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2−5−06 こちらコハク、食いしん坊さん2名入ります
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留め具を外し終わった俺はリースと立ち位置を交換する。
今度は上の蓋をどかす作業だ。
リースは立方体の四隅のうち、精霊落としの砲台部分に近い方の角2つに苗床を1つずつ置いていくと、それらが一斉に木の幹を生やす。
蓋はコの字のような物が上に覆いかぶさる形になっているので、出っ張り部分を木の幹が押し上げる形で蓋を持ち上げる。
そうして斜めに持ち上がった所で、リースが持ち上がっている側から少し離れて新たに苗床を床に置く。
「2人とも耳ふさいでねー」
そう言ってリースが自分の耳をふさいだので、それに倣って俺とマキナさんも耳をふさぐ。
直後、新しく置いた苗床から斜めに木の幹が勢いよく生えて、斜めに持ち上がった蓋の内側を叩くようにして、蓋を壁まで吹っ飛ばした。
耳をふさいでいるのに、蓋が壁にぶつかった豪快な音が耳に響いてきた。
「はは……」
「リースちゃんって割と大胆なんだね……」
「音、外には聞こえないんでしょ? それなら早くどかしたほうが良いと思って」
「まあいいさ、コハクくん。次は内蓋も頼むよ!」
そうして再び、俺の単一支配で内蓋を外していく。
しかし、リースに比べると実に地味な作業である。
最初の物に比べて小さいからか、かなり楽に外し終わる。
「よし、外れた。このぐらいなら俺でも持ち上げられそうだな」
力を入れて内蓋を持ち上げて、適当にその辺に蓋を置く。
すると、ごちゃごちゃとしている中身が見えてきた。
真ん中だけはなんか、やたらとでかい白い四角の物体が埋まってるが。
「開いたね。それじゃあ連絡頼んだよ」
そう言ってマキナさんは部屋の隅にある機械の所へ行くと、何やら操作を始めて電子音が聞こえてくる。
一方でリースはカゲマルに連絡を入れているようだ。
「はーい、……もしもしカゲさん?」
『お、姫。終わったでござるか?』
「うん、だからリーさんとクロちゃんお願いね」
『御意、すぐに向かわせるでござる』
短い連絡を終えると、立方体の中から機械音が鳴り始めて、中に埋まっていた巨大な四角い物体がせり上がり始めた。
次はエネルギーを貯蓄するための、巨大なカードリッジを外すんだったよな。
あ、もしかしてこの白いでかいやつがそうなのか。
その様子を見つめていると、不意に部屋の中が少し暗くなったような気がした。
「ん? 何か急に暗くなってないか?」
「あ、本当だ。多分クロちゃんが出てきたからだと思う。ほら!」
リースに言われるのと同時に、出口の方から羽音のようなものが聞こえてきたから、目を向けてみると透明の壁の先に、リーフと、どう見てもフクロウにしか見えない生物の姿が。
「クロちゃんは呼び出すと辺りを暗くすることが出来るみたいなの」
「へー」
そうしてリーフとクロが扉をくぐってこっちにやって来た。
「クロ、こっち」
「きたよー」
どうやら、このフクロウにしか見えない生物がカゲマルの精霊クロのようだ。
話し合いの時に名前だけは聞いていたが、見るのは初めてだな。
「その持ち上がった白いのがそうだよ!」
「リーさん、クロちゃんよろしくね」
「うん、もらうね」
「いただきまーす」
マキナさんの言葉に、リーフとクロが完全にせり上がった巨大カードリッジの上に乗る。
精霊落としが今回ダメになっても、また世界を滅ぼす兵器を作られるとイタチごっこになるからな。
そうさせないためにもこれから中に入っている、国中から余剰分をちまちまと集めたであろう生命エネルギーを奪い取る。
精霊にとって生命エネルギーは食事のようなものらしいから、リーフとクロにはしっかりと消費してもらわないとな。
するとエネルギーの吸収を始めたのか、白いカードリッジの底が黒くなり始めた。
それはまるで黒い水を注ぎ込んでいるかのように、かさが増していって下から上に向かって勢いよく黒色に塗りつぶされていく。
「やっぱり美味しくないねー」
「がまん、がまん」
「美味しくないってエネルギーに味があるのか?」
クロが変なことを言い出したもんだから、ついそんな事を聞いてしまった。
「相性が悪いと、ちょっとね。これ、いろいろ混ざってるから」
それにリーフが答えてくれた。
ああ、色んな人の生命エネルギーをかき集めてるからか。
するとそんな会話に、ようやくクロが俺の存在に気づいたようで、食事(?)をしながらこっちを見てくる。
「あー、コハクだっけー? 影の精霊クロだよー。よろしくねー」
「おう、よろしくクロ」
リーフはちょっと途切れ途切れな話し方だが、クロは流暢に離すよな。
ただ、少々のんびりさんな感じがするが。
「うちのカゲはたまーに暴走するけど、許してあげてねー」
た、たまに?
しょっちゅうの間違いではないだろうか……。
「ああ、もう大分慣れてきたぞ」
「そっかー、それは良かっ……良かったのかなー? まあいっかー。げぷぅ」
どうやら大分満腹気味のようだな。
白かった箱も嘘のように黒くなってるし。
「ふー、終わりかな?」
リーフはまだまだ余裕そうだな。
まさかの大食いなのか。
「うん、残量10%以下。これなら外せるね」
再びマキナさんが機械の操作を行うと、黒くなったカードリッジが横にぐるりと半回転する。
「今なら持ち上げるだけで外せるよ」
「リース、反対側を頼む」
「はーい」
「「せーの」」
リースと一緒に立方体の端に立って、反対側にいるリースと協力してカードリッジを持ち上げてみる。
するとすんなりと持ち上がった。
「おー、揺れる揺れるー」
リーフとクロを箱に乗せたまま、一緒に運んでいく。
そのまますぐ立方体の脇にカードリッジを置いて、カードリッジがあった台座を覗き込むと茶色のガラス玉のような球体が隠すように埋め込まれていた。
「この茶色いのがそうなのか?」
「ああ、そうだよ。そいつが精霊落としの核さ。その玉のおかげで高威力が実現したが、代わりに暴走も引き起こす事になる原因だね」
今度は上の蓋をどかす作業だ。
リースは立方体の四隅のうち、精霊落としの砲台部分に近い方の角2つに苗床を1つずつ置いていくと、それらが一斉に木の幹を生やす。
蓋はコの字のような物が上に覆いかぶさる形になっているので、出っ張り部分を木の幹が押し上げる形で蓋を持ち上げる。
そうして斜めに持ち上がった所で、リースが持ち上がっている側から少し離れて新たに苗床を床に置く。
「2人とも耳ふさいでねー」
そう言ってリースが自分の耳をふさいだので、それに倣って俺とマキナさんも耳をふさぐ。
直後、新しく置いた苗床から斜めに木の幹が勢いよく生えて、斜めに持ち上がった蓋の内側を叩くようにして、蓋を壁まで吹っ飛ばした。
耳をふさいでいるのに、蓋が壁にぶつかった豪快な音が耳に響いてきた。
「はは……」
「リースちゃんって割と大胆なんだね……」
「音、外には聞こえないんでしょ? それなら早くどかしたほうが良いと思って」
「まあいいさ、コハクくん。次は内蓋も頼むよ!」
そうして再び、俺の単一支配で内蓋を外していく。
しかし、リースに比べると実に地味な作業である。
最初の物に比べて小さいからか、かなり楽に外し終わる。
「よし、外れた。このぐらいなら俺でも持ち上げられそうだな」
力を入れて内蓋を持ち上げて、適当にその辺に蓋を置く。
すると、ごちゃごちゃとしている中身が見えてきた。
真ん中だけはなんか、やたらとでかい白い四角の物体が埋まってるが。
「開いたね。それじゃあ連絡頼んだよ」
そう言ってマキナさんは部屋の隅にある機械の所へ行くと、何やら操作を始めて電子音が聞こえてくる。
一方でリースはカゲマルに連絡を入れているようだ。
「はーい、……もしもしカゲさん?」
『お、姫。終わったでござるか?』
「うん、だからリーさんとクロちゃんお願いね」
『御意、すぐに向かわせるでござる』
短い連絡を終えると、立方体の中から機械音が鳴り始めて、中に埋まっていた巨大な四角い物体がせり上がり始めた。
次はエネルギーを貯蓄するための、巨大なカードリッジを外すんだったよな。
あ、もしかしてこの白いでかいやつがそうなのか。
その様子を見つめていると、不意に部屋の中が少し暗くなったような気がした。
「ん? 何か急に暗くなってないか?」
「あ、本当だ。多分クロちゃんが出てきたからだと思う。ほら!」
リースに言われるのと同時に、出口の方から羽音のようなものが聞こえてきたから、目を向けてみると透明の壁の先に、リーフと、どう見てもフクロウにしか見えない生物の姿が。
「クロちゃんは呼び出すと辺りを暗くすることが出来るみたいなの」
「へー」
そうしてリーフとクロが扉をくぐってこっちにやって来た。
「クロ、こっち」
「きたよー」
どうやら、このフクロウにしか見えない生物がカゲマルの精霊クロのようだ。
話し合いの時に名前だけは聞いていたが、見るのは初めてだな。
「その持ち上がった白いのがそうだよ!」
「リーさん、クロちゃんよろしくね」
「うん、もらうね」
「いただきまーす」
マキナさんの言葉に、リーフとクロが完全にせり上がった巨大カードリッジの上に乗る。
精霊落としが今回ダメになっても、また世界を滅ぼす兵器を作られるとイタチごっこになるからな。
そうさせないためにもこれから中に入っている、国中から余剰分をちまちまと集めたであろう生命エネルギーを奪い取る。
精霊にとって生命エネルギーは食事のようなものらしいから、リーフとクロにはしっかりと消費してもらわないとな。
するとエネルギーの吸収を始めたのか、白いカードリッジの底が黒くなり始めた。
それはまるで黒い水を注ぎ込んでいるかのように、かさが増していって下から上に向かって勢いよく黒色に塗りつぶされていく。
「やっぱり美味しくないねー」
「がまん、がまん」
「美味しくないってエネルギーに味があるのか?」
クロが変なことを言い出したもんだから、ついそんな事を聞いてしまった。
「相性が悪いと、ちょっとね。これ、いろいろ混ざってるから」
それにリーフが答えてくれた。
ああ、色んな人の生命エネルギーをかき集めてるからか。
するとそんな会話に、ようやくクロが俺の存在に気づいたようで、食事(?)をしながらこっちを見てくる。
「あー、コハクだっけー? 影の精霊クロだよー。よろしくねー」
「おう、よろしくクロ」
リーフはちょっと途切れ途切れな話し方だが、クロは流暢に離すよな。
ただ、少々のんびりさんな感じがするが。
「うちのカゲはたまーに暴走するけど、許してあげてねー」
た、たまに?
しょっちゅうの間違いではないだろうか……。
「ああ、もう大分慣れてきたぞ」
「そっかー、それは良かっ……良かったのかなー? まあいっかー。げぷぅ」
どうやら大分満腹気味のようだな。
白かった箱も嘘のように黒くなってるし。
「ふー、終わりかな?」
リーフはまだまだ余裕そうだな。
まさかの大食いなのか。
「うん、残量10%以下。これなら外せるね」
再びマキナさんが機械の操作を行うと、黒くなったカードリッジが横にぐるりと半回転する。
「今なら持ち上げるだけで外せるよ」
「リース、反対側を頼む」
「はーい」
「「せーの」」
リースと一緒に立方体の端に立って、反対側にいるリースと協力してカードリッジを持ち上げてみる。
するとすんなりと持ち上がった。
「おー、揺れる揺れるー」
リーフとクロを箱に乗せたまま、一緒に運んでいく。
そのまますぐ立方体の脇にカードリッジを置いて、カードリッジがあった台座を覗き込むと茶色のガラス玉のような球体が隠すように埋め込まれていた。
「この茶色いのがそうなのか?」
「ああ、そうだよ。そいつが精霊落としの核さ。その玉のおかげで高威力が実現したが、代わりに暴走も引き起こす事になる原因だね」
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