさんが代表として報酬を受け取る。
「次に、コハク様の緊急討伐依頼報酬として基本報酬8シルに、活躍報酬を加えまして計20シルになります」
おお、一気に金が入ったな。
というか、大勢の冒険者に追われてたせいで完全に忘れてたぞ!
「また、昇級条件を満たしたため、今回銅1級への昇級となりました。こちらが新しいタグとなります」
報告時に提出したタグが、銅1色のものに変わって返ってくる。
カマさんと、預かっていたゴランの分のタグを返してもらったところで、背後で大人しく待っていた冒険者達が声をかけてきた。
「待ってたぞ、新入り魔王」
完全にデジャブである。
再び俺達、というより俺を冒険者達が囲んでいる。
受付のお姉さんも、思い出したかのように手を叩いて、『この精霊器を所持している方を探しています』という、白い端末の絵が載った用紙を見せてきた。
「そうでした! この精霊器の持ち主はコハクさんだったのですね!」
そうですね。お姉さんが最初に教えてくれていれば、冒険者に追われるような目に合わずに済みましたが。
「そうですね。お姉さんが最初に教えてくれていれば、冒険者に追われるような目に合わずに済みましたが」
おっと、心の声と言動が一致してしまった。
その一言を聞いてなのか、お姉さんが焦りだした。
「えっと、その。すぐに思い出して、言おうとしたんですよ? でも、間に合わなかったみたいで……」
「こうなったと」
振り向くと、やっぱり冒険者に囲まれている。
もう囲まなくても逃げないから……。
そんな冒険者に向かって、カマさんは立ち上がると、すぐに手で制した。
「もうコハクちゃんに事情を話して、了承済みだからこの件は終わりよ。このあと、治療院にいるリースちゃんの所にちゃんと連れて行くんだから、ほら散った散った!」
「なんだ終わりか」
「新入り魔王は命拾いしたな!」
「もう悪さするんじゃねーぞ!」
いや、してないから!
俺が悪いみたいな言い方やめよう?
そんな感じで野次を飛ばしつつ、冒険者は散っていった。
「次はちゃんと頼みますよ?」
「……はい。気をつけます」
これでようやく追われずに済むし、フードもお役御免だな!
報告も終わったところで、テーブルで待っているゴランと合流して、報酬を分けることに。
「お待たせゴラン」
「どうなった?」
「白い精霊器探しはおしまいで、コハクちゃんが銅1級になったわよ。それで報酬はこっちね」
今回の護衛依頼の報酬15シルをテーブルに置く。
「ふむ、なら俺とカマルで4シルずつ、コハクは4シルとフォレストベアー分で合わせて13シルか」
「そうなるわね」
「いや、そこは山分けでいいだろ」
こういうのは最初は良いけど、後でトラブルになるかもだし、キッチリ分けないとな。
その言葉に2人がこちらを向いてくる。
「倒したのはほとんどコハクの手柄だろ?」
「そうね、それで無理させちゃったのよね」
「だが、結局それで倒れて世話かけたしな。緊急依頼の報酬も貰ったから気にしないでくれ」
おかげで懐はホクホクである。
これでしばらくは、寝泊まりと食事には困らずに済むわけだな。
だから山分けでいいんだが……。
「だがな」
「ええ」
それでも2人は納得行かない様子だ。
じゃあこれならどうだ?
「2人には最初から色々とお世話になってるし、これからもよろしくって意味でも基本的に山分けでやって行きたいんだが。ダメか?」
「……わかったわ。もう! そんなこと言われたら断れないじゃない」
「ああ、いただくとしよう」
どうにか受け取ってもらえるようだ。
そうだ、あとはあれもだな。
袋から銅貨を取り出して、カマさんに差し出す。
「カマさんこれ。遅れたけど宿屋の初日に肩代わりしてもらった分。ありがとな!」
「ええ、確かに。さてと、それじゃあリースちゃんに会いに行きましょうか」
カマさんから聞いた話だと、その子は治癒師っていう、ヒーラーみたいな事も出来るとかで、治療院の手伝いをしてるって言ってたよな。
「その子は大体、治療院にいるって話だっけ?」
「多分そのはずだな」
だけどその後、治療院に向かったけどリースと言う子は不在。
そこで治療を行っている、院長のような治癒師の人からの伝言で、『風邪をひいてしまって会えないので、後日こちらから会いに行きます。泊まっている宿だけ教えてください』とのこと。
なんかもう、会えない呪いでもかかってるんじゃないか、と言うぐらいのすれ違いぶりである。
騒ぎも収まって、元の泊まっていた宿で大丈夫そうだから、そこの場所を教えて治療院を後にした。
それにしても、伝言とはどういうことだ?
待ち合わせたわけでもないのに、まるで来るのが分かっていたみたいじゃないか……。
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