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第五話 休息
しおりを挟む「どうすればルイの記憶が戻るんだろうな?」
「モク、ごめんね。迷惑かけて……」
「迷惑なんて思ったことねえよ。オレは好きでお前の側にいるんだよ」
「……ありがとう。でもモクが心配なの。無理してるんじゃないかって」
「無理なんかしてねえよ」
「でも、どこかで休まないと。ずっと飛びっぱなしだから」
「本当に大丈夫なんだが、ルイを心配させちまうのもな。うーん、そうだ! 久しぶりにヨウに会いに行ってみるか? 言葉が通じるし休ませてくれそうだし」
「そうだね。あと十九年目の満月だっけ? 今のところ手がかりはこれだけだし、何か新しい話が聞けるかも」
モクとルイは、数年前に花畑で知り合い、一緒に月見をして仲良くなった少年に会いに行くことにしました。
「……確か、この家だったよな」
「うん。雨が降っているから花畑にいなかったね。家の中にいるかな?」
ヨウの家に着いたモクとルイは、窓の外から家の中を覗いてみました。
家の中では、薄茶色の長い髪と紫色の瞳の十代後半ほどに見える少年が、白銀色の髪と金色の瞳の子どもを抱っこしてあやしていました。
「ヨウの髪の色が変わってる。前は銀色だったよね。……抱っこしてる子どもってヨウの子かな?」
「たぶんな、あれから何年も経ってるし。それよりヨウの見た目が以前とまったく変わってないように見えることが気になる。……本当にヨウか?」
そんな話をしていると、ヨウが二人に気付き窓を開けて家の中に招き入れます。
「雨が降ってんだから早く入れよ。風邪ひくぞ。……久しぶりだな。モクにルイ」
「ヨウだ! よかった。やっぱりヨウだ!」
「久しぶり! でも、髪どうしたの?」
ヨウは、自分の髪をつまんで少しだけ眺めた後、笑顔で言います。
「……ああ、これ? 父親になったわけだし、大人らしく少し渋みを出したくて、どう似合う?」
「ははは、何だそりゃ。相変わらず変なヤツだな」
「その子、やっぱりヨウの子なんだね。名前は?」
「モナカだよ。最中の月って意味」
「最中の月? ああ! 十五夜の満月のことか。たしかに、髪の色も瞳の色も何だか月みたいな子だな」
「かわいい。女の子?」
「男の子だよ。甘えん坊で抱っこが大好きなんだ。でも、もう五歳だし、さすがに重くなってきたな」
三人が楽しく談笑していると、モナカが不思議そうな顔をして言いました。
「お父さん、さっきから一人でおしゃべりしてるの?」
「ああ、ごめんな。この鳥さんとおしゃべりしてたんだよ」
「この鳥さん、しゃべれるの? ボクには分からないよ」
「口の悪い鳥だから分からなくてもいいかもな。ああ、そうだ! モナカ、タオルを持ってきてくれ。鳥さんが雨で濡れてたんだ」
「カゼひいちゃうね。鳥さん、待っててね」
モナカがトタトタとタオルを取りに行く姿を見送りながらモクがさみしそうに呟きます。
「モナカはオレの声が分からないのか……」
「ああ、ついでに言うとルイの姿も見ることができない。見た目は浮き世離れした姿だけど、何の力も持たない普通の人間の子どもだからな」
「お前とは違うってことか。もしかして、本当の子じゃないのか?」
「モク!」
「あっ! すまねえ、お互いの素性の詮索はしない。前に会った時に約束したんだったな」
ヨウは特に気にした素振りもなく、モナカが持ってきたタオルを受け取るとルイとモクを優しく包みました。
「ボクのことを深く知りたいんだったら、ここで一緒に暮らしてみるか? 十九年目の満月の日まで」
「そうしたいけど、この世界は私を弱らせる何かがあるの。でもモクは大丈夫だから、その……」
「ルイ~! なに言おうとしてるんだ? お前が嫌だと言わないかぎり、何があったとしても絶対に側を離れないぞ」
「あははは、モクはルイが本当に好きなんだな」
そう笑いかけたヨウの服の裾をクイクイとモナカが引っ張りました。
ルイとモクの言葉が分からないモナカが、一人で話しているようにしか見えない父を心配そうに見つめています。
ヨウが声をひそめて、ルイとモクに言いました。
「今、モナカを昼寝させるから、後でゆっくり話そう」
そう話すとモナカを抱えて布団に横になり、寝かしつけるため絵本を読み始めます。
シトシトと降り続ける雨音と、ヨウの優しい声色にモナカだけではなく、ルイとモクも眠気に誘われます。
やがて三人が眠り始めると、ヨウが静かに言いました。
「ゆっくりお休み、息子よ。……それと少年と少女」
(休息)
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